1999年8月23日 後楽園ホール  FMW


第4試合 田中将斗、リッキー・フジ VS 冬木弘道、荒井社長

薫子を連れ回すハメになった田中荒井スペシャルか

リッキーと荒井社長の組み合わせで始まるかと思いきや、リッキーは田中とタッチ。 すると、荒井社長も冬木に交代する。再びリッキーが出てくると、冬木も新井社 長へ代わり、それを見たリッキーはまたも田中へスイッチ。ああ、表現が面倒くさ いわ。要するに、組み合う前にこういうのが数回繰り返されたわけ。荒井社長は田 中は怖いけど、リッキーなら平気だよということなんでしょうか。
●結局スクランブルタッグのようにリッキーが荒井社長、田中が冬木へと同時に襲 いかかる。田中と冬木が場外でやり合っている間、リッキーは荒井社長をボコボコ に。ところがだ。荒井薫子が初めて戦いの役に立ったというか。場外にいた田中と 薫子が手錠で繋がれてしまったのである。田中はどこに行くにも薫子を引きずって いかなければならないわけで、リング上にもあがれない。その間、孤立したリッキ ーは2人がかりでやられるばかりである。いらだった観客が田中に向かって「薫子を 武器に使え!」「抱えてリングに入れ!」「相手に向かって投げつけろ!」と叫ぶ 。マジでやってほしかったけど、田中は強くて優しい男なのだ。
●冬木のパワーボム、ラリアットもリッキーは自力で返したものの、冬木スペシャ ルを決められ、さらに荒井社長も冬木スペシャル。絶体絶命のピンチに、リン グサイドにさっと走った人影は? 若菜瀬奈だ! 薫子の胸 元から手錠の鍵を抜き取り、田中を解放! 場内はもはや異常興奮である。田中は 冬木をコーナーに詰めてパンチの雨を降らし、その間にリッキーはもはやふらふら の荒井社長を担ぎ上げた。この技がこれほど期待を持たれたことがかつてあっただ ろうか。大歓声の中で、完璧なカミカゼ。もちろん荒井社長はKO状態。ゆっくり 3カウントが入る。どー!と言う感じで、みんながバンザイ。よくよく考えれば 、プロレスラーが素人に勝って何がそんなに嬉しいかということなのだが、それだ けのカタルシスがある試合だったのだ。
トップレスラーがコギャルと手錠で結びつけられ、それをセクシータレントってい うかAVギャルが助けに来るというめちゃくちゃな展開がまったく違和感なくファン のシリアスな興奮を誘っていたのだから、素晴らしい。FMWのエンタメ路線も堂 に入ってきたかなと思ってしまった。特にリッキーにとっては、もしかして今まで のベストマッチではないでしょうか。カミカゼがあれほど凄い技に見えたことは今 までなかったし。
(田中)「冬木、これで横浜アリーナ決定やな。ボコボコにしてやるから逃げ ずに来い。俺は逃げんからな」
(リッキー)「ハヤブサー! 札幌であいつマスク最後だけど、マスク脱いでも 応援してやってくれ」
●リッキーは「sexy storm」を熱唱。ケツまで見せていった。ともかく、これ ほどリッキーが熱狂的な声援を受けたことは、ここしばらく記憶にないことで ある。

素人相手に爽快なカミカゼ!ケツの後で熱唱


セミファイナル 黒田哲広、大矢剛功 VS 中川浩二、外道

This is 4の字固めさすが付け人

黒田と大矢、ますます観客の声援がすごい。ボル テージが高い。最初は地味にグラウンドやったり、腕を取り合っ たり。この人達がやると、退屈しない。弛まない。そんな流れを最初に壊すの は、言うまでもなく黒田。中川を捕まえ、コーナーでお約束の足攻めを見せる。 そして、This is 4の字固め。大矢がリバースインディアンデスロック、弓 矢固めと最後の付き人らしいところを見せ、黒田の哲ちゃんカッターも決まっ て、挑戦者ペース。しかし、小狡い王者チーム相手だけに、調子に乗って攻め ていると逆に危ないと思っていたのだが。
●南側通路を走ってのラリアットを中川にかわされ、なんと階段めがけてエク スプロイダーで投げ落とされる黒田。これには観客がビックリ。倒れた黒田に がんばれと声援を送る。大矢がベルトで殴られ、これはいよいよ危ないという ところ、大矢は中川をバックドロップで投げ捨て、外道にも卍固め。カットに 入ろうとした中川も黒田がラリアットでなぎ倒す。最後はバックドロップから 男固めで、外道がギブアップ。あれ? 勝っちゃったよ! 正直なところ、今 日は勝てそうにないと思っていたから、ちょっと驚いた。
●試合後、チャンピオンになった2人からハヤブサへの言葉。
(黒田)「ハヤブサ、次のメイン締めろよ。俺と大矢も最高だけど、ハヤブサ もサイコー!!」
(大矢)「もう一度ハヤブサとやりたかったよ」
 大矢のぼそっとしたコメントに暖かい笑いが起きた。

決定打!FMWの最前線を走る男二人


メインイベント 金村ゆきひろ VS ハヤブサ<世界ブラスナックルヘビー選手権>

ハヤブサとして最後の後楽園のリングラフでペースを握った金村机を割るのは俺だ!(場外ギロチン)

何とも言えない雰囲気の中、「fight with dream」 がかかり、ハヤブサが登場。後楽園のファンの声援はあまりに暖かい。そのし んみりした空気をかき消すかのように、「come out and play」で金村、雁之 助、非道の3人が南側通路に現れ、金村がハヤブサの目の前で、腰の入っ たブリブラダンスを踊る。
●試合開始。早々とフランケンシュタイナーに行ったハヤブサだが、空中で金 村にヒューマントーチに切り替えされてしまう。しかし、その直後、今度はフ ランケン成功。さらに雪崩式フランケンシュタイナー。場外に転げ落ちた金村 めがけ、ハヤブサが矢のような対角線トペコンを放つ。最高に美しく、スリリ ングな技だ。
●しかし、場外戦では金村に分があり。金村は南側通路に置いた机の上にハヤ ブサを寝かせ、ロビーへ降りる階段を飛び越えてのボディプレス。後楽園ホー ルの構造を知っている人でないと、どういうことかわかりにくいと思うが、こ れは凄すぎる! リングに戻っては、逆片エビ固め、机での攻撃でハヤブサは 防戦一方。金村の回転式バックブリーカーで放り捨てられる。
●ハヤブサはスクリューキックで反撃開始。ラ・ケブラーダで舞い、金村を本 部席の机に寝かせては、「この机を割るのは俺だ!」と叫んでからのギロチン アタック。リングに戻した金村めがけてトペ・アトミコを落としてゆくが、続 くブファドーラはかわされてしまう。ハヤブサは最近では珍しいフェニックス セントーンも披露。
●ハヤブサと金村の試合というと、去年仙台で見たタイトルマッチ(当時は立 場が逆で、ハヤブサがチャンピオンだった)が思い出されるが、あの日の金村 は有刺鉄線バット攻撃と急所蹴りに終始していたはずだ。そんな中、金村が初 公開したリバースファルコンアローには、それなりに強い印象を受けたものだ ったが。雪崩式アームホイップ、ヒューマントーチといった大技の後、久しぶ りにリバースファルコンアロー。ハヤブサが相手でなければ出さない技である。 金村にも期するものがあったのだろう。粘りに粘って、試合は最高潮へ。
●ハヤブサと金村はFMWの中でも華とセンスにおいて双璧とも言える選手。 それだけに、本当に試合が面白い。一時期FMWも手を染めていた、2.9カ ウントが続くようなタイプの試合ではないが、これこそ真にFMWらしい名勝 負なのではないか。ハヤブサのファルコンアローも自力で返した金村だったが、 ファイヤーバードスプラッシュでついにピンフォール負け。試合後、ハヤブサ はマイクを握ったものの、こみ上げる涙でつっかえ、うまく喋れない。
ハヤブサが最後の後楽園で、FMWで一番古い ベルトを腰に巻いた。新生FMWが始まったばかりの頃、大矢との王座決定戦 で勝ちながらも、ベルトを巻かなかったハヤブサ。そして、このベルトをめぐ って8人の強者―ハヤブサ、新山、田中、松永、金村、大矢、グラジエーター、 スーパー・レザーが争ったリーグ戦。新生FMWの象徴だったベルトなのであ る。おそらくハヤブサの消滅とともに、(残念ながら)このベルトも封印され るのではないか。
●ならば、我 々もハヤブサとともに、「新生FMW」の名前を葬ろう。この言葉に対する思 い入れがどれほどのものか、同じ時期をプロレス会場で過ごし、同じものを見 てきた者にしかわかりはしないだろう。八王子マルチパーパスでのハヤブサV Sグラジエーターのぎりぎりの試合、川崎球場でテリーとポーゴに焼かれたハ ヤブサ、大仁田が復帰し ても新生が死んでいないことを証明した97年暮れのハヤブサVS大矢。新生 を語るキーワードはそこにいくらでもある。語るべき思い出は誰の胸にもある。 しかし、それはまたの機会に項を譲り、ただ新生FMWの幕が完全に閉じたこ とをここに報告しておきたい。

この技を見るのも最後?机の破片を奪い、やり返した思い出のベルトを取り返す


ハヤブサ卒業式

試合を終えたハヤブサがいったん控え室に戻り、 赤いプライベートマスクに付け替えて、姿を現した。西側に正規軍、東側にT NRのメンバーが並ぶ。近くで見ていた方から聞いたところ、セレモニーの間 中、非道は目に涙を溜めていたとか。雁之助も辛そうな表情。荒井社長がハヤ ブサの経歴を読み上げる。「赤コーナ ー、×××ポンド。ハヤブサー!!」私の近くにアンニュイな 空気を漂わせる茶髪のお姉ちゃんが座っていて、妙に惹かれる顔立ちだなと思 っていたのだけど、その女性が突然大槻健二の後にリングに上がり、ハヤブサ に花を渡す。ただのお姉ちゃんかと思っていたら、元プリンセス・プリンセス の中山加奈子さんでした。また、冬木からも花が贈られた。2人はしばらく睨 み合ったものの、ハヤブサが花束を受け取ると、観客から拍手が沸き上がる。
●ファンからの花束贈呈。人の列が一向に切れない。15分ほどかかる。最後 にハヤブサがマイクをつかみ、「いつまでもメソメソしてらんねえー! 最後 の試合も勝つぞー!!」。そして、正規軍による胴上げ。私も涙ぐんで しまいましたよ。引退とは違うのに。江崎英治は彼が練習生だった頃からのファンだけど、94年から見続け てきたのはハヤブサ。その間に自分の身の回りにも、本当にいろいろなことが あったしね。たくさんのことが甦ってきます。

ファンと別れのひととき最後はお約束で落とされた


今年見たFMWの興行の中でベストというほどの 出来。ハヤブサの首都圏最後の試合ということもあって、集まった超満員の観 客の反応はとても暖かかった。試合後は、青いビル前でハヤブサの垂れ幕を抱 えたまま放心して座り込んでいる女性などもいて、本当にFMWにとってひと つの時代が終わったんだという印象。大仁田FMWほど派手ではありませんで したが、僕は好きでした。ハヤブサFMW。

※選手のコメントについては忘れていた部分が多かったため、オバケさんの観戦記を参考にさせていただきました。


プロレスくん