1999年5月5日 横浜文化体育館  FMW


* この観戦記は当然のことながら、私自身のプロレス観によって書かれたも のであり、考え方の合わない方にはお薦めいたしません。それでもなおかつ読 まれた結果の文句などはお受けできませんので、ご了承ください。

試合前の挨拶。所属全選手が登場した
選ばれたFMガールズ。
顔がはっきり映っていないのが残念です
 
 FMWが半年ごとに開催している横浜文体でのビッグマッチ。今回は試合前 に荒井社長と全選手が入場ステージに登場し、挨拶を行ったが、その中で使わ れた言葉が「試行錯誤」。その言葉通り、今回のビッグマッチは人気低迷への 打開を図るFMWが去年夏頃の状態への思い切ったリセットを行う実験の場と して使われ、その結果、単一の興行としては大失敗に終わった。はっきり言っ て、こんなものを真剣にリポートしたり、評論したりするほどの暇は私 にはない。「試行錯誤」と言えば、聞こえは良いが、密室で行う実験ならいく らでもやればいいが、金を取る興行で「試された」では観客はたまったもので はない。
 プロレスとは何か? プロレスが格闘技と如何に異なっているか? 理想の プロレスというものについて考える時、自分は「誰1人傷つかないプロレス」 ということを考える。どのレスラー及びどのレスラーのファンも傷つかないプ ロレス。プロレスとは「水戸黄門」でなければならないということだ。悪役は 悪役として生き生きと活躍し、最後は正義の味方が勝って、観客を安心させて、 次回へと繋ぐ。ハリウッドでは、もはやハッピーエンドの映画しか作られなく なっているのが現状。その善し悪しはここでは論じないが、こういった娯楽と は基本的に社会へと帰ってゆく我々が勇気づけられ、より内面的に豊かな生活 を送る糧となることが理想であることは間違いないだろう。なぜ、FMWはわ ざわざファンを傷つけなければならないのだろうか? ファンを刺激すること と不快にさせることを取り違えてはないか? 今日の結末に怒ったファンの一 部はFMWを2度と見に来ないだろう。
 大仁田のサクセスを支えたもののひとつに、FMW引退前の大仁田はポイ ントとなる試合ではえげつないほど勝ち続け、常に観客の溜飲を下ろしてきた ことがある。プロレスにおいては、もちろん主人公が負けることもあろう。し かし、それは次回の壮大な勝利への予告編としてである。FMWは横浜文体を 予告編に使えるほどの大それたプロレス団体か? それでは、いつ結果が出る のだろう。ハヤブサはFMWでも他団体でも勝ちまくるべき。それがハヤブサ のカリスマ化と人気回復への単純な道程である。それを許してくれないような 他団体とはつき合う必要がないとまで、言ってもいい。今回行われた団体対抗 戦4試合は全敗となった。それ自体がアングルと考えることもできるが、相変 わらずFMWは星には気前の良いところを見せてもらった感じだ。バトラーツ については、別に良い。バトラーツとの間では一応ギブ・アンド・テイクが成 り立っている。問題は全日本。中川は結局対全日本3戦全敗となった。しかも、 某女史の一声で、内定していたO選手から菊地選手に「格下げ」しての選手貸 し出し。この土 下座外交をいつまで続けるのか。ハヤブサが全日本に出る理由は、地上波も持 っている大手団体で自分の名前を広め、自団体の宣伝とすることであろう。そ れは一応成果を上げている。確かにハヤブサはもはや誰もが知っているレスラ ーとなった。しかし、全日本は新日本と違って、他団体の選手をも自団体の格 の中に取り込んで使う団体。ハヤブサや中川の全日本出場はFMWという団体 自体を全日本の格の中に位置づけてしまう結果となった。メジャー・クラス全 日本に対するローカル・リーグ。大仁田FMWはそうではなかったはずだ。全 日本、新日本とは比較できない異次元に存在し、だからこそ大仁田FMWは見 るべき価値があった。FMWはメジャーに出場する事によって、逆に自団体を (インディーというよりも)「ローカル」と位置づけてしまった感がある。
 興行を見終わって、あまりに不愉快だったので、もうしばらくプロレスは見 たくもないし、プロレスの話もしたくない。苦戦が伝えられていたこの興行だ が、思ったより多くの観客が集まり、途中まで良い雰囲気だっただけに、なん とも残念だ。この興行の内容については簡単な解説と写真だけを掲載しておく ことにする。


第1試合 スーパー・レザー、フライングキッド市原 VS ジ・アルマゲドン

 悪くなかった。第1試合から観客を掴んだ試合。しかし、外人3人が全員お 笑い担当として、前座に回っているのは、なんか間違っている気がするが(笑)。

今日もよけられたムーンサルト旋回式ギロチン


第2試合 佐々木嘉則 VS 森嶋猛

 若い2人の溌剌とした試合。こういう交流戦は歓迎すべき。できれば、ここ にまで団体同士の「格」を持ち込まないでもらいたいものだ。

内容も体格的にも互角だった両者のど輪が勝機だったが


第3試合 外道 VS 邪道

 だらけたアメリカンプロレス。試合内容は低調だったが、結果を出したこと は評価する。節目となるビッグマッチはこういうものでなくては。しかし、こ の試合では、外道を助けに入った金村が2人に袋叩きにされ、メインでは金村 も交えて、TNR再結成をアピール。この展開についていける観客がどれだけ いるのだろう。観客を上手に裏切ることができるだけの、頭もセンスも良い人 間がはたしてFMWにはいらっしゃるんでしょうかね?

試合中もマイクで外道をいじる邪道外道の助けに入った金村を2人でボコボコに大団円。これは評価する


第4試合 尾崎魔弓、中山香里、シュガー佐藤 VS 山田敏代、加藤園子、植松寿絵

 懸命な戦いと勝利。ベタと言われても、それがファンが感動する試合の基本。 この日一番FMWを感じさせたのが、OZアカデミーに留学中の中山香里だっ たとは。試合開始直後に足がいってしまい、歩行もできない状態で、この激し い試合を戦い抜き、勝った。かつて足をギブスで固めたまま試合に出て戦った 大仁田厚の姿にダブって見えた。

中山のケブラーダ噛みつき攻撃も見せたムーンサルト


第5試合 リッキー・フジ VS 田中稔

 試合内容は悪くなかった。ただ、これからの新日ジュニアのリーグ戦でおそ らく白星配給となる田中にベルトを預けてしまうこと自体が不思議。

グラウンドでもリッキーには余裕があったがエプロンからスリーパーを決めた稔リッキーのダイビングはかたちが綺麗である


第6試合 ハヤブサ、新崎人生 VS 田中将斗、黒田哲広

ダークサイドハヤブサの衣装で登場。
黒いハヤブサ復活はマジで嬉しかった
軽々と鉄柵越え好調の人生は要所を締めた。
今日の試合の意味を考えれば、こういう関わり方しか
できなかっただろう

 ここのところ続けざまに行われているハヤブサ&(冬木or人生)VS田中& 黒田の一連の試合の中ではいまいちな出来。試合開始直後のハヤブサの鉄柵越えプランチャ は素晴らしいの一言だったが。黒田が勝った時点で会場に満ちたため息が印象 的だった。

黒いハヤブサ、本当にかっこいいフェニックスをよけられると負けるというジンクス
は生きていた
黒田のテキーラ・サンライズ


第7試合 中川浩二 VS 菊地毅

 試合は中川が攻めまくり、イス攻撃まで出した。最期の一瞬だけ菊地が中川 のジャックナイフを丸め込んで勝ち。内容的には職人芸。この試合の存在その ものについての感想は冒頭に書いた通り。

菊地のスパイダースープレックスどうした?と菊地を罵る中川サソリ固めがガッチリ


セミファイナル
ミスター雁之助石川雄規
大矢剛功池田大輔
金村ゆきひろVSモハメド・ヨネ
保坂秀樹臼田勝美
非道土方隆司

 バトラが勝ったこと自体は別に良し。雁之助が池田あたりに取られる姿は見 たくなかったが。そこそこ盛り上がったよう。ただ、金を払って見るPPVに 不快な解説者(島田某)はいりませんね。

大矢といんちき雁之助のパワーボムバトラのトップとは言え、現状の池田にやる
のはどうか?


メインイベント 冬木弘道 VS 黒田哲広

 ただでさえフラストレーションの溜まる今大会の決定版となったメイン。 「新しいヒールを 見せる」というようなことをSアリーナで言っていた冬木が見せてくれたあま りにも古典的で退屈なヒール像。さすが冬木さんは頭がいいですね。試合に光 を当てられなかった点で、黒田もこの程度。同じぐちゃぐちゃの試合でも、去 年2月のランバージャックマッチでのハヤブサの仕事内容とは雲泥の差がある (言うまでもなく黒田が泥)。
 ディレクティービーの4時間の放送枠を越えてしまうなど、今回は何から何 までミソをつけた感じ。試合後はペットボトルをリングの中に投げ込む客が続 出、飛び込んできたハヤブサが逆上しつつ、その場をなんとか押さえた。
「お前ら、こんなものを見に来たのか! これがFMWか?」
 アングルとしての怒りか、それともマジ切れか。どちらが良いのだろう。後 者の方がハヤブサに好感が持てる。けれど、FMWがいよいよ道を見失ってい ることの証明でもある。今回のメインで残ったのは、TNRが全盛期の状態で 復活したという「物語」だけだった。

流血の黒田は奮闘。しかし、善戦の域を出なかった元冬木軍の3人でフィニッシュ


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