1998年11月20日 横浜文化体育館  FMW


 かなり売れていると聞いていたのにも関わらず、アリーナは中列あたりに空 席が目立つ。平日の横浜、客足が遅いのは仕方ないだろう。この時点で、2階 がほぼ満員、立ち見までいることを考えれば、まあ御の字である。カードは急 に大幅に変更された。変更カードとして、サブゥーの名が出ると、会場が大き く沸く。この件について、荒井社長からの説明。ECWから離脱したビガロ、 母危篤のキャンディートとその妻タミーが来日できなくなったことについて、 前からわかっていたにもかかわらず前日になって連絡を寄越したECWの不誠 実な対応を非難、提携破棄もあり得るとのこと。いいぞ、向こうになめさせる な。ECWなんて、今のFMWにとってはオマケでしかない。ECWと 壊れても、サブゥーあたり、呼べばFMWに来そうな感じだし。
 また、セミファイナルは「大日本プロレスとのトラブルをFMWに持ち込ま ない」との誓約書を大仁田厚に書かせて、大仁田 VS ポーゴにカード変更 である。これにも拍手が起こる。内容的には保坂や佐々木と戦った方が面白く なりそうな大仁田のカードだが、言ってみりゃ今日のセミは儀式。それにふさ わしい相手と戦わねばならぬ。ポーゴがその相手として、これ以上ないのはも ちろんのことだ。


第1試合 フライングキッド市原 VS レイ・ブカネロ

 ブカネロ、名前は聞いていた強いルチャドールだ。タッパもけっこうでかい。 タルサン・ボーイの代わりに来たわけだけど、23日のバトラ両国でハヤブサ はこのブカネロと戦うんだろうか。
 しかし、ブカネロ、地味ね。アームホイップとか見ても、できるルチャドー ルなんだけど、飛ばないし、大技も連発したりしない。ブカネロが受けに回っ たために、普段たまにしか見られない市原の攻めがじっくり堪能できた。市原 って小さいし、あまり特色がないんだけど、実にできる選手だと思う。なんと 言ってもルチャを基本から完璧にマスターしてるのが大きい。動きにリズムが あるし、攻めの組み立てがしっかりしてるのね。同じ様なタイプに見られがち な南条より、市原の方を私が評価するのはそんな理由です。体もレスラーっぽ いし。
 市原の逆片エビ固めをクリアーしたブカネロはパワーボムからミサイルキッ ク、アトミコ。続くリバース4の字固めは珍しい技だが、なかなか説得力ある。 シャープシューターで市原を痛めつけた後、コーナーに昇ったブカネロだが、 市原のドロップキックで撃墜され、さらに市原はトペコン、ケブラーダ。ムー ンサルトはかわされたものの、見事着地して、ウラカン・ラナを狙ったところ、 パワーボムに切り替えされる。ラ・マヒストラルでブカネロを動揺させて、再 びムーンサルトで飛んだところ、待っていたのは膝での剣山。ルチャベースの 噛み合った良い試合を展開する2人。
 最後は雪崩式フランケンシュタイナーを狙った市原だが、投げきれず、その まま雪崩式パワーボムで叩きつけられる。そのまま3カウントを聞いた。市原 よ、君は良い選手だ。この位置でも腐らず、市原なりの楽しい世界を作ってい ってほしい。


第2試合 リッキー・フジ、中山香里 VS 非道、伊藤豪

 待ちに待った中山復帰戦。今日の興行でもひとつのポイントだったはずなの だが…。思った以上には盛り上がらなかった。薫子さんがモーニング娘。のテ ーマで、しゃぼん玉を吹きながら入場した時にはそれなりの歓迎を受けたもの の、中山の調子の悪さもあって、いまいち試合がスウィングしないのである。
「伊藤、女にビビってんじゃねえよ」とツッチー入った中山のマイクがあった ものの、リッキーと非道で無難にスタート。まあ、これはいつもと同じ動き。 リッキーと伊藤豪という多少無理のある絡みになると、リッキーのローキック を後ろから喰らって、逆上がりの形で一回転してしまう伊藤豪。レスラーでも ないのに、アメプロの動きが染みついてるこいつって…? でも、うまいよね。 すごい運動神経だと思う。非道より伊藤豪の方ができるんじゃないか、などと ぼそぼそ話しながら、観戦する我ら。2回も試合をやってしまった以上、伊藤 豪は一種のレスラーとして見なしていいんだろう。
 期待の中山VS伊藤豪。ところが、中山の動きにどうにもキレがない。当初 はトリッキーな動きで相手を攪乱したものの、捕まって伊藤豪のキャメルクラ ッチで絞られ、ボディスラムを受ける。まだ体調が良くないんだろうか。非道 のイス攻撃はリッキーが中山をカバーして身代わり。ここでラッシュをかけた 中山は伊藤豪にケブラーダ、エルボー、フェースクラッシャー、さらにリッキ ーと2人同時のカミカゼ。
 非道にシャープシューターを決めたリッキーに伊藤豪はパウダー攻撃。伊藤 豪は中山に投げっぱなしジャーマンを決めるも、1回転して着地した中山はウ ラカン・ラナを狙う。しかし、パワーボムで切り替えされてしまう。コーナー に上った伊藤豪。中山はロープを揺らして伊藤豪の急所打ち自爆を誘い、雪崩 式フランケンシュタイナー。しかし、この体格差でこの技は危険すぎたのか。 自分の脳天をマットで打ってしまう。スウィングDDTは見事に決まり、 グーパンチで伊藤豪をKOしたものの、ここで入ってきた非道にパイルドライ バーで落とされ(超反則っすよ。お約束ながら)、非道に覆い被せられた伊藤豪の下で3カウントを聞いた。
 非道と薫子さんに抱えられてぐったりしながら帰ってゆく伊藤豪。また「T O BE CONTINUED」? このことは雁之助の去就も含めて、言っ ておきたいんだけど。横浜文体って半年に一回のビッグマッチなんでしょ?  言ってみりゃナイトロに対するPPV、起承転結の「結」の部分だよね。今ま で引っ張ってきたネタの謎が解けたり、大団円を迎えるのが、やはりストーリ ー物の王道ではないかと俺は思うんだけど。薫子さんにしても雁之助にしても、 ここからまた引っ張ったら、どこで解決つけようってのさ。ストーリーはメリ ハリ大切よ。もっとスカッとするようなビッグマッチが良いね。それが見たく て、我々喜んで、訳のわかんないネタに自ら騙されるんだから。

やっぱカオリンは綺麗ねケブラーダは健在これで失神。これも邪道の泥か


第3試合 大矢剛功 VS 中川浩二

 前回の文体でも似たようなカードがあったね。地味対決。かつて中川と言え ば、あの切れ味鋭いジャーマンをひたすら待つのが正しい見方だったが、最近 は同じ「切れ味鋭い」でも、本当に触ったら切れるようなフォークになってし まいましたとさ。
 スクリーンに大矢のイメージビデオが流れる。波止場にたたずむ大矢。転が ってきたボールを拾い上げて、子供に渡し、うんうんと頷く。いい人だ! 「 男の中の男」だそうである。
 この2人なら、試合は当然グラウンド。大矢が中川の腕を攻めれば、中川は 大矢の足を狙って行く。ビデオで見るなら、面白いんだけど、大きな会場で見 るにはやや重い。場外でゴングを叩く木槌を持ち出した中川の一撃をよけた大 矢が延髄斬りを見舞うと、中川は頭を鉄柱と大矢の足に挟まれて、流血。リン グに戻り、大矢はバンテージで中川の首を絞め、ストンピングを重ねるラフ殺 法で押す。けっこう、これが延々とやっていたりするわけで、客は黙ってじっ と眺めている。
 中川がカニばさみからキャメルクラッチを見せるも、大矢は急所パンチでペ ースを取り戻し、さらに急所蹴り。びりびり電気あんま。えげつない大矢さん もステキだ。延髄斬り2発から卍 固め、バックドロップ、また延髄斬りで大矢は決めにかかる。しかし、とどめ のバックドロップの体勢に入った途端に中川の急所蹴り。中川はコーナーに掛 けてあったキルトからフォークを取り出し、キルトをレフェリーの顔に投げつ けて、目つぶし。その間にフォーク攻撃を大矢の広い額に入れた。そのままジ ャックナイフに固めて3カウント。瞬間で決めたアメプロらしいフィニッシュ である。
 試合後は定番の大矢VSレフェリー。地方ではレフェリーが殴られるとわっ と沸くんだけどねえ。


第4試合
池田大輔邪道
リッキー・フジ VS 外道
モハメド・ヨネTAKAみちのく
山崎直彦ショー・フナキ

 女子トイレから登場した邪外。「キャンディートは俺に任せろ」「ビガロ、 来ないって言ってんだろ」一方、我が山崎は髪も生えそろい、気合い充分であ る。
 このカードじゃ、どうしたってTAKAに注目が集まるわけだが、そのTA KAがどうにもぱっとしない。うまさは伝わってくるが、飛ぶこともなく、所 沢方面から起こったロックンロールコールに睨みを効かせたのが一番印象に残 ったというくらい。邪道も相当調子が悪いようで、ほとんど動かない。対して、 今日2試合目のリッキーは久しぶりに聞いたロックンロールコールにご機嫌で、 ロックンロールウォークまで見せ、関係ないところで主役を奪ってしまう。
 山崎が出てくると、場内は声援の渦。っていうのはおおげさだが、各方向か ら「山崎ぃ」との声が炸裂する。山崎は顔もそうだが、声も良い。途中から相 手チームに捕まり、延々と攻め立てられる山崎。やられている時の「あ"〜」 という金属的な声は説得力充分である。この8人の中でもタッパがあるのは山 崎なんだよなあ。まさしくFMWの将来を背負う男と言って良いだろう。
 邪道のチキンウィングフェースロックでピンチを迎えるも、自分の力で脱出 し、リッキーに繋ぐ。リッキーがショーにDDTからカミカゼ。コーナー最上 段から大ちゃんボンバーが飛ぶ。池田は外道にも大ちゃんボンバーからコブラツイス ト。モハがTAKAにニールキックからモハボム、ダイビングギロチンを決め る。しかし、誘い込んだ山崎のマーズアタック(フライングボディアタック) はモハと同士仕打ちに。
 山崎、ここで敵の4人にフライングクロスチョップを連発。外道相手にドロ ップキックからマーズアタック。うーん、良い動き。急所打ちで動 きを止められ、邪道のラリアットから外道のスーパーフライで仕留められてし まったものの、この試合の主役はまさしく山崎だった。地味な顔とは裏腹に妙 な華があるんだよ、山崎。良いもん見れたと思う。

TAKAとリッキー耐える山崎。がんばれ!


第5試合 金村ゆきひろ VS サブゥー VS ワンマン・ギャング

 ワンマン・ギャング。懐かしい名前。昔、全日に来て、天龍やクラッシャー ・ブラックウェルと戦っていたっけ。かなり強かった。金村の入場、 前回に続いてまったく最高ね。今回はブリーフの代わりにキルトが宙を舞い、 背後のスクリーンでは象が突進する。そして、サブゥー。ハヤブサが好きな人 はたいていサブゥーも好き。俺も好きなのよね、サブゥー。華があって、すご くかっこいい。
 最初はトリプルスレッドらしいごちゃごちゃした展開が続く。ギャングは体 のわりにまあまあ動くけど、いまいちポイントがない。リズム感がないという か。サブゥーのスワンダイブ鉄柵越えプランチャが大きな歓声を誘い、イスに 座らせたギャングにサブゥー、金村のダブルドロップキックが決まるシーンな どもあったが、客の反応はどうにも散漫である。
 2人がかりのローリングクラッチでギャングが仕留められたところで、サブ ゥーVS金村。これは楽しみね。しかし、いまいちエンジンの懸かりが遅い2 人。ダイビングボディプレスonデスクに行こうとした金村をサブゥーはボデ ィスラムで投げ捨て、凶器でめった付き。机の破片で、人間モグラ叩き。金村 はハイジャックバックブリーカーでサブゥーを投げ捨て、バク山で飛ぶ。両者 協力のもと(^_^;、イスをリング内に投げ入れ、イス上での戦いへ。サブゥーが 飛びつき雪崩式フランケンシュタイナー、スワンダイブムーンサルト。さらに 場外の机に寝かせた金村にロープ越えのギロチンダイブ。これはすごい。3連 イスでのチャンバラも膝へのスライディングキックで打ち勝ったサブゥーは、 コーナー最上段からのギロチンドロップを見舞い、そのまま3カウント奪取。
 やっぱりサブゥーは良いわ。金村も最近はよく仕事してるんだけど、いつの まにかグレードを上げていた世界のサブゥーとはちょっと役者違い。サブゥー なんて昔はFMWのキワモノ系常連外人だったんだけどねえ。引き上げる時、 へろへろになりながら、しこしこを見せたあたりは金村の意地か。

なぜかFMWシャツのギャング飛んだところをキャッチされて連イスでのチャンバラ


第6試合 黒田哲広 VS ミスター雁之助

 戦前はメインと共に期待されていた試合だったのだが。うーん、何とも重か ったという感じ。お遍路さん2人を連れて炎の道を登場の雁之助。腹まわりを 中心にをちょっと体がたるんだようである。
 普通に組み合い、スピーディーなグラウンドレスリングを展開する両者。タ ックル合戦。雁之助は黒田の左足を攻めるが、黒田は雁之助の首を固めて対抗 する。場外でのインターバルから人生ばりのロープ渡りに行こうとする雁之助 を黒田は哲ちゃんカッターで切り返し、入場口へ連れ出して、DDTから全力 疾走ニーをぶちかましてゆく。しかし、続く全力疾走ラリアットは雁之助の後 藤式アームブリーカーに切り返され、リングに戻って、雁之助のショルダーア ームブリーカー。黒田の左腕を攻める。ガウジングで 逃れてラリアットを放たんとした黒田をさらに脇固め。
 黒田は左足へのドロップキックから膝十字固めへ移行。ストンピングから4 の字固めで足を攻めていく。ラリアットの相打ち。さらにラリアットに来た 黒田を雁之助クラッチで切り返し、ノーザンライトスープレックス、投げっぱ なしジャーマンを見せる雁之助。しかし、すくっと立った黒田のラリアットで 両者ダウン。ダウンカウントが数えられる。
 黒田のロコモーションジャーマン、ファイヤーサンダー。ディスカスラリア ットはよけられたものの、黒田は即ラリアットで追撃。雁之助はファイヤーサンダー を返す。ひたすら打ち合うラリアット合戦で再び両者ダウン。雁之助の念仏パワー ボムはきれいに決まり、そこから新技「涅槃」。フルネルソンスタイルのキャ メルクラッチだ。大日本のWXの使う技だとのこと。これで黒田がギブアップ。 雁之助の勝利。
 ディレクTVの解説をしていた金村がリングに上がり、雁之助に「帰ってこ いよ」。しかし、無反応で帰ってゆく雁之助。隙のないタイトな試合ではあっ たが、客席はほとんど盛り上がらなかった。後楽園ではある種のカリスマ性を 勝ち得ている雁之助の復帰に、この大きな会場では特に大きな反応がなかった のも意外なことである。雁之助の人気はあくまでコアなFMWファンの間のも のだと感じてしまった次第。
 ともあれ、あいかわらず鋭いレスリングセンスを感じさせてくれた雁之助。 今後の復調に期待するところである。

お遍路バージョン雁之助・初の試合花道でのニーアタック静的なキャラながら攻めは激しく


後半戦
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