1998年10月26日 千葉公園体育館 冬木軍
俺は千葉公園体育館が好きだ。
ここに来るのは3度目。初めて来た時は90年の終わりで、ひとりきりだっ
た。クリスマスも近い頃で、日が暮れるのがすごく早かった。体育館が見つか
らず、迷っているうちに千葉公園の猿の檻の前に出てしまい、不安な気持で冴
え冴えとした冬の空気の中を歩いた。通りがかりの女の子に道を訊いてたどり
着いた体育館は薄暗い照明が温かく、いつも通りの音楽がかかっていて、我が
家のようにほっとしたもんだ。
天田麗文の引退エキシビジョンや牛男(ワイルド・ブルマン)の大暴れの後、
メインは大仁田、浅子 VS ベリチェフ、ゴギチャシビリ。最高の内容だっ
た。当時のFMWは熱いファンが多くて、試合後、荒井リングアナ(現・社長)
を捕まえて「FMWだから、こんなところまで来るんですよ!」と訴えている
奴もいた。だから何だ? ま、そのくらいアットホームな団体だったのだ。
2回目は91年の川崎球場大会直前。大仁田と後藤の抗争まっただ中。当時
のFMW仲間と行ったんだけど、これも面白かった。大仁田、浅子、バックラ
ンド VS 後藤、グラジエーター、ボウダー。大仁田が後藤をサンダーファ
イヤーで敗り、握手を求めると後藤は張り手で拒否。川崎球場へのストーリー
作成を見事なステレオタイプで締めくくってくれた。
それから何年も来てなかったんだね。千葉公園自体は今年の夏にも歩いたん
だけど。千葉駅からちょっと離れると、途端にあたりは閑散とした風情。ヒロ
ケンさんとセブンイレブンで飲み物を買い、多少迷いながら体育館に行く
と、開場前ながら、知った顔がいくつもたむろしているのが見える。スナニタ
さんとじゃみねえ&外道娘に挨拶。兄ィとドリ子さんもいた。ともよしさんも
来て、数人で立ち話をしながら開場を待つ。今年も押し迫ってきたね。まだ5
時頃だけど、もうこんなに夕闇が深い。
開場。客の入りはあまり良いとは言えない。横浜文体のチケットを買うと中
山香里と2人でプリクラ撮影サービス!というのをやっていて、珍しく化粧し
た中山が笑顔を振りまいている。リングサイドでは決して見られない顔だ。頬
をぴったり寄せてプリクラの小さなフレームに収まってくれる中山。チケット
売りのおじさんが叫ぶ。「首に手を回しても良いですよ。それ以上はなしね」
ここに関西系の中山ファンがいたら、行けなくてもチケット買ったかもしれん。
俺はもうチケット買ったから良いとして、会場内に入る。あの頃と同じように
薄暗く狭い。俺、やっぱりこの会場が好きね。
試合に先駆けてオークション。TNRの選手達が以前着ていたコスチューム
などを競りにかける。プレゼンテーターは(もうおわかりですね?)もちろん
荒井薫子さんだ。非道が赤いパンタロン、中川がZEN時代ストリートファイ
トに使った青いジャンパー、金村がスタジャン(H氏が5000円で買おうと
したところ、S氏に6000円で取られる。)、外道が黄色いコスチューム、
邪道が家庭で使用のバスローブ、冬木がWAR時代のレボリューションジャケ
ット(珍品!)、伊藤豪が風俗情報誌ナイタイ(これが5200円とは…?)。
まずまずの盛り上がり。
![]() | ![]() | ![]() |
| カオリンとプリクラを撮ろう! | やってることは変わらない | ブリーフアイテムを買い求める熱狂的ファン |
第1試合 非道 VS モハメド・ヨネ
いきなり寝る非道。「お前がモハメド・アリなら、俺は猪木や」猪木コール
が起きる。
ヨネの蹴り。非道も蹴り返す。これがけっこう重い。倒れたヨネの背中へサ
ッカーボールキック。ヨネもやり返す。いいね。こういう生の気迫をぶつけ合
う試合を若いうちにたくさんしておかないと。かたちだけプロレスをしている
不自然なレスラーになってほしくないもんだ。
ヨネは首4の字から非道の腕を取り、腕折り、フライングクロスチョップ。
非道は蹴りや頭突きでやり返し、場外戦へ。イスの中へヨネをたたき込む。リ
ングに戻り、イスでヨネをいたぶってから、ボディスラム、エルボードロップ、
逆片エビ固め、ツームストンパイルドライバー。ヨネはニールキックでやり返
し、コーナーの非道にニーを叩き込む。ブレインバスター、バックドロップ、
モハボム。
バックを取られた非道は急所蹴りを入れるが、ヨネは怯まず、脇固め。非道
はラリアットからDDT、STF、パイルドライバー2発。「非道ちゃんボン
バー!」宣言してから放った1発はヨネに脇固めに取られるが、その勢いでそ
のまま丸め込んだ非道がフォール勝ち。両国のセミでウォリアーズと戦う人が
非道に負けていいんだろうか? 別にいいのか。その自由さがバトラーツなん
だろう。
非道はセコンドの中山に注文を付ける。「男をなめるな!」
![]() | ![]() |
| 意外と重い非道の蹴り | グラウンドではヨネか |
第2試合 白鳥智香子 VS 李由紀
白鳥を見るのは久しぶり。2年ほど前、FMWに上がって土屋にむちゃくち
ゃやられていた印象しかない。あの頃は白鳥の他にも、中山は当然として大向
や小杉などもFMWに来ては土屋に流血させられていたもんだ。それで土屋に
ついたニックネーム「美少女キラー」。キラーの意味が違うだろって感じ。と
もかく、土屋にいたぶられる美少女達の中でダントツ群を抜いてだらしないの
が白鳥であった。工藤の血を引いて流血が絵になる中山や小杉、大きな体を持
て余しながらもそれなりの意地を見せる大向に比べ、ただ情けなかった白鳥。
その彼女もラスカチョを経験し、Jd’を離れ、今や自分でオフィスを構える
ようになった。苦労はファイトに反映されているだろうか。初物を見る興味半
ば冷やかし半ばの観客の中で試合が始まった。
「細いなあ〜」ヒロケンさんが深いため息をつく。今日日、細い女子レスラー
など珍しくないが、白鳥は単に細いだけではなく、肩のあたりにレスラーらし
い肉が付いていない。あれではバンプを取るのがきついんではないか。最初は
力比べから入り、ロープワークからの丸め込み合い。白鳥はヒールらしく、李
の髪を掴んでの投げ。李はキック乱打で逆襲し、アキレス腱固めに取る。白鳥、
李の爪先を噛む。いてて。ちょっと汚いぞ。
李は逆片エビ固めから4の字固め、白鳥はやや唐突にジャンピングネックブ
リーカードロップで反撃し、場外戦へ。適度にかき回し、再びリング内。白鳥
はDDT2発、ドロップキック。李は延髄斬り。コーナー上での攻防に勝った
白鳥はミサイルキックを打ち込み、ジャーマン。李はコーナーポストの白鳥を
捕まえて、雪崩式ブレインバスター。必殺踵落とし。
白鳥はここで噂の赤い木刀を持ち出し、振り回す。李をぺしぺし叩く。ラ・
マヒストラル。この辺から観客はだれ始め、早く終われという空気が会場に満
ちる。李もラ・マヒストラル。白鳥は超大技クロスアームスープレックス。そ
の後は何を思ったか、また木刀を持ち出し、またぺしぺし。と、思ったらいき
なりの裏拳で李をフォールした。
「うーん」ヒロケンさんと唸る。
「弱々しさがなくなった」と潮崎_春樹さんは肯定的に評価されていたが、
私が思うには試合の組み立て方に難があるような。何をしても唐突で、試合の
流れを考えていないというか。李の方も生で見るのは2度目だが、まだなんと
もよくわからない。2人ともまた冬木軍に来てほしいもんだ。今日のところし
ょっぱかったけれど、気になる選手ではある。
![]() | ![]() |
| 白鳥 | 李 |
第3試合 リッキー・フジ、南条隼人、フライングキッド市原 VS 外道、折原昌夫、小野武志道
<キャプテンフォールマッチ>
*一方のチームのキャプテンが負けた時点で試合終了。キャプテンはリッキー・フジ(フェニックス側)と外道(TNR側)
落雷戦士折原、FMW圏に再登場。いやあ、トンパチかっこいいぜ。今のF
MWに欠けているのは、こういうプロレス本来の暴力の匂い。折原は好きなん
だけど、別に追いかけているわけではない。だけど、今年はFMW以外のイン
ディーの会場でやたら折原を眼にしたような気が。そして、いつも見た後スッ
キリさせてくれた。昔、吾作との試合で相手に何もさせず潰してしまったこと
もあったけれど、折原だったらそれもアリ。逆に何もできなかった吾作が次に
折原と当たった時、何かできればそこにまた物語が生まれるんだろう。
最初は南条と折原。この組み合わせは新鮮。というかFMWとの選手なら誰
でも新鮮なんだけど。トンパチ2人でいきなりやりたい放題。足を鉄柱に挟ん
での急所攻撃を見せる。試合はハイペース。面白すぎて、メモが取れない。折
原はリッキーの急所を前から蹴り上げると、リッキーはラリアットを返し、コ
ーナーへ詰めた折原に3人でラリアット3連打。折原はリッキーの急所へのギ
ロチンも見せる。南条が小野をバックドロップで投げて、6人が順番にプラン
チャの6連打。おとなしそうな市原、南条だが、凶暴なトンパチ相手に意地を
見せてゆく。市原はロープ2段目からのムーンサルトを決め、さらにコーナー
最上段から飛んだところ、ヒザが待っていた。
折原がラリアットからみちドラで市原をピン。その途端、南条はみちドラで
折原を叩きつける。リッキー、3人相手にディスカスパンチを見舞い、折原に
DDT、カミカゼ。南条はミサイルキックで小野を吹き飛ばす。さらに南条は
外道相手に足を滑らせたようなアラビアンプレス、みちドラ。小野が南条にツ
ームストンパイルドライバー。そこへめがけて外道のスーパーフライ。これで
南条をピン。1人残されたリッキー。フェニックスの負けは時間の問題か。折
原のリバーススプラッシュがリッキーに。
しかし、へろへろになったリッキーをよそに、外道が折原からのタッチを拒
否し始める。怒る折原。不穏な雰囲気だ。リッキーを羽交い締めにした外道に
折原のラリアットが誤爆する古典的な展開もあって、後はプロレスの王道とも
言うべき結末に向かって一直線。外道がリッキーにムーンサルトを決め、小野
が肩車したリッキーにフライングボディアタック。これで終わりとコーナーに
上る外道。と、なんと折原が外道を雪崩式ブレインバスターで投げ捨てた。ア
ンビリーボー! って、わかってはいたけど。帰ってしまう折原。リッキーは
すかさずローリングストーン。3カウントが入る。フェニックスが勝った!
伊藤豪や非道が出てきて、怒りまくるが、後の祭り。小野は外道と握手しな
がらも、戸惑い顔である。やっぱ、すげえぜ。折原。これからもFMWマット
で折原が見たい。
![]() | ![]() |
| 大変面白い試合でした | リッキーVS折原は新鮮 |
第4試合 スーパー・レザー VS 中川浩二
パワーに勝るレザーがボディスラム2発。さらに不器用なラリアット。いき
なり場外戦へ。地方らしく、逃げまどいながら喜ぶお客さん。選手もわかって
いるようで、かなり乱闘が長い。
ようやくリングに戻って、パワーボムの体勢に入るレザー。頭の上まで中川
を抱え上げると、そのまま背後へ中川を放り出し、中川は首からトップロープ
へ。叩きつけるようなダブルアームスープレックス。中川はのらりくらりとや
られたまま、死んだフリである。イスを置いてのスライディングレッグシザー
ズ・フェースクラッシャー。さらにはイスの上へのDDT、ブレインバスター、
コブラツイストから転がってのグランドコブラ。
中川はこつっとレザーの急所を蹴り上げ、ゆっくりシャープシューターへ。
重い試合だな。それでもお客さんは固唾を呑んで見ている。あっけなく出した
キャメルクラッチ。そして、ラリアット、ボディスラム、逆エビ固め。中川は
楽に勝つことを選んだようで、スモールパッケージ、スクールボーイを連発。
レザーもスタンガンで反撃したものの、クラッチに丸め込まれて、中川の勝ち。
いやあ、静かでひたすら重かった。
![]() | ![]() |
| パワーではレザー | キャメルクラッチ |