1998年9月27日 後楽園ホール  WAR


 目覚まし時計が止まっていようとは。目を覚ましたのは12時15分。俺の 家から水道橋までは約1時間10分かかる。しかもチケットは村越が持ってい る。もうダメだ。諦めかけているところに、村越から電話。
 チケットは入り口に預けておいてくれることになった。駅までタクシーで出 て、中央線に乗る。思ったより良いペースで、水道橋に着いたのは1時10分 くらい。ホールに入ると、中から大きな笑い声が聞こえてくるではないか。で きあがっているな。リングを見ると、幸福の使者・和田部美穂がいた。村越と 友人のHさんに挨拶し、席に腰かける。なんと幸運なことにまだ第2試合の途 中だということだ。
 客席を見る。入りはかなり厳しいというのが正直なところ。この前の大日本 よりもかなり少ない感じ。それにもまして深刻なのは、どう見てもプロレスフ ァンではなさそうな客が多いことだ。俺の後なんておばあちゃん達だぞ! 招 待券を撒いたか、様々な縁故を使って力尽くで客を集めたか。その多くがリピ ーターにならないであろうことを考えると、この先不安である。男VS女まで すでにやってしまった日本のマット界ではミックスドタッグが大きな話題にな り得なかったか、あるいは興行のポイントがファンにとって掴みづらかったの か。おそらく後者であろう。
 さて、試合。和田部と菊池のタッグというのは素晴らしすぎるだろう。世界 最小のニッコニコ娘・和田部とでっかいひょうきん者・菊池。こっちの顔もほ ころぶような組み合わせなのだ。で、相手は平井と立野の強力タッグなのだが、 結果的に和田部がすべてを持っていってしまったような感じ。小さな体と大き な声で観客の笑いを誘い、平井相手にボディプレスまでやっちゃう。立野に吊 り天井を決められた時は、菊池が下からそっと抱え上げて救出。もうたまらん ね。
 最後は立野のジャーマンで和田部が取られたが。今日のベストバウト。これ に間に合って本当に良かった。
 続いて、シングルマッチ3本。谷口裕一と多留の試合はややタルめである。 (シャレじゃない。誓って。)村越とHさんとしばらくお喋りしてしまう。和 田部イズムが炸裂した後ということを考えると仕方ないのかも。ちなみにHさ んは全日ファンで、インディー経験はFMWくらい。時折、リング上の試合に 目を留め、「いつも全日見てると、WARって学生プロレス以下だな」。それ はキツイっす。でも、学生プロレス以下ってのは賛同しないけど、こういう試 合を見ていると、WARは本当にただのインディーになってしまったんだなと 思う。多留、橋本ばりに両腕でクロスを切ってからのキックを披露。谷口は師 譲りのイス攻撃で反撃する。ただし、迫力は3分の1くらい? 最後は多 留が唐突に出した北尾ドリラーでピン。ここで負けてちゃいかんぜ、谷口君。
 岡村隆史とタノムサク鳥羽のキャプチャー道場マッチ。始まる前から体が違 うだろうと思っていたが、どうやら技術的にもかなり差がありそう。岡村は余 裕で、フロントスープレックスまで繰り出す。鳥羽はほとんど何もできず負け た。こういう試合は緊張感があるし、プロレスの中に1試合くらい入ってるの もいいと思うけどね。
 最後はナガサキと一宮。こりゃ事前に想像したとおり。場外戦を避けていた 一宮だが、関節技で締め上げられ、場外に落とされてはイスでめった打ち。こ れでもはや勝負あった感じ。パイルドライバーでフォールされた後はぴくりと も動かず、苦しみながら控え室へ運ばれていった。昔、まだ素顔だった頃のハ ヤブサがナガサキのイス攻撃でむち打ちになったこともあったが。見てる方は 良いけど、やられる方はたまらねえよな、これは。


セミファイナル 北原光騎、イーグル沢井 VS 石井智宏、キャロル美鳥

 意識し合うイーグルと石井。体格からして、ちょうど良い組み合わせだ。(^_^; イーグルと石井で始まるかと思われた試合だが、結局 イーグルがとりあえず接 触を避けた。で、代わったキャロルにチェーンを手に襲いかかろうとするイー グルを、北原が男らしい低い声で「やめろよ」と止める。イーグル、ちゃんと 言うことを聞く。代わった北原、石井とキャロルのコンビネーションでかき回 されると、突如怒って、自らチェーンを手に。イーグル、「やめなさいよ!」。 場内、爆笑だ。
 石井以上にキャロルが北原相手に気迫の攻めを見せる。なんと、北原に雪崩 式フランケンシュタイナー。北原もキャロルをエルボーで吹っ飛ばすなど、き ちんと礼儀を見せる。北原組、場外で石井とキャロルをスルーで鉢合わせ。圧 巻は石井に見舞ったトッコダッコプレス(倶知安さん命名)。北原がイーグル をおんぶして、そのまま背中の方へ倒れて決めるのだ。石井はこれで本当にK O状態。最後は北原のキャプチャーα(相手の足を巻き込んだ変形足固め) である。喜んだイーグル、「北原さん、一緒にラスベガス行こうね」と叫び、 北原に抱きつく。北原、わかったわかったって感じ。それにしても、近くで試合中ずっ とイーグルに向かって「帰れ、○ブ女」と叫び続けていた客には本当に頭来た。 顔見たら、ホント貧相なんだ、こいつ。


メインイベント 天龍源一郎、風間ルミ VS 荒谷信孝、神取忍

 この試合、ミックスドタッグの形式を取りながら、結果的には天龍と荒谷の 一騎討ちの様相となった。この興行があくまでWARのものであり、この試合 がWARのメインであることを考えれば、それも納得がいく。WARなりのこ だわりなのであろう。もちろん、期待の神取は彼女なりの仕事をしてみせた。 天龍に何度もちょっかいを出しては、背負い投げを決め、腕ひしぎ、チョン蹴り、WARス ペシャルも極める。ついには怒った天龍の渾身のチョップを胸に受け、場外で 転げ回るという大仕事までやってみせたのである。
 しかしながら、これは天龍と荒谷の試合であった。今までの試合とグレード そのものが違う。スーパーへビーの迫力、団体を背負った物同士ならではの後 に下がれない気迫。天龍のチョップの1発1発、荒谷のニールキック、そのす べての技に肉が炸裂するときの鋭い音が客席に響く。荒谷は体格でも、気迫で も、技でも決して天龍に引けを取らなかった。
 しかしながら、荒谷が天龍に逆WARスペシャルで取られると、あっけないと いう感じが残ったのも事実。今や、WARを継ぐ者は荒谷以外には考えられな いこの状況で、荒谷というレスラーが客の心に響かないのはいったい何故なの か。鼻血まで出して奮闘したというのに。全日の2カウントで返しながら、延 々と続くプロレスに客の目が慣れてしまっているのか。荒谷の良い部分もよく わかる試合でありながら、勝負への執着が感じられなかった。何度やっても天 龍には勝てない、そう感じてしまったというのが私の本音である。
 天龍は唯一猪木、馬場からフォールを取った偉大すぎるレスラー。高田、大 仁田、橋本、三沢、蝶野、ムタといったあたりにも軒並み勝っている。越える のが容易くないのは当然の話。しかし、本当の問題は天龍に勝つこと以上に荒 谷の心が観客から見えない点なのだ。突然、偉大な大仁田の後を継ぐことにな ったハヤブサが、感情の表現しにくいと言われるマスクマンでありながら、初 めて登場した時点ですでにファンにハヤブサの有り様を余すことなく伝えてい たのとは大きな違いである。WARに関しては浅いファンである私がこう言う のもおこがましいことであるが、荒谷が本当にファンの心に焦点の合った姿で 現れるまではまだまだ長い時間がかかるのかもしれない。そう感じたメインイ ベントだった。


 まあまあってとこかな。天龍と荒谷の絡み、そして和田部イズムがキーポイ ントだった。(^_^; もし荒谷のパートナーが和田部で、天龍と和田部が絡む瞬 間があれば、2つくらい★が増えたに違いないのだが。何と言っても気になっ たのは、セコンドにいた八木淳子。かなりいい感じ。八木淳子とサトメグと和 田部がいるならLLPWもきっと悪くないだろう。WARはせっかく天龍を抱 えているなら、もっと刺激的なことができていいのでは。このトーナメントを 見ても、これからアイデアで生きていくんだろうし、天龍VS松永なんて、実 現したら、絶対見に行く異次元対決なのだが。
 試合後は夜のLLPWはパスして、王将と天狗を梯子して飲んだ。Hさんは 俺と同じくらい大きくて(あ、背の話ね。)、顔、雰囲気がジャン・レノ似の 見るからにモテそうな人。酒が回ると、社内の女の子達の多くをいかに征服し ていったかという話題を自慢するでもなく訥々と話す。きっとここからも学び 取れることがあるに違いないと聞いていたのだが、腹が立ってくるのも自然の 摂理だね、これは。やっかみ。
 ありったけ飲んで帰る途中、ナンパしようだの、ソープ行こうだのと騒ぐ村 越を押さえつけるのにいささか手間取った。仕方ないので、傘でめった打ち。 最近、水道橋で飲む機会が増えたが、今一つ気に入った店がないんだよな。


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