1998年9月8日 後楽園ホール  FMW


 ちょっと遅れて会場に入ると、フェニックスのメンバー全員がリングに立ち、 ハヤブサがマイクを握って話していた。今日のメイン、タイトルマッチじゃな くなったらしい。まあ別に良いか。客はほぼ満員。話題性のある出来事や目玉 カードが何もない興行ということを考えると、悪くないだろう。ディレクTV 効果か、確実に後楽園での観客動員力が上がっているのは確か。
 派手な話題を振りまかず、中身重視というのがハヤブサらしいところなのだ が、これがうまくいくかどうかはこれからを見ないと。俺個人はこういうの好 きだけど、荒井社長プロレスデビューがあれほど当たったように、何に引きが あるかというプロレスファンの動向はしばしば掴みにくい。逆にイケイケ路線 が顰蹙買って客足が遠のくということだってあるし。大仁田が去って、ハヤブ サ色が強くなる今後のFMW。とりあえず手堅いことをやっていきそうだね。


第1試合 保坂秀樹 VS 非道

 以前から薄々わかってはいたことながら、改めてというか。保坂って奴は何 を考えているのかわからない奴だと思っていたのだが、要するに何も考えてい ないのだということを確信するに至る。
 運動神経はいい。技もかたちが綺麗。それでいて、こんな試合しかできない。 要するに、試合を組み立てるという観念がないに等しいのだ。そうでなければ、 あのタイミングで雪崩式フランケンシュタイナーを出すか? これはプロレス の技の中でも大技中の大技。一般的には試合のヤマで使われる技だ。それをま だ試合も観客も暖まっていない前半に唐突に披露。ライガーが初披露した頃は 大きなインパクトを観客に与えた雪崩式フランケンを単なる繋ぎ技のひとつに 堕してしまっているわけね。これはハンセンが天龍戦で奇襲攻撃にいきなりラ リアットを使ったのとは意味が大きく違う。何か考えがあるのなら、ラリアッ トだって雪崩式フランケンだって初っぱなに使っても別にかまわない。でも、 保坂はそうじゃない。やることがないから、なんとなくって感じ。もちろんこ の雪崩式フランケンだけを問題にしているわけではなく、保坂の試合の作り方 全般に関する問題である。通常のフランケンシュタイナーもカウンターの返し 技として2回にわたって披露。フランケンってそんなに安い技なのか?
 対戦相手の非道も同じレベルの選手。当然、内容は推して知るべしで、ディ レクTVはこういうカードこそダークマッチにするべきである。中盤から大技 連発で何とか格好ついたが、ちょっとお世辞にも誉めることはできない。最後 はビルディングボムで保坂のピンフォール勝ち。

今日の興行はグラウンドが多い。いいことだ。これがフィニッシュ。


  第2試合 フライングキッド市原、スーパー・レザー VS ミスター・ポーゴ、佐々木嘉則

 佐々木、完全にポーゴ越えを果たす。そう言って差し支えなかろう。レザー に体格でもパワーでも負けていない佐々木、頼もしいの一言。レザーをコーナ ーに詰めてのスプラッシュなど、日本人レスラーにはなかなか出せないナチュ ラルな迫力である。ポーゴもサンドカッターなどで奮戦、少しずつ進歩してい るところを見せていたように思うが、佐々木ほどのインパクトを残せないまま、 最後は佐々木がレザーのスプラッシュバスターに敗れた。
 ところで、そのオーバーオールは本当にやめてくれないか。全然、格好良く ないし、ECWのマネを何のひねりもなくやるような神経がまったく理解でき ない。ニュージェネレーションズの両手交差をブリーフ・ブラザーズがコマネ チと表現したおかしさとはまったく無縁のただのパクリである。特に佐々木の 見事な体の厚みは客に見せないのはもったいないと俺は思うのだが。

凸凹コンビ市原、まだがんばる


第3試合 大矢剛功 VS 邪道

 左肩にテーピングをして登場の大矢。嫌な予感が走る。邪道が左手を攻めて、 大矢が耐える退屈な試合になるかなという意味で。
 確かに序盤は邪道の左腕攻め。ところが大矢が左腕をかばいながらも、邪道 の左足を集中攻撃したことで、俄然試合がスリリングになった。互角の試合内 容。地味な展開ながら、プロレスのできる2人による実に締まった重厚な試合 である。
 客を飽きさせないグラウンドの後は、大技での攻防へ。4の字固めやコブラ ツイストで苦しめられた邪道が急所攻撃で切り返し、ブレインバスター、パワ ーボム。さらに予告ラリアットにいったところ、かわされて大矢のスリーパー ホールド。バックドロップは空中で切り返したものの、再び大矢のスリーパー ホールドで締め上げられる。延髄斬り、バックドロップ、卍固めと攻めた大矢 が勝利目前。しかし、カウンターの邪道のラリアット(放った邪道が場外へ吹 っ飛ぶほどのもの)を受け、一度は延髄切りを返したものの、さらにラリアッ ト。2冠戦を控える邪道の勝ち。非常に見応えがあった。
 なお、試合後、伊藤豪と小野がリングに登場。今更ながら小野のTNR入り が発表され、さらに邪道の勝利者インタビュー。有明での2冠戦での勝利を宣 言した。

腕を攻めれば足でやり返す


第4試合 リッキー・フジ VS 外道

 個人的にはセミと並ぶ今日のベストマッチ。あまりアメプロが好きではない 俺でもここまできっちりやられたら、拍手するしかない。
 一時は単なる員数レスラーにまで落ちていたリッキーであるが、今やFMW の重要なレスラーの一人。その多くを外道というライバルの出現に負うもので あることは疑いがない。ともにアメリカンプロレスを志し、体格的にも互角。 そして、現在の日本マットでトップクラスのセンスを持つ外道を得たことはリ ッキーにとって得難い幸運だった。何度となく当たり、進化を遂げてきた2人 の世界である。今回の試合はそれがブランドとも呼べるようなひとつの峰に到 達したことを示すものだった。
 今日の興行ではグラウンドの攻防が目立つ。エンターテイメントとともに、 レスリングをやっていこうという姿勢、実に正しいのだ。中でも、この2人の 地味ながら基本を押さえた攻めと切り返し。大技を連発することはどこのイン ディーの選手でもやること。特に大技を出さずとも、グラウンドとパンチの応 酬だけで、だれずに前半を引っ張った2人。この辺が俺的にこの試合を最も堪 能した部分である。
 そして、アクセント。終盤、介入してきた伊藤豪がコールドスプレーでリッ キーを目つぶし。さらに石灰を持ち出したところ、ついにブチ切れた中山香里 が乱入し、伊藤豪にエルボーを見舞ってから、あまりにも美しいスウィングD DT! 伊藤豪、ダウン。その間にリッキーが石灰を外道の顔に投げつけ、回 転式ブレインバスターでピンフォール勝ち。場内は大騒ぎ。中山とリッキーに 大歓声である。
 結局、中山復活のデモ舞台になってしまったと言えなくもないものの、全員 がいい仕事をしたので、非常に満足である。

じっくりとカミカゼベストマッチだね!


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