
1998年8月21日 クラブチッタ川崎 FMW
もうあきれ果てたという感じ。というよりFMWという団体が旗揚げして以
来9年間応援してきたのだが、今日に至って、本当に失望してしまった。
今まで不満がなかったわけではない。しかし、ここまで客をバカにした興行を
見たのは今回が初めてである。しばしば沸き上がるFMWを批判する声に対し
て、自分なりの反論を組み上げ、FMWを応援してきたつもりだが、こんなま
まなら確かにプロレス界にFMWはない方がいい。大仁田厚というバランス感
覚を失った人間の好き放題がまかり通り、それを観客の眼の前でぶちまける見
苦しいFMW。
大仁田FMWの頃からのファンなら、かつてのFMWには「大仁田より目立
ってはいけない」という不文律があったことをご存じの方もいるはず。大仁田
以外の選手はマイクを握ることも基本的には許されなかったのだ。言ってみれ
ば、大仁田以外の選手は自分を存分に表現し、良い試合をすることを禁止され
ていたようなもので、大仁田は自分が目立つことを団体の発展よりも優先して
きたのである。これを破ってしまった選手も過去に何人かいる。北斗晶は2度
とFMWに呼ばれなかったし、松永光弘は一定期間ホサれてアンダーカードで
試合をしていたのだ。大仁田が引退した途端、ハヤブサや田中、金村などの若
手が一斉にぱっと開花したのもこのバカげた規制がなくなったためだ。これが
新生の価値。
どうも、この不文律、復活したみたい。大仁田厚主催興行の時のミョーな感
じが今日も漂っているし。FMWの宣伝に務めてきた自分が今になってネガティブ・キャン
ペーンを張るのは心苦しいものがあるが、何も誉められない興行だったのも事
実。ある意味で決心がついてよかったか。個人的に、大仁田厚の出る興行には
金を払う価値がないということだ。
もちろん審判を下すのは自分を含めた観客。俺がダメだと思っても、大多数
の人が支持するのなら、それは仕方ない。そうなるのなら、俺は去るけど、F
MWは更なる人気団体として大きくなっていけばいいことだ。これが面白いと
いうなら、もう俺には言うことがない。
第1試合 大矢剛功 VS 山崎直彦
山崎隊の初仕事。ヒロケンさん、なかなかがんばっている。向こうから声が
聞こえてくる。時折、K☆INGの声も。俺が一番仕事に不熱心。普段の職場
での俺を見るようだ。
山崎は一回り体が大きくなった。まちがいなく将来の大器。貫禄充分の大矢
にドロップキックの奇襲をしかけ、ストンピングを打っていく。得意のマーズ
アタック(ダイビングボディアタック)、一発。マーズアタックというのは同
名の映画に出てくる宇宙人に山崎が似ていることから、我々が名づけたもの。(^_^;
しかし、ドロップキックをかわされ、逆に大矢のストンピングを嫌というほど
もらう。グラウンドでも締め上げられる山崎。
アメプロをそのまま再現しているような今のFMWの中で1人無我の大矢。
余裕を持った試合運びで、しばらくつき合っていたが、一気に腕ひしぎ逆十字
固めで山崎を下す。
第2試合 非道 VS 上野幸秀
「ストップ・ザ・ミュージックー! お前、何しに帰ってきたんや。上野?
お前は早川ケンだろう。変身してみろー!」
プロレスは下手なままだが、マイクアピールはうまくなった非道。上野は無
反応。
グラウンドムーブは上野がややリード。つーか、非道より下手だったら、レ
スラー辞めた方がいい。しかし、大きい非道が余裕の展開である。こんな非道、
初めて見たってとこか?
上野は得意技のラ・ケブラーダで非道と俺の隣の席のカップルを吹き飛ばし
たものの、相変わらず気迫の伝わらない選手。トライアウトなのに、これでい
いんでしょうか? 短いタイムで非道ちゃんボンバーにフォールを取られてし
まった。
試合後もリングに居残った非道。「come out and play」が流れ、ブリーフ・
ブラザーズ登場。非道も金村が持ってきた浴衣を上から羽織る。久しぶりのコ
ントか? と、そうではないらしい。冬木の誕生日だということで、「happy
birthday」を歌って、冬木を迎える。マイクを取った冬木、「大仁田、出てこ
い!」と挑発。「Wild thing」が流れ、チーム0が登場した。全員、上はブル
ース・ブラザーズ風。下は赤いふんどし。大仁田の顔がはっきり笑っている。
びっくりしただろう、と言わんばかりの得意げな顔つき。TNR側は気圧され
た態度。
「俺達は赤フン兄弟だ!」
大仁田のマイクの声も完全に笑っている。レスラーとしてだけでなく、役者
としても合格できない人だ。しこしこをやる金村に「マネだけじゃなくて、出
してみろ! 俺がやったら問題になるだろ!」大仁田はFMWの中では無制限
の権力者。下手な漫才も自分が満足するだけやり続けることができる。
ブリーフ・ブラザーズの価値はFMW内でレスリングの王道を体現している
ハヤブサや田中に対するアンチテーゼである。正規軍とTNRの抗争はイデオ
ロギー闘争の要素を盛り込み、スリリングなもののとなった。(ブリーフ・ブ
ラザーズのキャラクターもWWFをそのままパクったものではあったが)さて、
ここで大仁田がブリーフ・ブラザーズの二番煎じをすることに、何か意味があ
るのか? 見えてくるのは、大仁田はどうしようもなく頭が悪いという事実そ
れだけだ。ブリーフ・ブラザーズは批判に晒されたが、正規軍とのアングルに
おいて確かにプロレスだった。赤フン兄弟はプロレスではない。芸能人大仁田
らしい仕掛けの3流のバラエティ。ゴーマンになるが、これを見て面白いと感
じた人はかなりセンスがないと言わざるを得ない。
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| グラウンドでは上野 | 久しぶりかな | これが大仁田のやりたかったこと |
第3試合 リトル・フランキー VS 角掛留造
いつも通りの彼らの仕事をした。彼らには何も責任はない。問題はこれをこ こに持ってくる大仁田のセンス。かつてのFMWを再現したいということにし ても、実は大仁田FMWでミゼットの試合が行われたのはほんの数回である。 これを組むなら、FMWらしく女子の試合を他団体から選手を借りてきてでも、 やってはいかがだろうか。
第4試合 リッキー・フジ、スーパー・レザー VS 邪道、外道
レザーを恐れ、対戦を嫌がる外道。まあ、確かに体格差はすごい。しかし、
レザーも顔が笑っている。お前も失格ね。
レザーがパワーボムの体勢で持ち上げて、リッキーが首をつかみ、ネックブ
リーカーに持っていく新技を披露。カミカゼも相変わらず好調。邪道のウェス
タン・ラリアットも一回はスウィート・ティン・ミュージックで逃れたリッキ
ーだが、最後はラリアットを受けた後の後方回転エビ固めで邪道に丸め込まれ
た。いつものアメプロ。可もなく不可もなく。
なお、試合後、リッキーとレザーはヘッドバンキングをがんがん決めました。
ヘッドバンキングをやりすぎて脳内出血で死んだメタルファンもいるので、ち
ゅういがひつようだ。
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セミファイナル ハヤブサ、大矢剛功 VS 黒田哲広、保坂秀樹
いつもと変わらぬ佇まいのハヤブサ。じーんとなってしまう。今のFMWの
中で、俺はただお前だけを信用する。今まで、どんな時、どん
な会場、どんな相手でも胸いっぱいで戦い、FMWを体現し、勇気を与えてく
れたハヤブサ。お前一人がFMWだ。お前一人を俺は見に来たんだ。
ハヤブサと黒田の絡みからスタート。いきなり黒田のものすごいラリアット。
さらにラッシュをかける黒田だが、ハヤブサはドロップキックで切り返す。
ハヤブサは絶好調。保坂に見舞ったケブラーダも足から綺麗に着地してみせ
る。トペ・アトミコ→ブファドーラ。初代タイガーやハヤブサのように美しい
技というのは何度見せられても見飽きるものではない。保坂の新コスチューム
は薄紫の上下。かっこいいとは言えない。それ以上に、この4人の中では動き
の重い保坂。ハヤブサに決めたビルディングボムなど迫力十分だったが…。黒
田の回転ラリアットなど攻め込まれたハヤブサは2カウントの連続。危なかったが、
最後はハヤブサがファイヤーバードスプラッシュを決めた後、大矢が保坂にバ
ックドロップを連発、卍固めに捕らえる。一回は倒れてしまったものの、再度
固めてギプアップ。その間にハヤブサはプランチャを黒田に見舞っていた。
メインに大仁田の試合を控えていることに対し、ハヤブサがどういった試合
後のアクションを見せるかに興味を持って見ていた。案の定マイクなどは手に
取らず、一回だけコーナー最上段からバック転を見せてアピール。ようやく見
たいものを見たという気がした。これで帰った方が気分良かっただろう。
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| いつものFMW | ガンつけあってから | 横から捉えたケブラーダ |
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| トペ・アトミコ | ビルディング・ボム | 2人がかり |
メインイベント
| 大仁田厚 | 冬木弘道 | |
| ミスター・ポーゴ | VS | 中川浩二 |
| 佐々木嘉則 | 金村ゆきひろ |
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| 哀しい色やね |
とことん山で出会ったハヤブサ母さんと再会。今日は子供は置いてきたとの
こと。出待ちもするらしい。しばらく会場の裏側で立ち話をする。携帯電話に
もハヤブサの写真がしっかり張ってあるのだ。
「旦那さんもプロレス好きなんでしょ。幸せでいいね」
「うーん」
「旦那さんとハヤブサ、どっちが好き?」
「ハヤブサに決まってるでしょ」
訊く方も訊く方だが、そんなケーフェイに来られると、フォローしようがな
いぞ。
「あんた、背が高くていいわね。でも、とことん山で一緒にいた子がかわいか
ったわ」
「小田原君ですね。彼はすごくもてます」
小田原君と一緒に行動すると、みんな人気を持ってかれてしまう俺(T_T)。他
にもハヤブサの女ファンがみんな出待ち体勢。ハヤブサの結婚前はずっとすご
かったんだけどな。「ハヤブサにリングシューズを買ってあげるのー」と話し
かけてくることで有名な女性ファンとも話す。なんとこの人、邪道と外道の区
別がつかないようだ。そこまでハヤブサだけを見ているようである。いやー…。
ま、これもありでしょ。熱狂的ファンってのはありがたいもんです。
オバケさん、K☆ING、ゆうじさん、ヒロケンさんと川崎の魚萬で飲む。
どーんと重い。大仁田が中心になっていてはダメだ。それをひしひしと感じて
しまった今日の興行である。FMWは切った。そう言う俺にゆうじさんが言っ
た。
「どんな最低の団体でも、そこにハヤブサがいれば、俺は見に行きますよ」
それが今日一番感銘を受けた言葉。ビールを飲み干すうちに終電が終わり、
2時半頃になって、店を出、街を歩くことにした。
昔、蒲田の女の子とよく歩いた川崎。つまんない街だと思っていたけど、な
んだかんだで今でも遊びに来てる。川崎と言えば、安いソープに、クラブチッ
タ、そして川崎球場。足は自然と川崎球場に向いた。
我々FMW者がこの川崎球場にどんな思いを持っていることか。俺は6回全
部皆勤賞(+IWAジャパン)。ヒロケンさんは大仁田VSテリーだけ休み。
裏川崎(松永VSレザー)へ足を運んだらしい。比較的新しいファンの3人も
それぞれここで、ハヤブサと小橋の戦いを見届けたのである。川崎球場に向か
う途中にセブンイレブンがあるのも、行ったことのあるファンは覚えているだ
ろう。大会当日には缶ジュースが氷に浸けられて、店の前で売られていること
も。そこでソフトクリームを買い、誰もいない川崎球場のチケット売場に5人
で座り込む。
酔っぱらいの浮浪者が話しかけてくる。
「明日、ここで何があるのー?」
「プロレス!」とオバケさん。
「明日、ここで大仁田と金村が戦うんですよ。サイテーの試合を」俺。
スーツ姿なのに、そのまま寝転んだ。川崎の空には星はひとつも見えない。
オバケさんは寝入ってしまったらしい。K☆INGの急所を潰そうという話を
している間に空が明るくなった。
将来、FMWの若手がデスマッチではない普通の試合でメインを張ることが
俺の夢だと話していたFMW旗揚げ直後の大仁田。今の大仁田を抹殺すること
こそ、かつての大仁田を信じた者の最後の誠意ではないか?