1998年6月27日 福島体育館  FMW


牛タンは太助
 
白石城
 
 プリンスホテル青葉で目を覚まし、仙台の街をぶらつく。朝飯、何にす るか。今日も力寿司という考えもあったが、仙台に来たら、やはり牛タン は外せないだろう。昔の彼女と旅行に来た時はなんか牛丼屋みたいなまず いところで食べてしまったし、仙台の子とつきあっていた時は彼女が肉嫌 いだったので、全然行かなかった。つまり、俺はまだ仙台のおいしい牛タ ンを知らないのだ。これはいかん。って、牛タンなんていつも新宿の「ね ぎし」で食べてんだけど。
 で、仙台の牛タンなら「太助」。最初に牛タンを始めたという、有名な 店のようだ。11時半開店なので、シャノアールで時間をつぶし、開店の 5分前に行く。もう待ってる客が1組。俺が並ぶと、たちまち後に行列が できた。牛タン、麦めし、テールスープで食事。
 仙台に別れを告げ、福島へ。白石での乗り継ぎがタイミング悪く、いっ たん降りて、知らない町をぶらつく。白石城を見て、紅茶味のソフトクリ ームを食べた。いい大人の男がソフトクリーム食べちゃいかんだろうか。
 福島に着いたのはだいたい3時頃。住んでいる人には悪いが、旅人にと ってあまり興味ひかれるものがない場所だ。食事をするところを探したけ ど、ぱっとしたところがない。NTTのお店が「インターネット無料体験 フェア」というのをやってる。無料体験させてもらう。(^-^; ここから 自分のホームページを覗き、掲示板に仙台の簡単な感想など書き込む。本 当はヒロケンさんかともよしさんに速報頼もうと思っていたのだが、電話 番号を控えるのを忘れ、結局会場であったみよっちさんに頼んだ。昨日の 試合、俺的にはすごく面白かったが、今の金村に2冠挑戦はやや重かった 感じ。
 天保時代からやってるという「喜多屋」というそば屋でそばを食べ、福島体育 館まで歩いて開場と同時に会場入りとなった。購入した当日券(7000 円・ポスター付き―俺はもらい忘れた)はなんと最前列。FMWでは初め て。良い写真が撮れそうだ。嬉しい。中に入ると、今日はライトなし。天 井の照明をつけたまま試合をやるようだ。集中できるかな? 客足の方は、 今日は食いつきが早い。広い2階はがらがらながら、1階は試合開始の頃 にはすでに7割方埋まる。その中に、今日もみよっちさん発見。仙台から 友人の車に乗ってきたという。金がなくて、チケット代も借りているらし い。2階の張り出しには昨日と同じ「爆弾男 金村ゆきひろ」の垂れ幕。 みよっちさんのご友人のW★INGフリークスが張ったものだとか。濃いねえ。


第1試合 ミスター・ポーゴ、フライングキッド市原 VS 佐々木嘉則、山崎直彦

 最前列に陣取るおじさんたち、プロレスをまったく知らないようで、ず っと笑ってる。地方興行らしくて、これはこれでいいなと思っていたけど、 しまいにはうんざり。池田には「自衛隊ー!」、ハヤブサには「牛若丸ー !」、そんなのはまだいいとして、「きんたまに噛みつけ」とかずっと下 ネタ連発。しまいには大声で「こんなもの真剣に見るなんて」。金払って 冷やかしに来た客ならまだしも、招待客のようだね。興味ないなら、もう 来ないでね。
 ちなみに今日はマスコミ1人もいない。ネットが成長して以来、プロレ スにおけるマスコミとネットの関係は微妙なところがあって、一概にどっ ちと言えんものなのだけど、とりあえず取材に来ないんじゃ話にならない ね。いくら団体増えたと言っても、あなたたち、プロでしょ? ここでマ ット界の流れを変える大事件が起きるかもしれない。(たぶん起きないけ ど。)週プロもゴングもファイトも東スポも掬えず、すべては闇の中。あ まり人気のない弱小インディーならともかく、FMWの福島大会だぜ。
 さて、関係ないこといっぱい書いたけど、試合の方は山崎が健闘。ジャ ンプして決める回転エビ固めや串刺しドロップキックで粘ったものの、ポ ーゴのジャーマンに敗退。FMWの若手戦線、なかなかいい感じになって いくんじゃない?  


第2試合 シャーク土屋 VS クラッシャー前泊

 メモを取ったり撮影したり忙しそうな俺に隣の兄ちゃんが話しかけて くる。眼鏡をかけた素朴な感じの人だ。
「雑誌の取材ですか?」
「いえ、インターネットの観戦記ですよ。イヒヒ」
 そんなところから会話が始まり、何かと話しながら観戦。
「どこの団体が好きなんですか?」
「新日本、全日本、FMWですう。FMWは毎年この時期になるとやって くるんですう。大日本がもうすぐ来るけど、去年見た時ダメだったから、 今年は行かないですう」
 なるほど。地方興行って、ある意味、後楽園より怖いかも。情報の少ない 地方で、1年に1回の生。地方の人が直接プロレスに触れられる数少ないチ ャンス。そんな興行で手抜きしてたら、もう来年からは見に来てくれないか もよ。
 さて、話をリングに戻そう。延々と続くこの対決だが、今日は少しコミカ ル色を入れた。地方モードってわけね。場外乱闘では、土屋が俺の例の隣の 兄ちゃんに「どけ」。兄ちゃん、素直にイスを譲り、後の空席に移動。「怖いですねー」
 昨日試合を決めた土屋の倒れ込みラリアットを返す前泊。おお、今日 はやる気なのか? しかし、次の瞬間のスモールパッケージホールドで あっさり3カウント。試合時間2分ほど。ああ・・・。ちなみに隣の兄ちゃ んのイスは試合後ちゃんと山崎が持ってきた。


第3試合 金村ゆきひろ、非道 VS 邪道、外道

 ブリーフダンスを踊る金村と非道。「これがあの噂の・・・」という感じで ぱちぱちフラッシュがたかれる。一緒になって踊る人は誰一人いない。ここの 人たちは普段、雑誌やビデオでしかFMWと接することができないんだよね。
 金村がマイク。「兄貴。非道が兄貴たちに伝えたいことがある。今日の試合、 兄貴たちをボロ雑巾のようにして、それを兄貴たちのケツの穴に突っ込んで、 今までは邪道、外道、非道だったのを非道、邪道、外道にする」
 やばいっすよー、という感じで非道が金村に向かって手を横に振る。
 試合開始。邪外のコーナーに控える金村。邪道に頭はたかれて、自分のコー ナーに帰る。地方モードだね。金村と外道でスタート。しばらく試合せずに ふざけてる2人。手抜きか? ところが動き出すと、外道のアームホイップ が見事。素晴らしい鮮やかさで金村を幾度もマットに叩きつける。
 金村から非道、外道から邪道に代わる。金村が叫ぶ。「いけ、邪道。(じ ゃなくて)非道や」いじめられる非道がタッチ求めても、よそ向いてて全然 気が付かない。非道が相手方のコーナーに連れ去られて初めて「非道!」と 応援。地方モードかい。お客さん、笑いまくってるから、別にこれでいいのか。
 金村はバク山、非道はパイルドライバーなどで邪外を攻めるも、邪道のウ ェスタンラリアットから、続けざまに外道のスーパーフライ。非道が3カウ ントを取られる。


第4試合 大矢剛功、リッキー・フジ VS 冬木弘道、中川浩二

 小さな女の子が数人リングに上がって、花束の贈呈あり。伊藤豪、優しそう な、悪そうな笑みを浮かべて、子供をサポートする。中川、冬木もちゃんと受 け取った。古いタイプのヒールじゃないってことか。
 で、この試合の中川、フォークを凶器に使って、リッキーを流血させる。と、 言うか、それしかやらなかったのだ。あのテクニシャンが技も出さず、ひたす らフォーク。まさか、シンやブッチャーのマネでもあるまいし、中川が何かを 狙っているのはわかる。クールな新しいヒール像ってわけか。しかし、ダメだ よ、これは。何がダメって、退屈なんだもん。存在感ないもん。見た目は雰囲 気があって、技術もある中川なんだから、もっとマシなことができるでしょ。 方向性を考え直すべき。
 伊藤豪のスプレー攻撃などもあって、苦戦を強いられる正規軍、大技で反撃。 大矢がダイビングニードロップ、ネックブリーカー、逆片エビ固め、卍固めで 冬木を攻め、代わった中川にもランニングネックブリーカードロップ、リッキ ーも中川にDDT、カミカゼ。リッキーのドロップキックと大矢のバックドロ ップの合体殺法は圧巻。勝利を手中にしかけた。ところが中川はさらにフォー クで応戦。ついに正規軍の反則勝ちとなった。
 マイクを握り、「明日、見てろ」と大矢。東京でやることを地方で振るなっ ての。この試合、見ようによっては、昔のどうしようもないプロレス。今のと ころ中川には雁之助の代わりは務まりそうにない。あくまで現時点では、だけど。

なんかすごいフォーク攻撃中


第5試合 池田大輔 VS 保坂秀樹

 保坂を蹴っぽり、腕ひしぎに行く池田。ところが保坂に腕ひしぎを切り替え され、それがきれいに決まってしまうのだ。さらに保坂のキーロック。アーム ブリーカー。左腕が痛い。
 保坂の雪崩式フランケンシュタイナー、ノーザンライトスープレックス、パ ワーボム。池田、3カウントぎりぎりで返す。すると、なんとこの会場で、床 を踏みならすドドドドが。さらにパワーボムの体勢で持ち上げられると、池田、 保坂の頭にチョップを入れて脱出。馬場直伝(?)の脳天唐竹割り。膝十字固 めを決められ、もがき苦しむ保坂。バックドロップも2連発。保坂、フランケ ンシュタイナーで反撃。しかし、大ちゃんボンバー1発であっさり3カウント。
 良い試合だった。保坂は確実に良くなっているようだ。もう少し勝負に執着 がほしいが。そんなことを考えていると、突然、金村が乱入。イスで池田の脳 天を一撃。座面がへっこんだ。池田も大ちゃんボンバーでやり返す。金村、マイクを 握る。
「お前ら(バトラーツ)のプロレスはオナニーや。いんちきプロレス!」
 なかなかのインパクト。こんな爆弾発言もマスコミの誌面に載らないわけな んだね。だから、俺が載せる。


セミファイナル 黒田哲広 VS ザ・グラジエーター

 チョップ合戦からスタート。グラジが打ち勝った。黒田、鉄柱を使い、グラ ジのヒザを攻める。しかし、グラジのタックルは大迫力。場内、わっと湧く。 わかりやすいもんね。
 キャメルクラッチで攻められていた黒田、グラジが突っ込んでくるところを スライディングレッグシザーズで捕らえる。グラジはコーナーマットに顔を打 ちつけた。ラリアット! グラジは倒れない。もう1発、さらに、もう1発。 3発目でようやくグラジをマットに這わす。「いっちゃうよー」と黒田。それ、 やめろって。
 グラジの怒濤の攻め。ロープ越しのショルダーアタック、ダイビングイス攻 撃では、座面がきれいに抜けた。アッサムボム。足つかみ式リバースボム(俺 が名づけた)。これに耐えた黒田、ジャーマン、ラリアットで反撃。しかし、 肩車の体勢で抱え上げられ、腹から落とされる。ムササビのようなダイビング ボディプレス。フィニッシュだとばかりにスーパーAボムの体勢に入ったグラ ジ。黒田、抜けて、スクールボーイを決める。しかし、再び担ぎ上げられ、完 全なスーパーAボム。グラジの勝利である。

仲良いわけではないうわー


メインイベント ハヤブサ VS スーパー・レザー

 ハヤブサの登場が告げられると、静かな会場がざわざわし始める。席を立ち、 ハヤブサの入場口に駆け出す福島の客。隣の席の兄ちゃんが「僕の目当てはハ ヤブサです」と言い、カメラを手に走る。ほとんどの観客はハヤブサを見に来 ていたようだ。
 実は俺はハヤブサの8つのカラーの中で桃色だけは見たことがない。どうも 東京では着てくれないようだ。で、密かに期待していたのだが、ドンピシャ。 モモブサなのである。鶴が舞う羽織も素晴らしい。これだけで来た甲斐があっ たというものだ。
 チェーン・ソーのエンジン音が響く。レザーの登場で逃げまどう客たち。い いねえ。これぞ、地方興行。レザーも試合前からあまり暴れることはせずに、 すぐに両者はリング内で対峙。チェックしようとする姉崎レフェリーを蹴飛ば す仕草のレザー。
 試合開始。両者はリングを回る。組み合うと、レザーは突きを入れ、ハヤブ サをコーナーに放る。ロープを飛び越えたハヤブサは突進するレザーにキック。 そして、場外乱闘。もみ合いながら会場を出ていってしまう両者。
 これはもしやと思っていたら、やはり。2階観客席に現れ、大乱闘。後楽園 では見れないハヤブサの姿だ。1階へ落とされそうなハヤブサ。しかし、なん とか踏ん張り、体勢を入れ替え、レザーを落としにかかる。必死ですがるレザ ーの手を非情にも踏みつけ、ついにレザーは一階へ墜落! って、そんなむち ゃくちゃ高いわけじゃないけど、レザーはちゃんと着地。そこへハヤブサ、2 階からのプランチャ。これはすごい! お客さん、大喜び。見に来て良かった ー!
 リング内に戻り、ハヤブサはロープ越しのギロチン。しかし、パワーに勝る レザーはサイドバスターで思い切り叩きつけ、腰にニーを落とす。片エビ固め。 自分の膝の上に腹から落とすストマックバスター。
 しかし、ロープワークからハヤブサはフライングニールキック! この技は 大好きなのだが、すごく久しぶり。ますます見に来て良かった。場外に逃げた レザーにラ・ケブラーダ。控えめな福島県人たちが沸く。レザーを リング内に戻して、トペ・アトミコ、ブファドーラの一連の流れ。レザーはハ ヤブサを逆さに抱えて体重を預けるアバラッシュホールド、そして、危険なト ゥームストンドライバー。これも3カウントぎりぎりで返す! 小 さいながらもハヤブサコール起こる。
 ハヤブサは体重の割にパワーのある選手。レザーを高々と抱え上げ、タイガ ードライバー。すごい音が響く。自分の体重で潰れたレザーを後目にコーナー へ上るハヤブサ。場内はもうあの技を期待する空気に満ちて、カメラを構える 者多数。フラッシュの閃光の中でファイヤーバードスプラッシュ! ここでは 1年にたった1度のお披露目。3カウントが入る。
 後楽園なら、すぐにマットバンバンだろう。ところが誰もやりに行く者がい ない。きっと、やりたいのだ。けれど、やった経験がなく、しかもはにかみな 彼らは自分が1番になるのは嫌なんである。それが証拠にしばらくたってから 1人がリングに駆け寄ると、あとは押し寄せる人並み。いつもと変わらぬマッ トバンバンの光景。ハヤブサが手をさしのべる。握手してもらったと言って、 きゃーきゃー飛び跳ねる女の子の2人組。ハヤブサ、マイクを握る。
「ここに帰ってきて、みんなの声援がすごく嬉しかった。また必ずここに帰っ てきます」
 ハヤブサグッズを抱え、嬉しそうな子供たち。プロレスって本当はこういう ものだった。良いものを見させてもらったという気持。ハヤブサは本当に大仁 田に並んだ。どんな会場でも観客を満足させて家に帰らせることができる本当 のエース。
 隣の兄ちゃんとみよっちさんに挨拶し、タクシーを捕まえて、福島駅へ急ぐ。 タクシーの運ちゃんと喋る。「大仁田のとこですか? あの会場はこの前みち のくがやったけど、100人くらいしか入らなかったよねえ。全日本もダメだ ったし。この辺はいっぱいにできるのは新日本だけだよ」新幹線には余裕で間 に合った。
 新幹線の窓辺にもたれかかり、流星のように流れてゆく光を見ながら、いろい ろ考える。
「旅芸人の記録」という映画があったっけ。プロレスラーって旅芸人なんだね。 一座でバスに乗り込み、明日も知らない町で安い夢を売る。子供だましのモン キービジネス。真剣に見る方がイカレているのかな。
 でも、プロレスといういかがわしい枠組みの中から人間が見えてくる瞬間が 確かにあるんだよ。虚構の中でしか語れない真実。ドサ回りの水商売だと思っ ていたら、決して見えてはこない。それを見るために、俺たちは来るんだ。来 て良かった。こんなもの見てしまったら、もう後楽園ホールとかじゃプロレス 見れないな。たぶん見るけどさ。

初めて見るモモブサ!この直後、2階から飛んだ

どの会場でもこの高さ、この飛距離いつ見ても、ひやひやする技だ
 


HOME


[PR]DoCoMoご利用の方必見!:無料の運命鑑定≪スピリチュアルの館≫