
1998年5月19日 後楽園ホール FMW
今日は超満員。開始前は北側の後がやや空いていたものの、時間とともに埋 まり、最後は空席はほとんどなくなった。ほとんどの団体が小さな後楽園ホー ルでの興行にも苦しむこの時代に、常に後楽園を満員にしているのはさすが。 後楽園は一応、今日からインディ3連戦(FMW、大日本、イン活)であるが、 ちょっとレベルが違う。FMWをインディと呼ぶかどうか難しいところである し。それでも今日のメインに川崎球場のメインでやってもおかしくないこのカ ードを持ってきたのは、ディレクTVでの放映に勢いをつける意味か。こんな 試合を連発されたら、FMWファンはディレクTV入るしかないもんね。今日 は横浜のような立派な舞台はないが、小さな放送席が作られて、杉作J太郎が 何か喋っていた。
第1試合 リッキー・フジ VS 保坂秀樹
かつてジュニア王座をめぐって戦った2人。保坂のどこがジュニアだという
感じもするが、以来、この2人は何度か対戦している。たぶん、対戦成績は保
坂の全勝のはず。最近、良い試合を見せてくれる保坂には個人的に注目してい
る。今日もやってくれるものと俺は思っていたが…。
試合開始早々、トペ合戦。保坂のトペは重量感あって、すごい。しかし、保
坂はちょっと勘違いしているような…。飛び技の多い保坂。体格からすれば、
意表を突いていると言えるが、そればかりを得意技にするのはどんなもんだろ
うか。保坂にはもっとパワーファイターとしての自分を生かす技があるような
…。迫力充分のマウンテンボムなど見ていると、そう思うのだが。
その保坂、いつも通り綺麗なフランケンシュタイナーやいまいちのスパイン
バスターなど出すも、大事なところでたたみかけられない。案の定、リッキー
に攻め手を奪われてしまう。リッキーはブレインバスターに行こうとしたとこ
ろ、保坂の体重を持て余し、1回は失敗。再度、高々と持ち上げ、回転式垂直
落下式で落とす。3カウントが入る。ありゃ、リッキーが勝ってしまった。
ケツを半出しのリッキー。結局、やるんじゃねえか。それにしても今日の保
坂のこの精彩のなさはどうしたことだろう。一度は諦めかけたものの、最近の
君には期待してるんだぞ。君自身が諦めてしまっては話にならないだろう。
ドームが終わっても、まだみんな注目しているはずだ。がんばれ。
ブリーフ・ブラザーズのコント
今日は郷ひろみや小柳ルミ子がネタ。妻の方が格上ということで、小柳夫妻 非道夫妻を引っかけたネタには拍手が起きていた。しかし、全体的に低調。ま あ、寒くても許されるのが、こいつらですからね。
第2試合 フライングキッド市原、ミスター・ポーゴ VS 佐々木、山崎
ポーゴは一時期より体調良さそうだ。佐々木を強烈なチョップで吹っ飛ばし、
先輩らしさを見せる。佐々木は体のでかさで8年も先輩の市原を攻める。抱え
上げてのサバ折りに市原苦しそう。動きもいいし、佐々木は数年内に上に来る
かもしれない。一方、山崎はなぜか懐かしい雰囲気のするレスラー。フライン
グクロスチョップからのダイビングボディアタックなどマスカラスみたいだ。
かつての江崎英次のように強力な光こそないが、努力次第では良いレスラーに
なるだろうと思う。
コーナーの市原に突進する山崎。しかし、市原は浴びせ蹴りを見舞い、ロー
プ2段目からのムーンサルトプレス。いくらなんでも、まだ負けられない。
第3試合 クラッシャー前泊 VS シャーク土屋<ブルロープデスマッチ>
久々のFMW女子。しかし、会場の雰囲気はかなり重かった。なぜか昔のグ
ラジVSタイトンを思い出してしまう。ゴツゴツした選手同士の対戦というの
は、本当にゴツゴツしてしまって(貧困な表現(^-^;)、あまり面白い試合に
なりにくいようだ。ラリアットが連発され、土屋の持ち込んだ有刺鉄線竹刀で
殴り合い、最後は土屋が有刺鉄線竹刀スリーパーから、そのままロープで前泊
の首を絞め、有刺鉄線竹刀を首に挟んだまま、前泊がレフェリーストップ負け。
ディレクTVとの提携でFMW女子はむしろより苦しくなったのかもしれな
い。俺たちプロレスファンはちょっとくらい締まらない試合もにこにこしなが
ら見させていただいてる。殊にFMWファンは優しい人種なので。しかし、テ
レビの視線は会場のファンよりはるかに冷たいものだ。有料放送PPVの求め
るクオリティを今のFMW女子がクリアできるかというと…。工藤やC豊田な
らできたろうが、残された選手はまだ彼女たちの域には到達していないように
思える。まして、女子抜きの横浜大会があれほど成功した。
土屋、前泊はLLPWにも仕事先を見つけたようである。FMWならではの
女子プロレス、FMWでしか見れない女子プロレス。鍵はやはり中山香里にあ
る。
第4試合 スーパー・レザー、非道 VS 邪道、外道
「ロッキー」のテーマで入場の非道、最近いいような。やられっ放しになる
のはあいかわらずだが、二郎パンチで局面を変えることができるようになった。
実際、非道の試合で一番湧くのはパンチを出すときである。今日は「ロッキー」
とレザーから呼ばれ、すっかりその気である。
最後は邪道が腕をまくり上げると、ご丁寧に黒いサポーターが。レッグシザ
ーズで逃れた非道だが、走り込んだところをカウンターでラリアット! 迫力
充分。そのまま邪道が非道をフォールした。
第5試合 中川浩二、黒田哲広 VS 冬木弘道、金村ゆきひろ
なんと、元ZENの二人はテーマ曲なし。徹底しているね。TNR側は
「come out and play」がかかり、金村が入場。いつまでたってもテーマ曲が
変わらない。別々に入場するはずだったんだろうと思うが、何か手違いがあっ
たようで、金村が冬木を呼びに戻り、やっと2人揃う。
黒田―金村でスタート。なんとグラウンドの展開。金村、グラウンドで黒田
にそこそこ着いてゆく。金村もW★ING出身と言いながら、剛にも教わって
いるので、松永光弘のような完全なでくの坊よりはかなりレスリングができる。
冬木に変わり、奇声を上げて、黒田と張り手合戦。黒田、冬木に貫禄負けし
てない。体の大きさでもパワーでも冬木と十分やれそうで、頼もしい。冬木の
ヒザにドロップキックを打ち込み、のたうち回らせる。
ところが中川が出てくると、試合の流れが一変。金村、冬木の徹底した腕攻
めに会い、うめくばかりの中川。中川をコーナーに宙吊りにして、金村はドロ
ップキック。腕へのギロチンドロップ。今日も調子良くバク山スペシャルを見
舞う。冬木に代わって、早くもパワーボム。もうここで終わってしまいそうだ
ったが、中川、金村にカミカゼを見舞い、黒田にタッチ。黒田、一気に飛ばし
てゆく。金村、冬木にラリアット連打! 金村に得意のダイビングエルボー。
一介の若手の頃から使っている技だ。しかし、金村、冬木が串刺しラリアット
の2連打。久々のヒューマン・トーチ。伊藤豪も絡んで、黒田の顔にパンツを
かぶせ、視界を奪われた黒田に冬木のラリアット。3カウントが入る。
伊藤豪ぴょんぴょん跳ねながら、マイクを取って黒田たちに呼びかける。
「黒田君、髪の毛切ったのね。前の方が良かったよ。(観客、爆笑)黒田君、
中川君、保坂君、腹は決まったかね」
金村もマイク。「黒田、ブリーフは履くものだ。被るものじゃない。そんな
ハレンチなことしてるなら、ブリーフ・ブラザーズに入れ。そのブリーフ、受
け取れ!」
非道「君の浴衣はもう僕が用意してあるんだよ。何か言ってみろ!」
「黒田、しゃべる必要ないぞ!」怒った観客が叫び、黒田無言で退場。TNR
も白けた様子で引き上げていった。
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| どこへゆく… | もはや定番の黒田VS伊藤豪 |
セミファイナル 大矢剛功 VS ザ・グラジエーター
「北斗の拳」にそのまま出てきそうなグラジに対し、大矢はかなりスマート。
一時期より、筋肉が落ちた。見栄えのする体ではないが、先日は「無我」で藤
波辰爾ともやってきて、調子は良さそうだ。今日もグラジと組み合うなり、い
きなりバックドロップ! 大矢の必殺、伝家の宝刀である。場外に逃れるグラ
ジ。低かったせいか、それほどダメージをうけた様子はない。
しばらくグラウンド。パワーを生かして、よく着いてゆくグラジ。大矢の手
を引いて、ショートレンジのラリアット2発。さらにスリーパー。アッサムク
ラッチ(アルゼンチンバックブリーカー)、逆エビで大矢の背骨を痛めつけて
ゆく。
でかいやつは足を攻めるのが定石。大矢は4の字固め。さらにインディアン
デスロック。グラジも大矢の足を取り、固めたままフェースロック。逆エビ固
め。そして早くもアッサムボム! ノビた大矢を後目に場外へ出て、机の設置
にかかる。ダイビングラリアットを打っておいて、大矢を抱え上げ、場外投げ
捨てスーパーアッサムボムonデスクか! と、大矢は「あの」大森のように
するっと抜けて逃げる。大矢は風貌も渋いが、攻撃も渋い。卍固め、コブラツ
イスト。グラジは机を大矢の顔に投げつける。口を押さえて痛がってる大矢。
さらにグラジは机をコーナーに立て掛け、そこへ大矢をスルー。大矢張り付け
だ。突進するグラジ。大矢、ぎりぎりのところでよけて、グラジ、机に激突。
大矢、チャンス到来! バックドロップ、ダイビングニードロップ、卍固め。
さらにバックドロップ。2カウント…。もう1発だ! しかし、グラジは巨
体に似合わず器用だ。空中で体勢を入れ替え、大矢に覆い被さる。
後はフィニッシュに向けて突っ走るのみ。アッサムボム。ムササビのような
フライングボディプレス。最後はスーパーアッサムボムonデスク。あっさり
3カウントが入った。
マイクを握るグラジ。リッキーを呼び、通訳を頼んで英語で喋り出す。要点
のみ。
・ZENもなくなったので、自分はこれからフリーエージェントだ。1人でや
っていく。FMWは今まで自分に本当のチャンスをくれなかった。これからは
自分でチャンスを作り、ハヤブサ、田中、雁之助、金村、大仁田を倒して、F
MWを自分のものにする。
・ボウダーは俺が怖くて、WCWに行った。
リッキーはむっとしながら通訳。他団体とか、そういう話が出なくてほっと したところ。しかし、今後のグラジの去就についてはまだ何とも言えないよう な気もする。これほどの評価を得ている選手だし、余計なことを吹き込む奴も たくさんいるだろう。隣の芝生は青く見えるものだし。
メインイベント ハヤブサ VS 田中将斗<2冠選手権>
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| 白と黒、柔と剛、対照的な2人 |
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| 新生のレスリング |
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| くるくる! 竜巻DDT |
初防衛戦である。今日の興行はとにかくこの試合。札幌で行われたばかりの
噂の試合を東京でリメイク! FMW、今日はこれ一本で勝負なんである。そ
して、超満員になった。みんな、この試合がハヤブサvs雁之助と同じくFM
Wの聖域だってことがわかっているんだね。大仁田と後藤が育てた選手の対戦
が横浜文体や後楽園をいっぱいにするようになった。これだけでFMWを旗揚
げから見てる俺にとっては夢みたいなことだ。インディーはレスラーを育てら
れないとか手前勝手なこと抜かした連中に対する充分な答えだ。
試合開始。水を打ったように静かな会場。空間が緊張しているのがわかる。
ゆっくりと時計の逆回りにリングを回り、間合いを取る両者。そして、コンタ
クト。
ロープを使ったスピーディーな攻防からスタート。ハヤブサ、ロープフリッ
グで田中の頭上を飛び越え、巻き投げ一閃。すぐにグラウンドへ移行。寝技で
も激しく動き回る両者。ハヤブサ、田中をスリーパーに取る。
ハヤブサの弱点はもちろん左足。仲間といっても、遠慮するわけにはいかな
いんである。田中、ハヤブサの膝へドロップキックをかまし、動きを止めてお
いて、三角飛びラリアット、エルボースイシーダ。そして、4の字固め。思い
の他、がっちり入ってしまう。ハヤブサは反転し、なんとか逆4の字へ。しか
し、また仰向けに戻され、絶叫をあげるハヤブサ。そのまま身を起こして、田
中の顔に張り手。田中もやり返す。足を絡ませたまま、張り手合戦に。この4
の字固めの攻防、実に見応えがあった!
田中は初公開ロメロ・スペシャルでハヤブサを持ち上げ、足をフックしたま
ま、フェースロックへ。クリアーしたハヤブサ、ここで実に意外な技を出す。
ハヤブサは田中の手を持ったまま瞬時に回転。合気道の技だったろうか、相手
の腕関節を殺す。かなり痛そうだ。さらにショルダーアームブリーカー、後藤
式の体重をかけた腕折り。田中のエルボーを防ぐ作戦に出る。ハヤブサ、なお
も田中の腕を蹴る。チキンウィングアームロック。苦しむ田中めがけてハヤブ
サはコーナーから飛んだ。しかし、捕らえた田中はそのままパワースラムへ。
危険な角度で叩きつけられたハヤブサ、2カウントで返す。
試合が白熱する。田中はハヤブサをロープに詰めて弾丸エルボー、しかし、
ラリアットを狙ったのか、ハヤブサのフランケンシュタイナーで切り返される。
ハヤブサの投げっぱなしジャーマンにも、田中はすくっと立ち上がってラリア
ットで返す! スウィングDDTも。場内早くもボルテージ高い!
コーナーに昇った田中を捕らえ、ハヤブサの猛攻が始まる。雪崩式フランケ
ンシュタイナー、トペコン、ロープを飛び越えてのギロチン、フィッシャーマ
ンズバスター、タイガードライバー、フェニックスセントーン、みちのくドラ
イバー2、まだフォールを許さない田中。コーナーに昇ったハヤブサを捕まえ
て、雪崩式ブレインバスター、サンダーファイヤー、しかし、ハヤブサは横浜
で初公開したばかりのタイガースープレックス。続けて、ファイヤーバードス
プラッシュ。パワーボム、そして、田中に背を向け、コーナーへ。もう決める
のか?
しかし、起きあがった田中。ハヤブサの首を後から抱え…、何をする気だ?
いったん足を滑らしたものの、再度コーナー2段目に昇り、とんでもない技を。
危険すぎ! あの高さから逆回転して、マットにめり込むハヤブサの体。雪崩
式リバースブレインバスター!!! 場内にうぉー!というどよめきが起こる。
このインパクト、ものすごいものがあった。しかし、田中はダメージで動けな
いハヤブサを抱え上げ、弾丸グレネード。ぎりぎりでフォールを返すハヤブサ。
観客が床を踏みならす音が響きわたり、ハヤブサコールの嵐。これはどうだ、
サンダーファイヤー! まだ決まらない。フランケンシュタイナーに来たハヤ
ブサをパワーボムで切って落とすも、これも2.9カウント。こうなりゃ勝つ
までやるだけ。サンダーファイヤー、弾丸グレネード。まだ決まらない!
ハヤブサも田中の重い攻撃を受けてばかりはいられない。キックで反撃し、
投げっぱなしドラゴンスープレックスで田中を一回転させる。続けて、ついに
ファルコンアロー! 一発では決まらない。田中、サンダーファイヤー。ロー
リングエルボーは今一つ体重が乗っていない。ならば、もう1回。しかし、よ
けたハヤブサはキックを放つがこれもかわされる。ここでハヤブサ、掌底アッ
パー。のめった田中をエグ過ぎるくどめドライバー。きれいに決まるも3カウ
ントは入らず。トドメだ。垂直落下式ファルコンアロー! 力尽きた田中は3
カウントを聞いた。
リングに駆け寄る観衆。ハヤブサはマイクを取り、熱狂するファンにアピー
ル。
「今日、あらためて2本のベルトを守ることが大変なことだと思いました。こ
のベルトをずっと守り続けたい。ここにいるみんなが新生FMWです」
そして、ロープ二段目からバック転。ディレクTV第2弾興行も大成功のう
ちに幕を閉じたのである。
最高の試合を見たんで、今日もおいしい酒を飲むことができた。しかし、あ
えて言うならば心配なのは選手たちの体調。ハヤブサは雁之助戦に続き、今日
のすさまじい試合だ。垂直落下式の技を連発する全日の試合の危険さがよく話
題になるが、事はFMWにおいても全く同じである。もはや垂直落下も当たり
前、コーナーポスト上から首を支点にして逆向きに落とすなんてむちゃくちゃ
なことに人間の体がいつまでも耐えられるわけがない。いかに鍛えていようと。
根本的な対策はないが、できる限りの注意と内容がエスカレートしすぎないよ
うなバランス感覚を求めたいと思う。
そういう俺は翌日二日酔いで死にそう。胃も頭も痛い。それでも、試合中の
ハヤブサや田中だってはるかに痛く苦しいんだからと思って、満員電車に乗っ
た。しかし、彼らは痛くて苦しくても充実感や達成感もあるだろうが、俺の苦
痛はいくら我慢しようと何も生み出さない。脂汗浮かべて、うげげ、なんてう
めいても、「この体調でも、これほどの名通勤をやってのける頽廃さんはすご
い」「吐きそうになってのけぞった時のブリッジは見事だった」なんて誰も言
ってはくれないのだ。目を背けられるだけで。虚しい。