1998年5月1日 東京ドーム  全日本プロレス


 やれやれ。この俺が王道全日本プロレスの観戦かい。よりによって東京ドー ムかい。長く生きていれば、いろんな目にも会うさ。
 昨日の横浜文体であまりにもディープな印象を受けた。一日たっても余韻が 抜けきらない。この感覚に少しでも長く浸っていたい。だから、全日であれ、 DDTであれ、あるいはFMWであれ、プロレスと名の付くものからはしばら く遠ざかっていたかった。100%の完成形を見てしまった以上、今さら90 %なんて見る気にはなれない。
 でも、今回はハヤブサのドーム初出陣。見ておかねばならない。面倒くさい と思う自分を励ましつつ、木下君を誘って東京ドームへ行った。チケットはあ る関係者から購入。1万円の席が値切って値切って3000円で手に入る。話 を聞いたところ、売れてないので、全日の会社自体がチケットを金券ショップ やダフ屋に流しているとのことだ。
 ドームに入ると、けっこう客入ってる。オーロラヴィジョンに懐かしきジャ ンボ鶴田の顔が。コー ナーに昇って、「オー!」。それに合わせて観客も大合唱。まったく信じられ ないことながら、俺はずっと昔は鶴田のファンだった。こんなに格好悪く、と ろくさい奴のどこが良かったんだろうか。俺は物心つかない子供の頃からプロ レスを見ているが、一貫して、猪木・新日大嫌いである。奴らの殺伐とした愛 のないプロレスが嫌だったので、全日の馬場、鶴田、大仁田といった面々のま ぬけな明るさ、やる気のなさが優しさに見えて、引きつけられたのだ。一生懸 命、蒲団の上でジャンピングニーパットやへそ投げバックドロップの練習とか したもんだ。
 今ははっきり言って、新日も全日も縁遠くなった。一回インディーを見たら、 もうメジャーはダメだよねというのはよくプロレス仲間と交わされる話題。イ ンディーのプロレスの持つ生々しさに、テレビ向けのメジャーのプロレスはス ーパーのパックに包まれた野菜のような気がして、なんかよそよそしく、のめ りこめないのだ。だいたい、全日も昔はさんざん凶器やら両リンやら火炎攻撃 やらで盛り上がっていたくせに、今ではイスも手にしたことございませんとい うようなカマトトぶり。どろどろの流血って全日の専売特許だったぞ。
 席はスタンド1階のわりと前の方。しかし、それでも、けっこうリングまで 遠い。これで1万円の席か? 周りの奴らは本当にこんな見えな い席のために1万円を払ったのだろうか。ばかげてる。耐えず売り子(かわい い子が多い)が通路を通っては声を張り上げて、ビールやミックスナッツを売 りつけ、全体の照明も点いたまま。とてもプロレスに集中する環境ではない。 どんな良いカードを組まれても、俺はこの席に1万円は払いたくないと思う。 原価で買うなら、10万円払ってリングサイドにするか、3000円で一番上 で寝っ転がって見る。
 リング上はちょうど鶴田の試合が終わったところで、次はヘッドハンターズ。 素晴らしいタイミングじゃないか。確信犯じゃないよ。ただの偶然さ。


第4試合 ヘッドハンターズ VS 奥村茂雄、本田多聞

 聴いたことのない音楽でハンターズ入場。全日移籍でテーマ曲変わったな。こ の2人と奥村はそれぞれインディー内を泳ぎ回ってきた者達だが、互いに絡ん だことはないはず。一応、ハンターズ応援だが、奥村にも頑張ってほしいとい う気持。もう1人については特に意見なし。
 ハンターズ、体だけで説得力充分。あの体が飛んで、相手に降り注ぐのだ。 奥村に連続ヘッドバットなどで会場を沸かす。奥村もドロップキックなど見せ たが、ほとんどやられっ放し。最後はこの日最大のどよめきではないかという ようなAのムーンサルト。衝撃の全日デビューと言ってよいだろう。がんばれ、 ハンターズ。もう君らの試合を生で見ることはおそらくないだろうが。


第5試合 邪道、外道 VS ウルフ、スミス

 スミスという奴も懐かしい名前。日本武道館でまだ若手だった小橋がスミス とのシングルで殊勲のフォールを奪ったのはよく覚えている。昔からプロレス はうまいのに、便利屋のように扱われてきた奴。こいつがアジアタッグ王者に なったことは、努力する奴はいつか報われるという教訓を我々に与えてくれる。
 試合内容は細かいところはほとんど覚えていない。体格で著しく劣る邪外が 連携を生かしてアジア王者を攻めまくる。切り返し、丸め込み合いの攻防。邪 外もうまいが、スミスもやはりうまい。チャンピオン、2人とも明らかに白色 人種ながら、アジア王者とはこれ如何に? まあ、そんなことはどうでもいい として、やっぱりやったか、急所攻撃。もっと見たい俺は思わず大声で叫ぶ。 「○んたま、もう一回!」周りが妙に静まり返ってしまう。すまない。反省の 日々だ。試合はいつのまにかスミスが邪道を押さえ込んでいた。


第6試合 ザ・グラジエーター、黒田哲広、保坂秀樹 VS 田上明、大森隆男、井上雅央

 胸が苦しいくらいドキドキしてしまう。期待しているからではない。そんな 嬉しいドキドキではない。どっちかというと、心配という感じ。勝ち負けは別 にして、ZENがいつもの魅力を発揮できるかどうか。保坂という普段でも平 均点とれない優秀ならざる奴が入っているので余計に心配だ。相手の面子もと りあえず四天王(このネーミングのセンスは…)とかの1人である田上が入っ ている他は、そんなに立派なもんではないが。
 スタートはグラジと井上。田上、出てこいとグラジはアピール。田上、本当 に出てきた。グラジがラリアットで田上を場外に叩きだし、いきなりノータッ チ・プランチャ。大歓声が上がる。ドームで見ても、すごい。リングに戻った ところで、田上もカウンターキックなどで反撃。2人は互角というところ。
 黒田と大森のシバキ合い。互いに胸を突きだし、打ち合ってゆく。黒田、大 森の背中を蹴りつける。自分より大きな大森を相手にいつもと変わらぬ黒田の 姿に胸が熱くなって眼が潤んでしまった。いつも思うことだが、黒田はZEN 所属ということでありながら、誰よりもFMWの魂を感じさせる一人。メジャ ーマットに来てもその姿勢は変わらなかった。そして、保坂と井上の局面。「 この2人なんか似てるよな」と近くの客がつぶやく。さえない髭面2人を見て いると、俺も思わず頷く。何か和むね、この2人の絡みは。
 グラジは机をリング際に持ち込む。たぶん本当には使わないだろうが、その 心意気が嬉しかった。大森をパワーボムの体勢で持ち上げるも、直前で抜けて 逃げる大森。机は誰かに片づけられてしまう。ほら、俺の思ったとおり(いば るな!)。全日の選手はやはりスーパーのパック野菜。全日の規格の中でしか プロレスができない。まして大森にパワーボムONデスクを受けるような度量 があるわけがない。でも、全日で机を使おうという振りだけでも見せてくれた グラジはやっぱりプロだったと思う。机を使わないでも、もちろんグラジの破 壊的ファイトは健在。大森に決めたアッサムボム、ムササビプレスにどよめき が起こる。
 黒田と田上の場面。コーナーに振られた黒田はカウンタラリアット。しかし、 倒れない田上。もう1発! やっぱりダメ。さらに1発! 田上をなぎ倒す。 ここでも変わらぬ黒田。押さえ込まれてZEN側がカットに入ると、少しブー イングが起きる。それも心地良い。最後の方は保坂大活躍。雪崩式フランケン シュタイナー、スパインバスター、カウンターのフランケンシュタイナーと見 所一通り。しかし、大森と二人になったところで、ダイビングニードロップに 敗れる。考えていた通り、保坂が負け。でも、満足。ZENは持ち味を出した。


第7試合 高山よしひろ、垣原賢人 VS ウィリアムス、オブライト

 元キングダムの2人の試合についてはしっかり見るつもりだった。ところが トイレに行きたくなって、次の試合を落ち着いて見たいので、この試合をトイ レタイムに使わせてもらう。戻ってくると、ウィリアムスが高山にバックドロ ップを決めたところだった。でかい体がマット上でバウンド。そのままフォー ルされた。某キングダムファンの人から話を聞いたところ、「元キングダムの 選手の全日での負けは本当の負けではない」んだそう。どういう意味だ?(だ いたい、わかるけど)世の中にはいろんな立場があり、いろんな考えがある。 他人の立場を理解してこそ大人ってやつか? まあ、そんなことは置いといて、 がんばれ、高山とカッキー。


第8試合 ハヤブサ、ジャイアント馬場、志賀健太郎 VS 新崎人生、G・キマラ、泉田

 俺の現在の最高のヒーローであるハヤブサと俺が子供だった頃の最大のヒー ロー、ジャイアント馬場がついにタッグ結成! プロ野球では絶対できん芸当 だよね。長島(茂)と松井でクリーンアップを組むようなもんか。もう一人の志 賀というのは、某ファンの言うところによると最もターザン後藤による世直し が必要な一人ということらしい。この3人にどういう必然性があるのかよくわ からないが、全員赤いコスチュームで入場、チームらしさを見せる。一方の人 生、キマラ、泉田というこれも寄せ集め的な3人は入場時全員が白い袈裟。顔 まで白く塗ってる泉田とキマラ。リング上は紅白対抗戦である。
 最初は志賀と泉田。体重のある泉田が志賀を圧倒する。次に馬場とキマラ。 変わってないなあー、馬場さん。俺が歳をとってじじいになっても、まだ同じ ようにプロレスやってそうで怖い。一時、馬場の中に誰かが入って操縦してい るという噂が流れたが、結局あれはどうだったんだろう。もちろん馬場さん強 い。キマラをチョップで吹っ飛ばす。馬場チョップのポイントは手首の固いと ころを相手のこめかみに叩きつけることだそうだ。クイズ番組で馬場本人が久 米宏相手に解説していたのだ。高校生の俺は級友の頭に片っ端から馬場チョッ プを叩き込み、職員室に呼び出されたっけ。あれも今となってはいい思い出だ。 やられた奴はそう思ってないって?
 キマラから人生に代わる。人生、馬場相手に拝み渡りに2回トライするも、 失敗。ここでハヤブサ登場。ハヤブサVS人生はDVD以来か。ロープワーク からの体当たりは人生の勝ち。倒れたハヤブサ、ネックスプリングで跳ね上が り、人生に一回転ドロップキック。人生、バック転からの蹴りを見舞おうとす るも、ハヤブサは除けた。同時に見栄を切る二人。かっこいい!
 ハヤブサと人生に関係した部分以外は興味ないので省略。またハヤブサと人 生の絡み。ハヤブサ、全日マットでは初のトペコンを披露。人生をリングに引 き上げてエプロンからトップロープ越しのギロチンドロップ。フェニックスセ ントーン。人生はフランケンシュタイナーでハヤブサを吹っ飛ばす。さらに曼 陀羅ひねり。この中にはいると、この2人、やはりダントツ技が綺麗である。
 終盤。人生はついに馬場相手に拝み渡りを決める。ドームは大歓声。2週目 に達し、馬場に手刀を落とす。と、馬場はブロック。チョップで見事返り討ち。 腐っても馬場。あ、腐ってないか。でも、馬場のプロレスが今になっても面白 いのは本当。動きのひとつひとつがプロレスなんだよね。志賀君はまだなんか ばたばたが見えるので、人間国宝級の師匠によく教わりなさい。
 その志賀、泉田に逆エビでがっちり固められる。ハヤブサがカットに入るも、 泉田は離さない。もう1発。さらにもう1発。離さない泉田。ふざけたメイク をしていても、この辺が泉田の他団体の選手への意地か。スワンダイブからの ラリアットでようやく倒れた泉田。頭に来たか、ハヤブサを大きな体で吹き飛 ばす。ハヤブサと志賀2人を一片になぎ倒すラリアット! 泉田、キマラ2人 の連続ボディプレスもハヤブサの体に。まだ余裕あるのは見ていてわかったの で心配しなかったが、最近のハヤブサは少し受けすぎる。ブリーフ・ブラザー ズとの戦いでもそうだが、ただ一歩的に受けまくることがうまいプロレスだと 思っているんではないかとちょい気ががりだ。
 ハヤブサ、さんざんやられたものの、泉田のボディプレスをよけて、ト ーラスキック、投げっぱなしジャーマン、その場飛びムーンサルト。そして、 訪れたフィニ ッシュのシーン。馬場のコーナーにもたれ掛かった16文キックを受けて、よ ろめく泉田をボディスラムでコーナー下に置いてからファイヤーバード・スプ ラッシュ。あっけなく3カウント。内容的には不満が残るものの、とりあえず ハヤブサが取った。
 引き上げる馬場をコーナー上に立って見送るハヤブサ。馬場の背中に向かって深々と お辞儀。そして、トンボを切る。人生と見つめ合い、そして固い握手。この時 点では、この握手の意味など知る由もなかったが。一気に気が抜けて、水死体 状態の俺。後は弁当でも食べながら王道プロレスを満喫すれば良いのだ。


 放っておけば永久機関のようにいつまでも試合をしていると悪評高いメイン の組み合わせは最初から勘弁。しかし、とりあえずベイダーと小橋の絡みは見 たかった。小橋はデビューした時もはっきり覚えている。体が大きいんで、期 待したよ。彼はハートが良いことでも好感が持てる。しかし、次に控えるのは 秋山VS馳。げー、最悪の組み合わせ。これを如何に耐えるか。考えていたと おり、アマレスみたいなことやってる二人。勘弁してくれえ…。お前ら、そり ゃ新日本だぞ。全日本プロレスと言えば、ジャンボ鶴田がタイガー・ジェット ・シンに凶器でめった打ちにされて大流血の揚げ句に、ロープに足を引っかけ て宙釣り。リングアウト負け。それが俺の記憶している全日の基本ではないの か。全日の魂といえば、和み。秋山も馳もそれを忘れている。俺は絶叫した。 こんなの全日本じゃない!(^-^; あ、叫んだのは心の中でね。 喜んで観ている観客。あれ? これが今の全日本なのね。
 突然、何を思ったか、近くの観客同士が殴り合いを始め、妙に生々しい素人 同士のガチを見て楽しむ。もちろん、警備員が二人を引き離す。また静まり返 り、リング上のアマレス。この「基本に忠実な攻防」を観ていることに耐えら れず、席を立ち、ドームの中をぐるぐる歩き回って時間を潰すことに。しかし、 グッズも売店も面白いものなし。会場内のテレビでは、秋山も馳もいつまでも 似たようなことやってる。我慢できず、「最後まで見てく!」と言い張る木下 君を置いて帰宅の途についた。個人的には見に来なきゃ良かったな。ドームな んてプロレスを見る場所じゃない。馬場や天龍が日本武道館にこだわっていた のは充分に理由ありだ。
 最後になるが、馬場さん、ドーム大会成功おめでとう。途中で帰った俺の言 うことじゃないかもしれないが。俺としては馬場さんの動いている姿を見ただ けで充分全日本プロレスを観たという気持。昔は武道館もガラガラだったよな。 今回、苦戦が伝えられたけど、それでもこれだけ動員したのである。王道プロ レス、完成したな。猪木は引退したけど、馬場さんはあと100年はプロレス やってくれ。あ、猪木も格闘家としてあと10年か。(邪道氏:談)


HOME


[PR]当たる!無料占いで運命鑑定:プロの占い師による本格運命鑑定が無料で