1998年4月30日 FMW 横浜文化体育館


 文体のロビーは客でご った返して、目当てのFMWプリクラも女の子達で長蛇の列。黒田のフ レームでかわいい子が撮ってる。ここに俺が並んだら、変質者のように見える ような気がして、プリクラ諦めた。
 まず目に付いたのが派手な入場ゲート。さすがディレクTV。それにしても、 力入ってるねえ。ディレクTVのもてる力をすべてFMWに注ぎ込んでるんで はないか?(そんな訳ねえな)はっきり言って、中はちょっと寂しい入りであ る。客席の約6割というところか。もっとも今日は平日なので、時間がたつに 連れて、埋まっていくだろう。6時半の開演を待っていると、6時10分頃、 突然「come out and play」がかかる。ブリーフ・ブラザーズ、予期せぬ入場 である。
「このビデオが売れんと、人気ないということでわしら解散させられてしまう んや」
 ビデオ「WHITE LOVE」の宣伝であった。

 続いて、リッキーが登場。普段リングアナが流す観戦上の注意(ビデオを撮 ってるところを発見した場合は、ビデオ没収の上テープ廃棄処分とさせていた だきます、とか例のやつ)をリッキーが喋る。そして、初のディレクTVなの で、観客に協力を要請。初の放映の瞬間に向けて、みんなで声を合わせてカウ ントダウンなのだ。


第1試合 保坂秀樹 VS 非道<THIS IS HOSAKA>

 先に保坂が入場。スクリーンにどこかの田圃の風景が映り、「北の国から」 のテーマ。そして、非道のナレーションが場内に流れる。

 前略 邪道様。お元気ですか? 僕は相変わらずひこねステーションホテル と書いてある浴衣を着て、がんばっています。みんなから「とってもお似合い だよ!」と冷やかされますが、僕はそうは思いません。僕が本当に似合ってい るのは、そう、あの白いバスローブに他なりません。一日も早く、あれを着た 僕の勇姿を妻にも見せてあげたいんです。でも、妻は「もうお願いだからやめ て。恥ずかしいから。それからあんた、パンツは自分で洗ってね!」と言われ ます。でも、今日の試合で勝つことができれば、あの白いバスローブが着れる んだ。そう思うと、ブリーフを洗う手にも思わず力が入ります。(ここで非道 が洗面所でブリーフを洗う姿が映る。)リーダー、見ててください。今日こそ 僕は憧れの白いバスローブをこの手でつかんで見せます。1998年4月30 日。非道。

 郷ひろみの「お嫁サンバ」で非道入場。タイムリーな選曲だ。保坂がラリア ットで急襲。その後もチンクラッシャー、パンチ、スリーパー、首4の字、フ ランケンシュタイナー、雪崩式フランケンシュタイナー、ノーザンライトスー プレックス、スパインバスターなどで保坂が一方的に攻める。非道、ラリアッ ト3連発を返すも、久しぶりのムーンサルトをよけられる。保坂のラリアット 2発。3発目を避けて、非道、渡辺二郎直伝のパンチを連発。しかし、保坂の パワーボム、スタンガン、ビルディングボムを喰らって、非道KO寸前。しか し、フランケンシュタイナーに来た保坂。固めるところをくるっとひっくり返 され、そのまま非道が3カウント勝利。
 リング内に飛び込んできた金村、邪道、外道。そして、スペシャルプレゼン テイター工藤めぐみが松田聖子で入場。抱き合う非道とくどめ。渡された包み を嬉しそうに開く非道。中から出てきたのは浴衣…。とまどう非道に邪道が声 をかける。
「新しい浴衣だ。まだまだお前がバスロープを着るのは10年早い。どーです か? お客さん」
 非道は浴衣を着、コーナーに昇って、観客にアピール。バスローブは着れな かったけど、とりあえず納得のいく試合ができたかな?


第2試合 大矢剛功 VS 中川浩二 VS クリス・チェティ
     <3ウェイ・ダンス・バトル>

 ECWのビデオが場内に流れる。本場直輸入の3ウェイ・ダンス・バトルと のことだ。しかし、中川はともかく、大矢のキャラクターは米国からの直輸入 なんてキャッチフレーズからは一番遠いところにある。きらきら華やかな入場 ゲートで浮いて見える大矢。
 3人が順々に連なるヘッドロック、首4の字、スリーパーで笑わせてくれる。 左腕を負傷している中川が最初に狙われた。チェティと大矢2人がかりで腕折 り。チェティの3角飛びニールキックを喰らい、大矢に腕を決められて、あっ けなくギブアップ。中川退場である。
 ここから大矢とチェティの普通のシングルマッチ。なんと本場直輸入らしから ず、延々と体を密着させてのグラウンドでの攻防となる。大矢、コブラツイス ト。チェティ、腕ひしぎ逆十字。けっこうチェティも大矢についていってるか。 やがてチェティは大技攻勢に出る。ニールキ ック、パワースラム、タズ式のスープレックス、ジャーマン、圧巻の三角飛び ムーンサルト! 体のバネが素晴らしい。ここでもう一発普通のムーンサルトに来 たチェティ、あっさりよけられる。大矢は卍固め、そして、バックドロップ2 発。大矢が2人抜き。本場直輸入にしては、地味な3ウェイだった。とりわけ 大矢、中川というあまりにも渋い男2人がこのカードに入ってしまった時点で、 この試合の命運は決まっていたもののようだ。


第3試合 リッキー・フジ、クローナス VS 邪道、外道<リッキー・フジPRESENT>

 スクリーンの中では、杉作J太郎がブリーフをはいて邪外にインタビュー。 「お前、なめてるだろう」と邪外にいじめられる杉作。いい味出しています。 邪道の紹介は「不沈艦、スタン邪道ー!」。観客は「ウィー!」。
 最初はリッキーさんと外道のアメリカンプロレス。パンチを入れられ、アク ションたっぷりで痛がってる外道。クローナスと邪道に代わる。クローナスの ラリアット。邪道をコーナーに詰め、大回転のバック転エルボー! この大き さでこの身の軽さはすごい。ところが、またもリッキーが出ると、捕まっちま うんだなあ。邪外の連携は今日も冴え渡る。ダブルラリアット。邪道がスライ ディングレッグシザーズでリッキーを倒し、そこに外道がエルボー。外道の2 段目ムーンサルト。リッキーはけっこう長い時間やられっ放しだった。
 二人がかりのブレインバスターに来た邪外を一片にDDTで切り返すリッキ ー。クローナスに代わると、邪外にパンチ連発。ローリングセントーン、綺麗 なムーンサルトプレスとスゴイの連発。リッキーもくどめドライバー、カミカ ゼ。ついに出た! トータルイリミネーション! さらにファイヤーバードス プラッシュで邪道をKO寸前。
 ここでクドウちゃんが動いた。エプロンに立ち、レフェリーの注意を引きつ ける間に外道がクローナスをめった打ち。なおもクローナスは邪道に変形の浴 びせ倒しなど見舞うが、邪道に急所を蹴られ、ラリアットを喰らう。「ブレイ ンバスター!」ディック・マードックのような雄叫びをあげた邪道が垂直落下 式でクローナスを仕留めた。


第4試合 新崎人生 VS 金村ゆきひろ

 青い光、スモークの中を入場してくる人生。幻想的である。そして金村の番。 入場ゲ−トに、腕組みをしてじっと立つ金村。かっこいい! 俺は生まれて初 めて金村をカッコいいと思った。1人でブリーフ・ダンス。大砲のようなもの が爆発。球はブリーフだ! たくさんのブリーフが観客の頭上へ降り注ぐ。生 放送の最中だというのに、右手の輪っかを股間前で妖しげに動かす金村。かっこ いいぞ、お前!
 サブレフェリー、渡辺二郎も「Eyes of the tyger」で入場。なんとクドウちゃんと一緒。エプ ロンで煙草を吹かすクドウちゃん。「禁煙だぞ!」と誰かのツッコミが入る。 金村、人生に向かって拝むと、人差し指を突きだし、前後にくいっくいっと動 かす。なんのマネだろうか?
 試合が始まった。しばらく組み合わず睨み合う両者。「もっとブーイングし てみろや!」と金村。まずは人生にキック。ロープに走る人生。場外のクドウ ちゃんがその足をすくう。つんのめり、激怒する人生。場外に出るも、金村に 捕まり、 机の上に寝かされる。出るぞ! コーナー最上段からボディプレス! 机がま っぷたつ。リング内に人生を戻して、ダイビングエルボー。そして、なんと懐 かしの有刺鉄線バット! これで一撃。場外に吹っ飛ぶ人生。場外でさらに人 生を狙った一撃は鉄柱へ。じーん。手が痺れた金村。バットを落としてしまう。 それをつかんだ人生。さあ、やり返せ!というところでサブレフェリー介入。 なんか、おかしーぞー?
 リング内に戻り、金村は急所蹴り。また有刺鉄線バット攻撃。しかし、人 生、ドロップキックで金村を吹き飛ばす。有刺鉄線バットを手にして、ついに やった! やめてとばかり両手を前に突きだし、許しを乞う金村を一撃。場外 に逃れた金村にさらにトペ。鉄柵に叩きつける。机の上に金村を押し上げ、机 上でのパワーボム。そこまでやるか! 吹っ切れたな、人生。ミサイルキック で金村をフォールに入るも、クドウちゃんが机の切れっぱしでテッドをぶっ叩 く。人生にクドウちゃんのソバット+金村のバックドロップの合体技。ノビた テッドに代わり、二郎が入ってくる。金村、 ダイビングセントーン。なかなか良い角度。机の切れ端を振りかざした金村だ が、人生は受け止め、地獄突き。金村の落とした板で人間モグラ叩き! 更に 輪廻、曼陀羅捻り、仕上げは極楽固め! クドウちゃん、二郎にチョークだと 訴えるが、二郎は聞き入れない。おお、正義に目覚めたな、二郎。クドウちゃ んが人生にキックを見舞おうとすると、人生、足をつかんで曼陀羅捻り。くる っと回るクドウちゃん。さらに極楽固め。これは素人にはきつい。抗議する 金村になんと二郎は張り手。人生はキックからパワーボムで一気に金村をマッ トに沈めたのである。
 人生と二郎は握手。しかし、今日の金村は素晴らしい仕事をした。彼がこん なにもうまいことを再認識。ちょっとファンになった。


第5試合 ザ・グラジエーター、黒田哲広 VS スーパー・レザー、ホーレス・ボーダー

 ボウダー、本当に出てきたよ。WCWに転出したとか言った奴はいったいどこ のどいつだ? まあ、良かったけど。
 グラジ&黒田、パウダーを相手の顔に投げつけて奇襲攻撃。レザー&ボウダ ーをコーナーに逆さ吊りにして、イスを顔の前に置き、それぞれイスを目がけ て低空ドロップキック! その後もキック・パンチの大乱戦。体の大きい3人 の中で苦戦する黒田。
 グラジ、ボウダーにムササビプレス。机をリング内に投げ込み、パワーボム ONデスクを狙うもこれは失敗した。ボウダー、机を黒田に投げつける。頭に ブチ当たり、効かないはずはないのに、黒田、猛突進。チョップを打ち込むも、 レザーに捕まって、パワーボムONデスク。机、まっぷたつ。グラジはボウダ ーにアッサムボム。しかし、レザーにコーナーポスト上の制空権の取り合いで 負けて、テキサスマスカラを喰らう。さらに2人がかりでグラジにパワーボム。 レザーのツームストンドライバー。ボウダーのアックスボンバーがレザーに誤 爆したチャンスに、黒田、ボウダーをノーザンライトスープレックスで投げる。 さらにラリアット3連発。急所攻撃を喰うも、さらにラリアット。ところがフ ライングボディアタックを狙ったところ、受け止められ、アバラッシュホール ド。パワーボム。突進するボウダーをスライディングレッグシザーズで転がし、 コーナー上でパンチ連発。ところがこれがアダになり、急所攻撃を喰って動き が止まったところ、そのまま体を預けられ、コーナー上からマットに倒れ込む。 そのまま3カウントが入った。
 黒田、今日はまあまあの活躍だったが、FMW系トップ外人の中に入っても 見劣りしなくなったことは最大限に評価できるであろう。


第6試合 田中将斗 VS クラッシャー・バンバン・ビガロ

 ビガロは今まで過小評価されてきたレスラー。アントニオ猪木からフォール を奪ったこともあるのに。今より若かった頃の川田利明など軽く倒している。 恐ろしくうまくて強い奴だ。新日から便利屋のように使 われていた時期もあって、ハシミコフや北尾のデビューの相手も勤めた。でく の坊が相手でもビガロならそれなりの試合にしてくれるという判断だったのだ ろう。FMWとの絡みでは、WARで行われた6人タッグトーナメントで大仁 田、天龍とトリオを結成、見事優勝した。
 田中に関しては、もはやインディーの若手という表現はまったくふさわしく ない。他インディーにあふれる若手選手とは何もかも違う。去年の川崎球場で グラジエーターと観客の度肝を抜くド迫力試合を行い、勝って、二冠王座を奪 取。かつて全日の常連外人だったダグ・ファーナスともECWへの遠征で戦い、 フォール勝ちしている。ビガロに勝っても全然不思議ではない。きっと田中は 勝つ、俺はそう考えていたし、観客の多くにもそんな期待があったんではない か。
 しかし、実際に見るビガロは強かった。組み合うなり、いきなり田中を場外 へ投げ捨てる。リングに戻れば、タックルで吹き飛ばし、軽々とパワー ボム。なんとも、パワーがすさまじい。さらにもう一発パワーボムを決めよう とするが、田中はビガロの顔にパンチを入れて脱出。すかさずビガロの超巨体 をバックドロップで投げ捨てる。田中のパワーに大きくどよめく館内。
 田中は猛攻をかける。ミサイルキック、ダイビングエルボー、ラリアットで 場外へぶっ飛ばし、トペ。ところが追い打ちのプランチャを受け止められて、 鉄柱へ持っていかれる田中。ここから大場外戦。2階席の俺のすぐ下までやっ てくる2人。局地的にECWコールが起こる。
 エプロンから場外のビガロ目がけてエルボーで飛ぶ田中。「ビガロ、これが FMWじゃー!!!」叫びながら、田中のイスアタックが決まる。スウィング DDT。さらに机をリング内に持ち込むが、そこをビガロに襲われ、机を奪わ れる。机の上に寝かされた田中。ダイビングボディプレス。机は折れなかった。 逆にキツイだろう。さらに机に叩きつける。今度は机が折れた。
 高々と田中をリフトアップしたビガロ。そのまま場外へ放り投げ。ちょっと ひどすぎる。戻ってきたところをブレインバスター。田中に背を向け、コーナ ーを昇るビガロ。起き上がった田中はビガロを捕らえて、そのままパワーボム!  すごい! 田中の雄叫びが響く。ダンガンエルボー。ラリアット2発。肉の塊 を投げ切った裏投げ。2カウント…。サンダーファイヤーにトライ。そりゃ無 理だ。ショルダースルーに切り返されるも、ボディアタックをカウンターキッ クで受け止め、ローリングエルボー! 決まったか? ダメだ…。田中は休ま ない。初公開の延髄切り2発。しかし、コーナー最上段からのボディアタック を受け止められ、ビガロ、超高度のファイヤーサンダー! 一発で田中はKO され、3カウントが入る。
 良い試合だった。しかし、まだ力の差を感じたのも事実。体の大きさがまる で違うので、田中には大きなハンデだろうが、今後への希望が見えた一戦だっ たと思う。田中は世界のトップと互角に戦えるところまでたどり着けるだけの 素質を持った選手。必ずいつか勝たねばならぬはずだ。


第7試合 大仁田厚 VS 冬木弘道<ランバージャック・マッチ>

 この頃には会場の客席もなんとか7割方埋まる。なぜか看護婦2人を連れて 入場の冬木。後で聞くと、病院送りになる予定の 大仁田用の看護婦ということだったらしい。いまいちなネタ。大仁田は看護婦 達を含めた3人に聖水(なんか嫌な響き)を浴びせる。
 ところで、大仁田厚の肉体は引退前とは別人のよう。常に腹のあたりでゆさゆ さ揺れていた肉がどこかへ消失してしまった。胸板もビルドアップされ、そう とう調子は良さそうである。俺は大仁田については文句も多いが、試合は認め ている。生まれつきの天才的なプロレスセンスが大仁田厚にはある。
 間合いを取る2人。冬木のチョップに「ウー」と唸りながら大仁田は耐える。 タックル合戦は互角。ロープに飛んだ大仁田の足を場外からすくう金村。さらに場外に連 れ出し、TNR全員で袋。鉄柱に打ちつけられ、早くも大仁田は流血したよう である。
 TNRの介入もあり、一方的な冬木ペース。場外で子分達に押さえさせた大 仁田めがけてコーナーポスト最上段からのダイブ。リング内でフィッシャーマ ンズスープレックス。これは懐かしい。フットルース時代によく使っていた。 さらにパワーボム、ラリアット、冬木スペシャル。大仁田が何もしないうちか ら、とどめにはいる冬木。
 大仁田は伝家の宝刀、頭突き。場外に冬木を放り出し、トペ。大仁田のトペ はあの素晴らしかったFMW1周年記念興行を思い出させてくれる。保坂がリ ング上に机を設置し、その上で大仁田、これも懐かしき机上パイルを披露。机 が折れて、大仁田と冬木の体が沈んでゆく。ポーゴがいつもこの技の犠牲にな っていたもんだ。大仁田、得意の大技のオンパレード。投げっ放しタイガード ライバー、バックドロップ、DDO、さらにコーナーに昇った冬木を捕らえて、 雪崩式ブレインバスター。「アッ、アッ、アッ」と雄叫びをあげる大仁田。会 場も呼応。冬木の巨体を持ち上げる見事なサンダーファイヤー。この辺から大 仁田コールが会場に響く。これだけやってくれたら、認めざるを得まい。技だ けではなく、試合のリズムが抜群なのである。やはり大仁田は不器用と言われ ながら、試合を作ることにかけては天才だと思う。もっとも、こけた試合も過 去に数多くあるが。
 しかし、冬木はカウンターキックで反撃。机の破片で大仁田を叩き、走り込 んでのラリアットをお見舞いする。2発目は大仁田がブロックすると、すかさ ず回転しての裏拳。ハヤブサがフォールを取られた技。しかし、3カウントぎ りぎりではね返す大仁田。冬木のサンダーファイヤー。これでも決まらない。 クドウちゃんが乱入して、松葉杖で大仁田の背中を一撃。粉々に砕ける松葉杖。 大仁田の呻き。すかさず冬木のサンダーファイヤー。決まったか? いや、こ れも返す大仁田。ラリアット、3発目のサンダーファイヤー。ついに冬木が大 仁田を振りきった。
 突っ伏した大仁田を囲んでダンスを踊るTNR。しばらく好き放題にしてい たが、気がついた大仁田が逆上。クドウちゃんをサンダーファイヤ ーで処刑した。今日は大活躍のクドウちゃん、ここに息の根を絶たれた。試合 は認めるとして、いつも困るのは大仁田の目立ちたがり。試合後もいつまでも リングに残っていたりする。良い試合をした後はさっさと帰るのがかっこいい とどうして気がつかない? と、今日は何のパフォーマンスもなく、わりあい すぐにリングを引き上げた。ディレクTVからの要請か? それでも他のレス ラーよりはぐずぐずしていて、なんともリングが名残惜しそうだったが。


第8試合 ミスター雁之助 VS ハヤブサ<二冠選手権>

 この高さを見よ
 
 サンダーファイヤー
 

 前日「負傷欠場」で我々を心配させてくれた雁之助。後でディレクTVの中 継で確認すると、背中を負傷しているとのことだ。しかし、会場にいた時点で はそんなことは知る由もない。元気そうな雁之助の姿に我々は安心していたの である。この一番だけは完全なかたちで見たい。聖域という今や安っぽくなっ てしまった言葉をそれでも使いたくなるほど、このカードの持つ意味を多くの ファンが理解していたのだ。
 入場ゲートのカーテンが赤いライトに照らされて、ハヤブサのシルエットが 映る。どっとどよめく場内。両脇に炎が燃え上がる中、ハヤブサが入場。そし て、炎が金色の火花に変わり、今度は雁之助。素晴らしい演出はよけい試合へ の期待を高めてしまう。この舞台設定に負けない試合を2人はできるのか?
 ハヤブサのセコンドには人生。なんと雁之助は金村達を控え室に帰す。雁之 助のこの試合への思いが伝わってくるではないか。そう言えば、サブレフェリ ーを勤めるはずの渡辺二郎は? 何の発表もない。これでいいのだ。ファンの この試合に対する思いがFMWにも伝わったんだろう。
 試合開始。静かな立ち上がり。互いに腕を取り合い、基本に忠実な攻防を繰 り広げる両者。川越の道場で毎日繰り返したことだ。体当たりは雁之 助に分。ハヤブサ、ネックスプリングで跳ね上がり、いきなりフランケンシュタ イナー! なんて早い仕掛け。さらに場外の雁之助にプランチャを見舞わんと するが、よけられ、ラリアットを喰らう。リング内で足蹴にされるハヤブサ。
 攻められていたハヤブサ、ロープへ飛んだ雁之助の膝へドロップキックを見 舞う。この後、この1発が勝負を大きく左右することに。左膝を押さえてのた うち回る雁之助。ハヤブサは徹底した膝攻めに出た。デスロックで絞り、ギロ チンを落とし、さらに4の字固め…。
 対する雁之助はハヤブサの右腕をワキ固めにとり、くるっと回転して、左腕 に移行。言うまでもなく、左腕はハヤブサの古傷である。続けて、ターザン後 藤そっくりのアームブリーカー。ハヤブサ、コーナーに振られたところを切り 返し、キックを見舞って、さらにスワンダイブ式ミサイルキックを膝へ。スラ イディングキックで雁之助を場外に蹴落とし、ラ・ケブラーダ。…と、よけら れたが、なんとか足から着地。
 真っ正面からのぶつかり合いが始まる。雁之助のファルコンアロー、念仏パ ワーボム、ラリアット。2度目の念仏パワーボムはウラカン・ラナで切り返し、 ソバットで場外に叩き出した雁之助目がけて初公開の技、対角線トペ・コンヒ ーロ! 雁之助にトップロープを飛び越えてのギロチンを落とし、久々のタイ ガードライバー、魔神風車固め。ところが、唐突に雁之助クラッチ。危ない危 ない! ぎりぎりで返すハヤブサ。再び猛攻へ。パワーボム、フェニックスセ ントーン、ファイヤーバードスプラッシュ、ファルコンアロー、とどめのフェ ニックススプラッシュに行くところをコーナーポスト上でつかまったハヤブサ。 雁之助はサンダーファイヤーで叩きつけ、さらに1回転ジャーマン、ファイヤ ーサンダー、急角度バックドロップ、珍しいドラゴンスクリュー、2度目のフ ァイヤーサンダー。コーナーポストに昇る雁之助を捕らえ、ハヤブサ、雪崩式 フランケンシュタイナーを狙うも失敗。コーナー上から雁之助に浴びせ倒され た格好になった。
 突進してきた雁之助にトーラスキックをあてがい、バックを取ったところ、 逆に取り替えされる。と、なんとここでハヤブサ、急所蹴り! 場内どっと沸 く。お前はワルブサか? 股間を押さえる雁之助をこれも初公開のタイガース ープレックス! 見事なブリッジで決まる。なんとか返した雁之助にファルコ ンアローの追い打ち。さらにスワンダイブで飛ぶが、パンチで迎撃される。両 者、ダウン。レフェリーがダウンを宣告するも、辛くもダウンカウント8で立 つ2人。
 雁之助のラリアット。ハヤブサがフルネルソンを決めると、雁之助は急所蹴 りで逃れ、サンダーファイヤー、腕決めノーザンライト。さらにファルコンア ローに来た雁之助だが、ハヤブサは空中で回転、投げっ放しドラゴンスープレ ックス! 恐るべき急角度で、頭からマットにめり込む雁之助。最後はこれし かない! コーナーを昇り、スローモーションのように宙に舞うハヤブサ。秘 技フェニックススプラッシュ。パーフェクトに決まり、ついに3カウント。
 試合時間は20分強。これほど感動した試合も他に思い出せない。練習生の 時から見てきた2人のメインイベントに目が潤んでしまう。たぶん、観客の多 くも同じ気持だろう。そして、リングの中の2人も。精根尽き果てながらも、 帰ってゆく雁之助に呼びかけるハヤブサ。
「雁之助。このベルトは次にお前と戦うまで絶対に誰にも渡さない」
 観客はリングサイドに押し寄せ、ずっと待ち続けたハヤブサの戴冠を祝った のである。
「俺達が新生FMWだ!」
 ハヤブサの声に合わせて四方のクラッカーが炸裂。銀色のテープが場内に舞 った。


 自分の中で、この数年なかったベスト興行である。本当にすべておもしろか った。試合が素晴らしかったのはもちろんのこと、ディレクTVによる演出も うまく働いた。かつての「GIVE UPまで待てない」に見られるように、プロレス においてはテレビ局の演出というのはしばしばファンの反感を誘うだけに終わ るものなのだが。しかし、今回はうまくいったが、次も同じようにゆくとはま ったく限らない。試合が良かったからこそ、演出も評価されたのであり、 試合がこけているのに演出だけ派手だったら目も当てられなかった。俺はかつ てのSWSが好きで何度か観戦したが、あれがその悪い見本だったと思う。カ ブキの刀に火がともり、観客が喜んでも、試合が始まると、なんともぬるく、 ヤジの嵐になった。プロレスは生物。どんな良い選手だってこけることはある。 演出だけが先走りして、選手の前に出てしまうことだけは気をつけなければな らない。
 ディレクTVで見直したところ、やはりテレビ局側としては今までにない新 しいプロレスを作ろうという意気込みがあるようだ。確かに今日の興行はエン ターテイメントとスポーツの完全な融合という意外と難しい手術を完全に成功 させた。衝撃的とさえ言えた。一時の新日やSWSなど、今までの失敗作の数 々を見せられてきただけに。これからもこのバランス取りは難しいだろう。し かし、これが成功を重ね、定着していった時、FMWは日本で一番のプロレス 団体ともなれる可能性を秘めている。そんな思いを抱くほど、この横浜文体、 インパクトがあった。
 ともかく、今後、まじめさに硬直した日本的プロレス風土の中で批判の多い 道をFMWは歩むことになる。しかし、すでにできあがったメジャープロレス の真似事していたら、FMWがこれらを越えことはまずできない話。今さら恥 も外聞もない。ゴーマンかましたれ、FMW。パンツを信じよ、FMWフリー クス。カタにはめたがる奴らの言うことに耳を傾けるな。FMWのやっている ことがプロレスを壊すというなら、そんな古くさいものはとっとと壊してしま いなさい。信じてゆけよ。ゆけば…わからないかもしれないけど、やはりゆく しかないでしょ。


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