1998年4月29日 本川越ペペアトラス  革真浪士団


 会場は小綺麗なデパートの最上階。インディらしくない。というよりプロレ スらしくない。俺が会場入りしたのは試合開始の30分前ぐらいか。当日券は 3千円と5千円の二種類。どうせ客入っていないだろうから、かわいそうなん で、5千円の方を買う。5千円の席にはビデオがついてきた。
 何と当日券で最前列だった。長いプロレス人生でも最前列は初めてではないか。席 が5列くらいしかないので、一番前でも後でも見え方に大差ない。ビデオはそ の二千円の差額に説得力を持たせるためのものらしい。観客数は簡単に数えら れるくらい。約50人か。なんとなく小学校の教室でやったお楽しみ会を思い 出す。生徒が互いに演劇やら歌やらを披露するやつね。この人数なら全員に挨 拶して回ることだってできるに違いない。けれど、俺が唐突に、知らない客に 向かって「やあ、お疲れさん」などと言って回る謂われもないので、そんなこ とはしない。そのうち、後楽園ホール在住のFMW者、ともよしさんブラザー ズ(ウノ&ドス)とすぎちょさんが姿を現した。観客もなんとか140人くら いに達す。一応、女子練習生が一人いるようだ。
 試合前に説明がある。今日は場外戦一切なしだという。相手を故意に場外に 出したら、即反則負け。俺はピンときた。なぜ場外乱闘の多いインディ・シー ンにあって、あえて場外に出ることを一切禁じるのか。そうだ、完全決着のた めか! 後藤、本気だな。(^-^;


第1試合 アポロ菅原 VS Z−P

 Z−Pができる奴なのは、1月のDDT昭島大会で見て知っていた。なんせ、 この見事な体格である。図抜けた胸板の厚み。正体は・・・。なるほどと思う ような選手だ。強いわけである。
 相手は久しぶりに見るアポロ。「NOW」のジャンパーを着込んで登場であ る。思い入れあるのか? 直井のこともあるしな。正直言って、昔(全日時代)、 アポロは弱そうなレスラーだと俺は思っていた。これは奴がレスラーとしては 異例に優男だということも原因かもしれない。しかし、この会場でZ−P と相対したアポロは恐ろしく強そうに見える。Z−P、少し威圧されている。
 Z−Pはパンチで奇襲攻撃を掛け、スリーパーホールド。しかし、軽く逆転 されて、首4の字を喰う。ジャイアント馬場のテレビ中継での解説のせいで、 この技はやることがなくなった時にやるぬるい技だということになってしまっ た。しかし、その「やることがなくなった時にやるぬるい技」を一番最初に出 すアポロって?
 Z−P、菅原の急所を足蹴にし、さらに股間目がけて頭突き。いろんな意味 で、あまり良いもんではない。足4の字固め。アポロも裏返す。古典的な攻防。 菅原もお返しの急所蹴り。「何、もう一発?」客は大喜び。みんな、よくそん な非情になれるもんだ。
 アポロはブレインバスター、四方に見せつけてからのパイルドライバー(も っとじっくりかけないと。Z−Pの頭、マットについてなかった)。さらにD DT、バックドロップ。Z−Pもフィッシャーマンズスープレックスで最後の 抵抗を見せるが、最後は菅原のラリアットに仕留められた。アポロ、強い。某 雑誌お気に入りのハイブリッドな某選手(欠場の多い方)より強い。一方、Z −Pいいとこなし。そろそろ菅原あたりのメジャー出身者に追いつかないとい けないと思うんだが。


第2試合 市来貴代子 VS 西堀幸恵

 西堀を実際に見るのは初めて。週プロの選手名鑑の写真で見た時はぱっとし なかったが、生で見ると、実に美少女である。なんか下着風のコスチュームと 相まってなまめかしく見える。
 そして、市来ポン入場。俺は市来が前から大好きだ。めっぽう気が強そうで、 嫌な女だなと思うのだが、それでも格好良い。浅黒く日に焼けた体を今日は鮮 やかなブルーの水着で包み、精悍な表情、揺るぎない視線はあくまでもまっす ぐ。150pちょっとの小さな女の子がすごく強そうに見える。
 市来、最初から喧嘩モード。先につっかけた西堀を見下した目つきでいなし、 西堀がロープのリバウンドを使って市来を吹っ飛ばそうとしても軽くこらえて、 格の違いを強調。首四の字で西堀を締め上げ、さらにアキレス腱固め。苦しむ ばかりの西堀に向かって、「取り返せ!」と怒鳴る。おおっ、けっこうお姉さ んだねえ。単なるやな奴ではないと見た。コーナーに振られた西堀、突進して くる市来の胸に両足でキックをかまし、そのまま首にからみつい てコルバタ。自分の頭がマットに突き刺さって失敗。マットを叩いて悔しがる。 すると、もう1回同じパターンを試み、今度は見事成功。喜ぶ西堀。なんてか わいい奴だ。寝かせた市来を後目にコーナーを上る西堀。これがもたついて仕 方ない。たまりかねた市来、首を浮かせて「早く来い!」と怒鳴る。なんかち ょっとすごい。やっとのことで西堀が飛ぶと、市来の足が待っていた。市来、 余裕の試合運び。つくづく思ったのだが、市来の素晴らしいところはその表情 である。中山香里にも言えることだが、非常に眼が生き生きしていて、完全に 試合に没入しているのがわかる。時には嬉しがっているかのようにも見える。 プロレスが本当に好きなんだね。他のことを考えながら、試合しているんでは ?というような選手もいるので、これだけで評価できる。
 西堀は得意のコルバタをまったく同じパターンでさらに1度出すが、この辺 は少し考えた方が良さそう。市来、西堀を応援するファンに向かって、「見と け、そこの気持ち悪い奴」。言われた人はすかさず「うるせー」と返事。ほの ぼのするファンとの交流である。最後は足のサポーターを下ろし、コーナーか らのニーパット。西堀から3カウント。試合後もごちゃごちゃもめる2人。互 いの髪をつかみ合う。マイクを手に取った西堀。すすりあげながら叫ぶ。 「市来さん、私はずっとあなたに憧れていました。もっと力をつけますから、 その時はもう1度私とやってください」  そう言いながら、西堀、わんわん泣き出してしまう。よりによって市来に憧 れるレスラーもいたんだな。市来、急に優しくなって、マイクをつかんでアピ ール。 「もう1度やろう。元川ばかりが評価されているけど、西堀の方が良い選手だ と思う。だから、もっと上に来ないと」  マットに突っ伏して泣き続ける西堀。西堀のありのままの気持が伝わって、 こっちもじーんとなった。この興行で一番良い瞬間だったと思う。しかし、市 来のコメントは元川に対するジェラシーが現れていたような…。

これが西堀だ。市来姉さんのしごき1市来姉さんのしごき2


第3試合 RONIN VS 怨霊

 一昨日、初めて生で見た怨霊を3日後またすぐに見ることになるとは。相手 のRONINの正体とはインディの渡り鳥、菊沢光信である。FULLの練習 生としてプロレス界に入り、東京プロレスの所属としてハヤブサとも対戦。そ の後、真FMWや革真浪士団でレスラー人生の大半をT後藤と共に過ごしてき た。
 菊沢改めRONINは最近ありがちな忍者風のマスクマン。彼は身長はない が、体つきはレスラーらしい。しかし、細身の怨霊が押し気味の試合。試合開 始直後はお約束の噛みつき。やがて、雪崩式フランケンシュタイナーや回転式 フライングチョップ、さらには膝へのドロップキックというエグい技でRON INを吹っ飛ばす。追撃の4の字固め。
 RONINは雪崩式フランケンシュタイナー、みちのくドライバー2、ムー ンサルトプレスといったジュニアの定番技を披露。個人的にちょっとこの辺は飽 き飽きという感じ。センスがねえなあ。人と同じかっこいい技使って。そんな ことやってるから、怨霊に膝へのドロップキックを再びぶち込まれ、大ダメー ジを負ったところに足を巻き込む逆エビで軽くとどめを刺された。試合後も足 の痛みに苦しんでいるRONIN。いろんな意味で怨霊の方がセンスが上だよ ね。オリジナリティーということをよくわかっている。


第4試合 矢口壱郎 VS 死神

 数人の矢口フリークに囲まれて矢口様、入場。死神は初めて見る選手。思っ ていたより、かなり大きい。完全なキャラクターレスラーだが、なかなか良い 感じ。
 やーぐーち、やーぐーち、と自ら矢口コールを始める矢口様。死神は時にに やりと笑いながら、クローを武器に矢口を追い込んでゆく。しかし、二郎なる 男が乱入。顔にペイントしているものの、Tシャツとジーンズなので、ちょっ と体格のいい普通の人かと思った。矢口がちょっともたついたラ・マヒストラ ルで死神を丸め込む。
「死神に欠けているものは何だ?」(矢口様)
「愛だー!」(一部ファン)
「死神。俺は死神にとりつかれるには早いんだ。まだやらなくてはならないこ とがたくさんあるんだよ。お前も死んでどうする。お前は生き神となって神格 闘十字軍に入れ」(矢口様)
 夢ファクががたついている死神の再就職は神格闘十字軍になりそうである。


第5試合 鶴見五郎 VS 青柳政司<異種格闘技戦・ラウンド制>

 もはや自分のプロレスのあり方に興味などなく、ただグッズをたくさん売る ことだけが現在の鶴見のプロレス人生だと俺は思っていた。たぶん、その通り だろうが、リングの上では思ったよりずっと真面目にプロレスやっているんで、 ちょっとびっくりである。なんせ、怪奇派とか何とか国プロでやっていること なんて、カスだと個人的に思っているもんで。もしかしたら、本当に面白いの かもな。ブリブラだって、実際に観た人と雑誌で読んだだけの人では全然評価 が違うので。生を見たいと理解できないものもあるので、知ったかぶりはいけ ない。
 相変わらず渋い館長。1ラウンドでは相手の様子を伺っていたものの(鶴見 の様子を伺ったって仕方ないと思うが)2ラウンド目からはバシバシ蹴り、突 きをぶち込む。うーん、いい音。マジでけっこう緊張感漂う館内。「潰せー!」 という誰かの叫びがあがる。マットにへたり込んだ鶴見を容赦なく襲う青柳の 蹴り。蹴りまくられながら、レフェリーにわめき立てる鶴見。かなりおかしく て、思わず笑ってしまう。昔、全日の会場では鶴見にゴキブリというあだ名が 付けられていたが、このじたばたする姿、言い得て妙ってやつか。
 鶴見はさんざんレフェリーに絡むが、相手にされないで、激昂。青柳にパン チを振るう。さらに青柳をリング外へ放り捨て。ああ、ここはぺぺなのに。青 柳の反則勝ち。試合後も鶴見はマイクをつかんでがなる。けっこう本気で頭来 たらしい。あれだけ物のように蹴られたら、誰でも怒るけどね。


第6試合 ターザン後藤 VS 新山勝利

 大仁田が引退を迎えんとする頃、FMWは後継者育成がばたばたと進められ ていた。我々熱心なファンは大仁田の後継者はハヤブサ以外にあり得ないこと はすでにわかっていた。しかし、ハヤブサはアメリカで武者修行中であり、ど こまで出来上がっているかわからない状況で、彼をサポートできる選手を育成 することが急務だったのである。それに選ばれたのが雁之助とこの新山だった のだ。
 後藤、大矢、リッキーの鬼人組と新山達の試合が何度か組まれた。内容は悲 惨なものだった。一方的に後藤に叩きつぶされる若手。94年末の横浜文体、 後藤、大矢VS新山、雁之助では新山が大矢をフォールし、とりあえず勝ちを 収めたが、やられっ放しの内容に評価は得られなかった。
 その後、後藤、雁之助、市原はFMW離脱。新山はハヤブサ、田中とともに 新生FMWを背負い、道は二つに別れた。しかし、スピード重視の華やかなハ イスパートレスリングに方向を変えたFMWの中でスタイルの合わない新山は ただ沈むばかり。1年後輩のハヤブサを支える裏の実力者の位置に甘んじ、い つのまにか3年後輩の田中にも抜かれ、米版FMWに走っては1年後輩の雁之 助の下に位置づけられ、FMWでの最後の試合は2年後輩の中川に完敗した。 FMWを離れた新山には自分を育ててくれた後藤のところしか行くところがな かった。
 去年の真FMWの興行でも二人は戦っている。ビデオで見たが、食い足りな い内容のまま、新山は完敗。グレート・パンクの頃、タッグながら後藤からフ ォールを奪ったのは単なるフロックか? FMWを離れた新山が何を学び、い かに後藤に肉薄したかを見るための試合であり、たとえ勝てなくとも何かを見 せてくれれば、それで良かったのだが…。
 FMWの文字が入ったジャンパーで登場の後藤。ちょっと感動。いささかも 変わらぬ新山。最初はレスリングの展開。首を取り、手を取り、足を取り…。 互いに力が入っており、見応えがある。今までの試合とは迫力が違う。これが 後藤のイメージするインディの世直しなんだろうな。確かに良いことなんだが、 インディを見に来る客の中にはきちんと試合を見る気なんかない人もいるよう なので、すべての団体がこれというわけにはいかないように思うが。互いに取 ったり取られたりなのだが、やはり全体を通してみると、後藤が新山を圧倒。 少し太った後藤。体重がある方が有利なのももちろんだが、それ以上にまだ二 人の技術には開きがあるような。
 ごつい打撃も入る。乾いた音が響くチョップの応酬、新山はローキックの連 発で後藤を転がすが、後藤の頭突きやパンチが出ると、足が止まってしまう。 こんなガチガチのプロレスを見たのはいつ以来のことか。もともと愛想のない 試合をする二人。派手な技に頼ることなく、ただ黙々と相手を締めて、打ち合 う展開が続く。客席はヤジひとつ飛ばず、静まり返って二人の攻防を見つめる。 今日は本当に後藤とその仲間達が好きな人だけが集まったんだろう。
 後藤のロープに飛んでの頭突きを喰って新山は流血。この試合に流血はいら ないと思うが。切れちゃったんなら、仕方ないけどサ。ところで、新山は攻撃 があまりにも単調。得意の裏投げを出した後はロープに飛んでのラリアットを 連発するばかり。彼の一本気なところが表れていると思うが、このラリアット では何発入れようと後藤は倒せない。パンチで足を止められ、軽く逆転される。 結局、後藤にっては最後まで危なげない試合で、垂直落下式ブレインバスター で新山を叩きつけ、最後はフェースバスター。1発で3カウントを許してしま う新山。ちょっとがっくりきた。
 試合後にマイクをつかんで「いつかアンタを越えてみせる」と叫んでみせた 新山。その意気や素晴らしいが、今日の試合を観た後では説得力がない。なん せ以前の対戦より二人の力の差が縮まっているようには感ぜられなかったので。 最前列で観るストレートなプロレスは面白かったが、これをもっと大きなサイ ズの会場で見たら、どうかわからなかった。
背中にFMWを背負って今時、レスリング

邪魔だよ、お前4の字というとやはり大仁田戦が・・・


 こういうプロレスはのんびり見れて、ストレスもたまらなくていい。インデ ィーとしては珍しく、ウケ狙いの変なヤジも全くなかったし。明日(FMW横 浜文体)に向けて非常に良い気持で帰ることができた。帰りがけにともよしさ んブラザーズ(ウノ&ドス)、すぎちょさんとレッドロブスターで食事。今日 の総括をする。
「インディーといっても、上の団体と下の団体があるよね。興行の規模や試合 のレベルという意味で。FMW、みちのくを筆頭に、大日本もだんだん上に来 ているし、一方、下は…」
「俺はくそインディーって呼んでます」
 一瞬の沈黙。誰が言ったかはヒ・ミ・ツ。
「まあ、その中でターザン後藤はインディーの世直しということを揚げている んだけど、いちばん世直しが必要なのはどこだろ?」
「あ、そりゃ志賀と金丸ですよ」
 誰が言ったかはヒ・ミ・ツ。

 個人的な本日の大賞
ベストマッチ 市来貴代子 VS 西堀幸江
MVP特になし
殊勲賞市来貴代子
敢闘賞西堀幸江
技能賞ターザン後藤


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