1998年4月21日 後楽園ホール  FMW


 木下さんとプロレス素人さんと3人で後楽園へ。プロレス素人さんはプロレ ス初観戦。自分は今まで100回くらい見ているので、別にわくわくもしない のだが、周りがこれだけ盛り上がっていると、なかなかいいものだ。俺は映画 館の雰囲気というのも好きで、映画が始まる前、暗闇の中にいるといまだにド キドキする。プロレス観戦と映画館に行ったのってどっちが多いだろう? た ぶんプロレスだな。それにライヴを加えると、俺は今までの人生でいくらくら いそんなことに金を使ったのか? 考えると恐ろしいが、多くの喜びを得たの で、全然後悔はしない。
 今日は1000興行記念大会。記念品にFMWのロゴ入りボールペンをもら う。旗揚げの時からFMWだけを見てきたファンとして、ちょっと嬉しいな。 会場では、ふふふのふさん、ヒロケンさん、日明兄ィさんと会う。予想してい なかったが、超満員のようだ。このカードでいっぱいになったか。FMWは後 楽園では招待券まかないし、人気上向きだね。とてもいいことだ。


第1試合 フライングキッド市原、リトル VS ミスター・ポーゴ、角掛留造

 いきなり腹立ちをぶちまけることになって申し訳ない。こういうカードを組 む感覚のズレた奴はいったい誰なんだ? いかにも大仁田的なセンスという気 がする。もっとも大仁田はFMW、辞めたはずだけど・・・。
 誰であろうと知ったことじゃないが、こんなものが受け入れられると本気で 思っているのか。いくらFMWの伝統だとか言っても、ミゼット自体もう見た いもんじゃない。それにしても、よりによって角掛はないだろう。誰 一人面白いとは思っていない下品なショーがFMWの言う「エンターテイメン ト」なのか? こういうのはあってもなくてもどっちでもいいと言うんではな い。あってはいけない。興行自体の質を下げるものだ。全女の一番悪い部分を 体現したような角掛は全女の会場で観客に暴言を浴びせている姿が一番似つか わしい。

 と、思ったことをはっきり書いたのだが、格掲示板や小島トーク 読むと、この試合、評判良かったよう。どうして? みんなそんなに角掛が好 きか?


ブリブラのコント
 いつものことですが
 

 下品なものでも、きらっと輝くセンスがあればいい。その意味でブリブラは 容認してきたのである。上品だとか下品だとかが問題なのではなく、要は表現 者の頭のキレなんだ。頭の悪い奴は何をやってもいけない。飯を食うのもいけ ない、呼吸するのもいけない。
 しかし、ミゼットの次はさすがにきつかった。油ものを続けて食べさせられ るような感じ。「come out and play」はいつも通りかっこよかったが、コント はちょっと、うっとおしかったです。早くプロレス見せろって感じ。
 くどめ改めひどめが登場。木下君は熱狂的なくどめファンである。ヌード写 真集はすべて買ったという話。俺はくどめはレスラーとして最大限の尊敬。そ んな俺達の気持も知らずくどめは一度もこっちを振り向かなかった。後楽園の 「北」は見やすいが、常にレスラーの背中側になる危険をはらんでいる。
 続けて、TNRシャツを着た渡辺二郎も登場。偉大なチャンピオンだったか もしれないが、ボクシングのことなど知ったことじゃない。雁之助から横浜で の公平なレフェリングを依頼され、なごやかに握手。しかし、公衆の面前に出 せる人間じゃねえな、こいつは。わけわかんないことごちゃごちゃ言う二郎に 「二郎さん、僕の話も聞いてください」と言う雁之助。なかなか大人の分別を 感じされてくれて、良いんではないか。


第2試合 大矢剛功、佐々木よしのり VS 黒田哲広、保坂秀樹

 まともな試合。なんだかんだ言って、俺はこういうものが見たい。
 最初は大矢と黒田のグラウンドでの取り合い。大矢「無我」登場に向けた黒 田からのエールか? 俺はこういうレスリング実は好きなんである。無我みた いにそれを売りにしてしまうと、なんかげっとなるが、大技中心のプロレスの 中に一瞬シリアスなグラウンドでの攻防が織り込まれたりすると、きらっと光 るんだね、それが。
 黒田は試合中声を出し、叫び、えてして散漫な観客の意識を試合に向けよう という意識が感じられた。多少空回りしても、その姿勢は正しい。良い表現者 であるためにはとにかく考えることだ。観客の目に映る自分の姿について、思 いを巡らすことだ。保坂が感情を出せないタイプだけに、黒田の気迫は際だっ て見える。保坂については何の進歩も試行錯誤の跡も見られないので、特にコ メントなし。技は綺麗、大きな体に似合わぬ身の軽さ。素質は素晴らしいのに・・・。
 佐々木は気迫充分。黒田の強烈なサッカーボールキックでうめきをあげなが らも耐える。豪快なかんぬきや相撲チョップ、ぶちかましで保坂を圧倒する。 彼はすでにポーゴより強いんではないか?
 しかし、ぶちかましを繰り返しすぎて読まれ、保坂のスパインバスターを食 らい、逆エビに取られる。保坂は体重があるので、佐々木、かなり苦しそう。 一度はロープに逃れたものの、リング中央まで引きずられ、エグい片エビでタ ップ。


第3試合 クローナス VS クリス・チェティ

 
 クリス・チェティ  クローナス
 
 チェティはオジー・オズボーンの「PERRY MASON」で入場。良い曲だ。チェ ティもクローナスも腕には小さな入れ墨。去年の12月にも思ったことだが、 ECWの選手というのは自然に観客の目を引きつける独特な空気を持っている。 彼らは技云々より雰囲気で試合のできてしまう人たちなんである。こういうの こそエンターテイメントというのではないのか? FMWでは大仁田やハヤブ サといった一部の選手だけしか、表現者としてのオーラを身に付けていないよ うに思う。
 クローナスとチェティでは体の厚み以上にオーラの厚みが違う。これでは試 合前から結果は見えている。結局このオーラがECWでの序列を決めるものな んだろう。サンドマンやトミー・ドリーマーはもっとすごかったものな。カッ コいい、という言葉しか出てこない。
 試合は派手な技を積み重ねるバタバタしたもので、好みではないが、視覚的 に面白いのは確か。チェティは予想以上にできる。思い切りのいいプランチャ、 タズのようなスープレックス、いずれECWでも上に来る素材だろう。しかし、 クローナスは三角飛びニールキックで観客の度肝を抜き、最後は鮮やかなファ イヤーバードスプラッシュ。あっけなかったが、これが味なんだろう。一部E CWファンも来ていて、なかなか盛り上がりました。


第4試合 ザ・グラジエーター VS スーパーレザー
 グラジと橋本ちゃん
 

 レザーも俺の期待しない一人。でくのぼう、という言葉はこの人のためにあ る。まあ、観客席に飛び込んで暴れ、観客の肩をもみほぐしてくれる人という のは1人ぐらいいてもいいんだが。グランドスラムでこのカードが実現したと きはマスコミにド迫力対決などと言われたが、今や特にありがたみのない試合 なのである。
 グラジとレザーは北階段でジュースの缶(中身入り)を手に戦う。もちろん 中身が観客にかかる。ふふふのふさんからレザーに手渡されたビールがグラジ の額を襲う! 危うし、グラジ! 危うし、観客! しかし、グラジはこんな 「味」で試合をするレスラーではないはず。トミー・ドリーマーに何もさせず、 一方的に潰してしまった去年の駒沢のような試合を見せてほしかった。ドーム 出場も目の前なんだしね。まあ、どうせ相手は田上なんだけど。
 レザーの頭でイスの底が抜けるイス攻撃も挟んで、展開はリング内へ。リン グ内に持ち込んだ机にレザーを寝かせ、コーナーポストに上るグラジ。先に起 きあがったレザーは机を除けて、雪崩式ブレインバスター。さらにスプラッシ ュバスター。しかし、パワーボムに来たところ、グラジが持ち上げ返し、その まま足を持って叩きつける。最後はレザーが机の上にグラジをアバラッシュで 叩きつけようとしたところ、すり抜けたグラジがパワーボムonデスク。これ でケリがついた。なかなか面白い試合でした。


  第5試合 大仁田厚、中川浩二 VS 冬木弘道、非道
 全日での先輩と後輩
 

 予告なき大仁田登場にわき上がる館内。ブーイングは少しだけ。なんとなく ふっきれない気持で観戦していた俺は大喜び。大仁田の試合はストレス解消に は良い。なんせ、狂ってるので。
 試合はいつも通りの大乱戦である。大仁田は絶好調のようで、頭突きを連打、 DDOも見せる。大仁田と冬木はかなり険悪な感じ。中川をパワーボムの体勢 に捕らえた冬木に、大仁田はビールビンの水を口に含み、冬木の顔にぶっかけ るという前代未聞のカットも。大仁田のいまいちなサンダーファイヤーも非道 に決まったが、最後は冬木につかまった中川がパワーボムの連打の前にピンフ ォール負け。3月のFMW後楽園と同じ結果である。ひたすらパワーボムを くらい続ける中川はちょっと情けなかった。中川はすでにキャラクターを確立 しているレスラーのはずだが、大仁田と組むと一介の若手レスラーのように見 える。これは存在感の大きさの違いとか、そんなもんではないように思う。大 仁田と組むと中川あたり、なんとなく若手時代のようなファイトに戻っている ような・・・。遠慮ってやつか?
 大仁田は試合後、伊藤豪に腹いせのサンダーファイヤー。これはなんかすご くおかしかった。


第6試合 ミスター雁之助 VS 新崎人生

 実質上のメインイベント。2度目のシングルマッチである。1度目は雁之助 が人生の必殺技である高野落としで人生を破っている。しかし、あの時と今で は互いの中に燃えさかった因縁の厚みが違う。人生が初めて怒りに我を忘れ、 親の仇のように憎み合った2人。
 机のギザギザで・・・
 

 先に人生が入場。なんと雁之助の入場前から相手の花道へ走り、雁之助に 襲いかかる人生。金村につかまり、エプロンから二人ががりのパワーボムon デスクを食らう。なんとかリングに戻った時には後頭部から少し流血していた。
 折れた机のギザギザの部分を突き立てられ、悶絶する人生。バック転し、雁 之助に蹴りを見舞おうとするところ、かわした雁之助が逆に蹴りをぶち込もう とするが、人生が雁之助の足をつかみ人生スクリューという場面で、雁之助は 先に延髄斬り! 何とめまぐるしい、技を読み合う高度な攻防か。感情的な泥 沼の抗争を引きずってきた両者だが、試合は確実に進化してきたのである。
 雁之助のファルコンアロー、ファイヤーサンダーで追い詰められながらも、 人生は「輪廻」で反撃。続いて、拝みショルダーアタック。フランケンシュタ イナーはパワーボムで切り返される。勝率の高い雁之助クラッチにひやっとし ながらもなんとか返す人生。互いに拝みパワーボムを打ち合う。場内は雁之助 コール、人生コールが半々というところ。
 最後は本家の拝みパワーボムに続けて、高野落としで人生が雁之助をピン。 今までの度重なる屈辱を晴らした。
「坊主、横浜で鳥に勝ったら、ベルト賭けてやってやるぞ」
 帰ってゆく雁之助に大きな拍手が起きる。人生は雁之助の後姿に向かって拝 む。好勝負に観客は再び大きな拍手で応えた。人生はもとより、名勝負製造器 と化している近頃の雁之助に対するファンの支持率は高い。チャンピオンが防衛 戦の一週間前に負けてしまったのは驚きだったが、これで雁之助が「落ちる」 ことにはおそらくならないだろう。


第7試合 ハヤブサ、田中将斗、リッキー・フジ VS 金村ゆきひろ、邪道、外道

 2大エースと選手会長
 
 招かざる大仁田(と、黒田の後頭部)
 

 試合が始まると、大仁田と黒田が現れ、なんと俺の前の席にどかっと座りや がった。あんたが現れたら、周囲の観客が試合に集中できないことぐらいわか んないのか。あまつさえ、やたら周りに話しかけ、得意の芸能人トークを披露。
「ハヤブサ? 嫌いじゃねえよ。嫌いなわけねえだろう」
 だったら、もっと気を使ってやれよ。大仁田はレスラーとしては好きだが、 目立ちたがり丸出しの行動にちょっとムッときた。
 さらに2列ほど前の女の子がしばしば席を立って写真を写すのだが、この子 のスカートが妙に生地が薄く、立ち上がるたびリングを照らすライトに中が透 けるのである。パンツの色までわかりそう。どうして、みんな俺のプロレス観 戦の邪魔ばかりするんだ。
 さて、大仁田が黒田を引き連れて早々に帰り、スケスケ姉ちゃんも立ち上が らなくなった頃、試合も動き出した。ところがハヤブサは攻められるばかり。 邪外&金村の連携の前に10分ほどは捕まったままだったろうか。ハヤブサは 基本的に受けの選手だが、ちょっとやられ過ぎ。館内は明らかにイライラして いたと思う。金村と邪道の二人がかりでハヤブサを場外の机の上にブレインバ スターの体勢で叩き落とす。背中を痛めたハヤブサ、防戦一方になる。
 コーナーに突進してきた金村にスクリューキックを見舞い、反撃開始。邪道 にラ・ケブラーダ、トペ・アトミコ、ムーンサルト・・・。田中は金村に三角 飛びラリアット、ランニングエルボー! 続けて のラリアットで金村は一回転。田中と邪道のラリアット合戦。なんと、邪道が 打ち勝つ。邪道も侮れない。邪下はプロレス上手なんだが、正直言って見る側 にとってやや退屈である。リッキーは外道にカミカゼ。リッキーと外道はとも に良い選手だが、アメプロチックなオーバーアクションは新生FMWのシリア スな試合の中ではやや浮いて見える。ハヤブサは外道をドラゴン・スープレッ クスで叩きつけ、ファイヤーバードスプラッシュ。必殺パターンだが、これは カットにあった。局面はリッキーと外道に。間違いなくやられると思ったら、 案の定リッキーはいつのまにかやられていた。
 試合後、クローナスが乱入。正規軍側に付き、邪下&金村を蹴散らす。する と、大仁田、黒田らも乱入。冬木と大乱闘に。大仁田厚。 いったい、こいつはなんなんだ! てめえの試合で何やろうが構わな いが、新生の試合にまで飛び込んできやがって。単なる目立ちやがりじゃねえ のか? 場外の騒ぎをただ茫然と見つめるハヤブサと田中。FMWには未だ大 仁田にものを言える人間がいないのだと言うことが露骨に伝わってくる嫌な光 景だった。
 締めは4連続でトンボを切ったハヤブサだが、こんなにぱっとしなかった試 合も初めて。かつて1度は作りかけた新生のかたち。その後の負傷が何もかも 狂わせてしまった。帰国したときはアメコミのヒーローのようだった体もまだ 戻りきっていない。だけど、あの時があるから。あの時の夢のために今ももが いている。


 ホールの1階でオバケさん、ともよしさん、ダイさんらに会う。ヒロケンさ んと日明兄ィさんは出待ちするという。ヒロケンさんのデジカメには見事なハ ヤブサの写真。俺のデジカメと同じ名称の品物とは思えない。やはりデジカメ は5万くらい出さないとダメだね。
 自分ら3人は水道橋の949でふふふのふさん、清水さんと一緒に飲む。雁 之助VS人生についてはみんな満足。あとは保坂の悪口、ちょっとハヤブサ批 判など。近くのよその客の声が聞こえてくる。「何が新生FMWだよなあ。あ れで」今夜ばかりは頷けてしまう。釈然としない気持で家に帰り着いた。帰っ てから見ると、記念のボールペンはインクが漏れて鞄の中がべとべと。やって くれるぜ、スーパーインディ・FMW。

 個人的な本日の大賞
ベストマッチ 新崎人生 VS ミスター雁之助
MVP新崎人生
殊勲賞ミスター雁之助
敢闘賞クローナス
技能賞ミスター雁之助


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