1998年2月6日 後楽園ホール  FMW


 今日は仕事が遅くなり、井上貴子ストーカーの木下さんとあわてて会場に駆 け込んだ。後楽園ホールの売店のところで中から聞こえてくる声。「Because、 なぜならば」いきなり、これかい。中にはいると5人のブリーフをはいた男た ちがコントをやっていた。カツラをかぶった邪道がくどめになりきって、非道 にヒップアタックかましていたのである。

第3試合 保坂秀樹 VS スーパー・レザー

 特に、書くようなことはない。
 保坂がいつもの枠を破れずに適当に善戦し、負けた試合である。
 いつも通り雪崩式フランケンシュタイナーが出た。しかし、観客には何も伝 わらなかった。保坂には観客の心に響く感情が感じられない。無表情に試合を し、やる気なく負ける。器用なのに、体格もいいのに、何ひとつ進歩が見えな いのだ。FMWに上がった当初は雁之助あたりと同格で争っていた。やがて、 中川に抜かれ、田中に抜かれ、非道にも抜かれた。きっともうすぐポーゴにも 負けるだろう。極辛になってしまったが、保坂にはプロレスとは何か自分の頭 でじっくり考えてもらいたい。今のままではひとやまいくらのレスラーでしか ない。
 レザーも雪崩式ブレインバスターを仕掛けようとして1度ロープから足 を踏み外したり、ぬるいカウンターキックを連発したり、相変わらずの出来。 今のままではグラジとの差は開くばかりである。 最後はレザーのスプラッシュ・バスター。

第4試合 リッキー・フジ VS ザ・グラジエーター

 どっちが勝つかあらかじめわかっていなかった客がいれば、お目にかかりた い。とは言っても、実はリッキーはグラジからフォールを取った実績があるの だ。大仁田VSポーゴの地雷爆破マッチが行われた91年5月5日万博広場で の興行でのセミファイナル、サンボ浅子、リッキー・フジVSザ・グラジエー ター、ホーレス・ボーダーで確かにリッキーはグラジをフライングボディアタ ックで敗っているのである。しかし、そんなデータが今や何の役にもたたない ことは皆さんご承知の通り。(だったら書くなって。)そう。そんな過去が あったことなんて、まるで冗談のように、今日もリッキーは負けた。
 グラジの巨体にカミカゼを2連発で決め、ニア3カウントを取っただけでも 評価されるべきか。アッサムボムも耐えた。しかし、最後はスーパーAボムで グラジの勝ち。もはやベテランの リッキーだが、いまだに試合運びなど見ていて危なっかしい気がするのは俺だ け? リッキーの試合はどうもモタる場面が多いような気がして。

第5試合 邪道、外道 VS 冬木弘道、非道

 非道のブリブラ・テストマッチ。結果的には不合格。当たり前だ。こんなん で合格された日には、観てるこっちはたまったものではない。
 確かに邪道、外道の大技を食いまくりながら、耐えた。しかし、非道に限っ て言えば、そんな根性を見せるのが大切なのではない。他の3人と非道との差 は、レスリングの洗練の差である。流れるような試合運びのできる冬木軍の3 人とインディーの泥臭さ丸出しの非道とでは観ている者の安心感が大きく違う のだ。
 外道にミサイルキックを決めようとコーナーポストにちんたら上る非道。そ の妙な間。相手に反撃を開始する時は必ずニールキック。同じリングにハヤブ サという名手がいるので、ついつい比べてしまう。あとは急所蹴りか。技の数 を増やせばいいわけでもない。ともかく、非道にはレスラーとしての安定感が ないように思う。ポーゴがだんだんプロレスラーらしい重量感を身につけてき ているので、そのうち抜かれるぞ。
 冬木は全日にあがる邪道・外道へのエールか、かわず落としなども決める。 最後は外道が非道を外道クラッチでフォール。試合後に邪道のマイク。 「これから、試験の結果を発表する」
 観客はいっせいに「ダメ!」「まだまだ」という声。邪道「バンザーイ(万 歳しておいて)、なしよ」落ち込む非道。これにて一件落着。

第6試合 大矢剛功、新崎人生 VS ミスター雁之助、金村ゆきひろ

 ベルトを2本巻いて入場の金村。面白いと思っていたら、雁之助がガウンを 脱ぐと胸から腰まで4本のベルト。これはウケていた。雁之助、人生に向かっ て拝み、続けてコマネチ! また、大ウケ。みごとなおちょくりである。
 試合開始のゴングが鳴り、ベルトだらけのまま大矢と組み合おうとする雁之 助。レフリーが注意。おっと、いかん、という風に雁之助は自軍のコーナーに 戻り、金村にベルトを外してもらう。改めて、試合開始。なかなか組み合わな い雁之助と大矢。まず大矢が雁之助をヘッドロックに取る。雁之助は大矢にア ームロック。しばらく上になったり、下になったりのグラウンドでのムーブ。 おちゃらけていても試合は本物だよ、というブリブラなりのアピールなのだろ う。
 大矢から人生にタッチ。雁之助と対峙しながらも、コーナーに控え る金村に威嚇のポーズ。雁之助から金村に代わる。人生と金村が組み合おうと した瞬間、金村は飛んで人生の急所蹴り。苦しむ人生。ノータッチの雁之助が 人生の腰にイス攻撃。イスを置いた上に金村が人生をボディスラムで叩きつけ る。続けて、雁之助も。イスのないところにもさらにもう一発。これで完全に 人生はKO状態。どうやら腰を痛めているようだ。そこにこれではたまらない だろう。ノビた人生に金村はビンタを降らす。
 雁之助のブレインバスター、2人で交互に逆エビ固め。徹底的な腰攻めであ る。人生はまったく動けない。雁之助のダミ声が響く。 「お前ら、もっと人生を応援してやれよ。じーんーせい、じーんーせい」自ら、 人生コールである。こういうのは敵に塩を送る・・・とは言わない。 雁之助が人生をロープ上に固定し、金村のギロチンドロップ。キスしてか らの合体エルボー。あげくには2人で人生の背中を蹴りまくる。コーナーポス トからイスを持って飛んだ金村。イスの先が人生の背中に刺さる。
 ここでノータッチで飛び出した大矢、雁之助と金村に続けてバックドロップ。 人生はイス攻撃。金村の頭でイスがぶち抜かれる。正式に試合の権利は大矢へ。 大矢、ミサイルキックで金村を吹っ飛ばす。雁之助のラリアットが大矢を襲う も、すかさず大矢、雁之助にバックドロップ。続けて、DDT、かんぬきスー プレックス、卍固め、DDT。ここでまた、人生にタッチ。人生はコーナーポ ストから飛んで、手刀を雁之助に落とす。雁之助、金村に続けて人生スクリュ ー。念仏パワーボムの体勢に入るも、今の人生に持ち上げるのはムリ。場外に 叩き出され、机の上に固定されて、金村のコーナーポストからの場外ダイブの 餌食。その間、大矢も場外でやられて、ノビていたのである。
 ここで何を思ったか、金雁はコーナーの金具をゆるめ、トップロープを外し 始めた。だらんとなるロープ。それで大矢の首を絞める。人生を2人がかりで 仰向けに持ち上げ、そのまま尻餅をつく技。人生の痛めた腰には効くだろう。 雁之助の逆エビ固め、念仏パワーボム。最後は極楽固め。レフェリーストップで 人生が負けた。
 雁之助のマイク。「人生。そんな体調じゃお客さんに失礼だよな。人生に代 わって、俺が謝ります。すみません。人生、さっさと去れ」見かねたハヤブサ が出てきて、人生を気遣う。「荒井! 社長!」荒井社長を呼びつける雁之助。 荒井社長が出てくると、3月シリーズで雁之助の2冠に挑戦するトーナメントの開 催を要求。これは沸いていた。なかなかいいこと言うじゃん。金村はともかく、 雁之助は確実にFMWの会場で支持を増やしている。

第7試合 ハヤブサ、田中将斗 VS 中川浩二、黒田哲広

 田中と黒田の絡みで始まった試合。体当たりは互角。スピーディなグラウン ドでのムーブの中にもエルボーやドロップキックを織り込んでゆく田中。ハヤ ブサと中川に代わる。中川の腕を取るハヤブサ。逆に中川に取られて、背中へ 絞り上げられると、その場でジャンプ一閃。両足を高く放り上げ、遠心力を利 用してバックの中川を前方へ放り投げるハヤブサ。再び中川の腕を取り返した。
 田中が中川に首4の字固めを決めると、中川は弓矢固めで逆襲。黒田に代わ り、田中の背中に強烈なサッカーボールキック。張り手合戦になるも、黒田が 打ち勝った。田中はドロップキックからハヤブサにタッチ。ハヤブサは黒田を ロープに詰めて、胸板にキックの嵐。中川はハヤブサに突き上げるようなキッ ク数発。シャープ・シューター、STFでハヤブサのスタミナを奪う。黒田も ハヤブサに逆エビ固め。しかし、ハヤブサは黒田のバックを取り、フルネルソ ンに固める。一瞬、客席にドラゴンか? という緊張が走るが、フルネルソン バスター。
 田中、黒田をコーナーに詰め、スウィングDDTの体勢に入るも、回る最中 に突き飛ばされ、すっぽ抜けて失敗。すかさずエルボーを叩き込み、再度技を かける。今度は見事に成功。しかし、黒田は田中をジャーマンで投げ捨てる。 田中、ダンガンボム。おおっ、珍しい。最近はあまり見せてくれなかった技だ。 ハヤブサと中川の展開。場外に落ちた中川にハヤブサは鋭いトペ・コンを見舞 う。いつ見ても! ため息の出る美しさなのである。場外で中川はハヤブサを リングの方へスルーすると、ハヤブサはそのままエプロンに飛び乗り、ケブラ ーダ。中川をリング内に転がし、トペ・アトミコ、ムーンサルト。もうハヤブ サの一人舞台である。さらにハヤブサはフィッシャーマンバスター。
 田中が中川に豪快なフライングボディプレス。さらにローリングエルボーを 放たんとするも、回転する瞬間を中川は捕らえ、スモールパッケージで丸め込 む。駒沢での大仁田との一騎打ちでやられたパターンであるが、辛くも田中は 脱出。中川のエクスプロイダーで田中は頭からマットに沈んでゆく。田中、ピ ンチ。代わった黒田が田中にドラゴンスープレックス、ダブルアームDDT (以前、小橋の使っていた技だ。)しかし、田中は黒田をコーナー最上段から の雪崩式ブレインバスターに切って落とす。サンダーファイヤーパワーボム。 デスバレーボム。ハヤブサに代わり、スワンダイブ式ニールキックが黒田を空 中から襲う。ここで早くもファイヤーバード・スプラッシュ、ファルコンアロ ー。しかし、黒田も粘る。3連続ジャーマン。最後はクロスアーム式で投げる。 ニア3カウント。あぶない、あぶない。とどめのラリアットを決めんと突っ込 む黒田をハヤブサ、フランケンシュタイナーで吹っ飛ばす。しかし、次の瞬間、 黒田の倒れ込むようなラリアットがハヤブサの首を刈っていた。いかん! し かし、これもぎりぎりで返すハヤブサ。中川に代わり、ハヤブサのピンチは続 く。エルボーからジャーマン。そして、中川のファルコンアロー! これも2 カウント。この時、中川には油断が生まれていたのか。ノータッチで飛び出し た田中が中川に完全なローリングエルボー! まともに食ってふらついた中川 をすかさずハヤブサはファルコンアロー。最後はあまりにも美しいフェニック ス・セントーン。単にフェニックス・スプラッシュの半回転足りない技だと思 ってはならない。(かく言う俺も実際に観るまではそう思っていたが。)飛行 姿勢の美しさではめまぐるしく回るフェニックス・スプラッシュよりもこっち が上である。見事なインパクトを残し、ハヤブサ、田中組が勝った。
 試合後のハヤブサのマイク。「お前らがFMWを辞め、ZENで一生懸命や っていることはわかった。でも俺達は絶対に負けない。何度でも叩きつぶす」 中川はダメージが大きく、なかなか立てなかった。


総評・後記

 メインは実に正当派な試合。イス攻撃もなく、踊る人もなく。FMWの試合 がスマートになったと言われるのも、こんな試合を観れば確かに頷ける。とも かく、良い試合だった。一度たりともぬるくなる場面は見られなかったのだ。
 今のFMWはできる選手とできない選手に差がありすぎる。日本マットのト ップクラスにふさわしい試合をしている選手もいれば、ドインディー丸出しの 選手もいるようだ。全体的な底上げがなされないと、FMWマットのレベルが 上がっていかないだろう。いつまでも進歩の見られない保坂、非道あたりには 猛省を願う。
 もう書きたくもないが、客の入りが依然今ひとつ。後楽園でこうなら、地方 興行は? このままの状態ではいずれみちプロやWARのようになるだろう。 良いカードばかりを組めばいいものでもない。やることがすぐになくなってし まうし。ファンは今こそ会場へ足を運ぶべきだ。週プロやネットでわかった気に なっているのは大きな間違いである。生でしかわからないことがあるのだ。FMWなど、 テレビ中継のない団体は客の買うチケットだけが生命線だということを忘れて いる方はいないか? 雑誌でプロレスとの関係を保っているファンはすぐに立ち上がり、 会場で本物のプロレスを体感せよ! プロレスを知らない友人なども連れてゆく と良い。手続は簡単だ。会場に行き、当日券を買う。これだけでプロレスが見れる。
 プロレスは反社会性と非日常性の渦巻く都会の闇のカオスだ。他人の彼女を奪 って気分ソーカイな時も(逆の時も。…涙)、嫌な上司に怒られてクサっている時も、ケンカしたく てささくれ立ってる時も、ここに解放がある。

本日の大賞
ベストマッチ ハヤブサ、田中将斗 VS 中川浩二、黒田哲広
MVPハヤブサ
殊勲賞ミスター雁之助
敢闘賞黒田哲広
技能賞ハヤブサ


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