1998年1月7日 後楽園ホール  ZEN


 今日は刑務所の警備隊員、木下さんと観戦。ビールを飲みながら気楽に観た かったので、メモも取らなかったし、写真も撮らなかった。よって、この観戦 記は思い切り手抜きである。プロレス観戦にビールと言えば、思い出すことも あるなあ。新日のフロントだった頃の新間寿氏は「全日ファンはビールを飲み ながら、笑って観戦してるような人たち」とか言ってた。とにかくまじめがい い、肩肘張っているのが良い、という考え方はすでに権威主義だぞ。プロレス なんて、闘う阿呆に観る阿呆の世界でしょうが。だからといって、同じ阿呆な ら闘わにゃ損損とはならないが。

第1試合 ハヤブサ、新崎人生 VS 冬木弘道、邪道

 このカードが第1試合。よって、絶対に遅刻できなかった。この組み合わせ、 私にとっては、初物なのである。
 ハヤブサという選手は入場シーンが結構大切なのだが、入場テーマが途中で 切れるというハプニングが起きる。頼む。しっかりやってくれ。
 試合に関しては、まだこなれていないところが目立つもの の、すごく面白か った。メジャーを泳いできた冬木、天龍への挑戦権を賭けたWARのリーグ戦 で優勝した邪道。ハヤブサ、人生にとっては強敵以外の何者でもない。実際、 前半は冬木の重さに押されっ放しだった。冬木軍はハヤブサに標的を定め、ク イックタッチで攻める。冬木のパワーボムからの冬木スペシャルまで受けてし まうハヤブサ。シングルだったら,これで勝負あったかもしれない。(実際、 メキシコ遠征時,ハヤブサはタッグで冬木に取られている。)
 しかし、ハヤブサと人生はコーナーポストからの飛び技を多用し、挽回。フ ァイヤーバードスプラッシュは返した邪道だが,ローリングセントーン(要す るに、フェニックススプラッシュの半回転足りない奴)でフォールを取られた。 これからが楽しみな顔合わせである。ハヤブサと冬木のシングルマッチに期待。

第2試合 マンモス佐々木 VS スーパー・レザー

 佐々木は改めて大きい。レザーと対峙しても、それほど体負けしていない。大きい選手は 育つのが遅くて、でくの坊呼ばわりされても、後で役に立つ。田上明しかり、 2代目ポーゴしかり。
 佐々木は相撲チョップを出して、相撲出身であることをさりげなく(?)ア ピール。ボディスラムからフォールに行ってしまうところも初々しい。レザー の大技攻勢にもよく耐えたが、最後は垂直落下式ブレインバスターでピン。レ ザーはノビた佐々木をちょっと気遣っていた。

 ここでZENのトークショー。大仁田時代のFMWもよくやっていたよな。 こんなに漫才みたいじゃなかったはずだけど。でも、やはり大仁田、喋るのが うまい。かなり笑わせてくれた。喋るのが下手な自分はあやかりたいところ。

第3試合 砂男吾作 VS パンディータ VS 森村方則

 サンドマンのテーマで入場してきた砂男。この曲、すごくかっこいい。パン ディータは昔通りキャンディーを撒きながら入場。森村方則は全然いつものリ ッキーと変わらないじゃないかと思っていたら、髪を上げたところ、顔にペイ ント。リッキーがペイントするのはずっと前、正規軍に反旗を翻したとき以来 か。なんか、ホーデス・ミンに似ている。
 パンディータがいつのまにか敗れ、最後は森村がサソリ固めで砂男を倒す。 特に真面目にレポートするような試合じゃありません。

第4試合 田中将斗 VS グレート・フェイク

 田中は前日の雁之助戦で痛めた腕のためラッシュできず、腕を執拗に攻める フェイクの攻めもぬるかったため、観客のトーンも下がってしまった。最後も ローリングエルボーがうまく決まらず、今一度やり直して、フォール。ここし ばらくの田中の試合では、今一つ、いや、今二つくらいの試合。でも、たまに はこういう時もあっていいと思う。常に良い試合だけをするような選手に面白 みはない。

第5試合 大矢剛功 VS ザ・グラジエーター

 ロープを凶器に使用できるルール。ロープを使ったデスマッチが面白かった ためしはない。後藤 VS 鶴見しかり、古くはデスピナ・マンタガス VS  デルタ・ダーンしかり。
 この試合は悪くなかった。しかし、ロープを使うルールでなければもっと面 白かったと思う。つまり、ロープの必然性はほとんどなかったわけだ。一つだ け、ロープを使った攻防ではっとした点。大矢がグラジをエプロンで首吊りに すると、グラジは首にロープを掛けたまま、リングロープを飛び越えて、大矢 にショルダーアタック。不利な態勢を一気に挽回した。
 最後はグラジがアッサムボム、スーパーアッサムボムからロープでの首吊り。 レフェリーが試合を止めた。ギブアップしてないとマイクアピールする大矢に 対し、グラジは「Speak fuckin' English, porn.」。そりゃひどい。グラジ、 君が英語を喋れるのは、なにも君が頭いいからでもインテリだからでもない。 君がアメリカ人だからだ、と思っていると、誰かが「グラジ、Speak Japanese.」 と鋭い突っ込み。その通り。

第6試合 大仁田厚、中川浩二、黒田哲広 VS ミスター雁之助、金村ゆきひろ、非道

 入場してくるなり、ZENダンスで踊るチーム悪の4人(含む,モンゴル)。 ZEN、辞めたんじゃなかったっけ? 大仁田らが踊らないところを見ると、 君らのダンスになったのか。でも、練習しているんだろう。ぴたりと決まって いて、なかなか気持いい。
 「Wild thing」がかかる。引退前と同じように緊張感が走る。入場してくる なり,雁之助を場外に連れ出す大仁田。西側の階段を上り、壁に叩きつける。 大仁田の動作のひとつひとつに全盛期と変わらぬ狂気が宿っているのがわかる。 大仁田、やっと取り戻したね。その証拠に場内は大歓声である。ポンコツの大 仁田が他の多くの優れたレスラーを凌駕してきたのは、この狂気ゆえに他なら ないだろ。大仁田の持つなにか反日常性、反社会性のようなもの(言ってみれ ば、むき出しの真実。のような生々しい何か)の匂いに惹かれて、かつて俺達 は集まったんだから。
 しかし、前半はチーム悪が押す。中川を手錠でコーナーに縛り付け、黒田も ダウンさせて、標的はなんと大仁田。3人がかりでかわるがわる攻める。金村 と雁之助は互いにぶちゅっとキスしてから倒れている大仁田にダブルエルボー。 うーむ。君らこそ、俗悪の王子様たちだ。大仁田引退前と違うのは大仁田がや られると喜ぶ客もいること。実際,雁之助と金村の生き生きとした姿には確か な悪の魅力が漂っている。正直、大仁田の存在感の前に他の5人は印象が薄か ったが、それでも雁之助あたりは貫禄負けしないだけの自分を表現していたと 言える。
 ZENのピンチにフェイクが乱入、中川の手錠を外す。中川のバックを取っ た非道の顔めがけて、毒霧一閃。先ほどの田中戦ではさっぱり人気のなかった フェイクが一躍歓声を浴びる。流れはここからZENに傾いた。
 大仁田の技の中でサンダーファイヤーと並んで説得力を持つものはイス攻撃。 これが連発で出る。イスを使う選手はいくらでもいるが,大仁田の場合,エグ さが違うのだ。割れた机の板で3人に次々に人間モグラ叩き。置かれたイスめ がけてDDO。こうなると,完全に「あの頃」。大仁田コールがすごい。鋭い 角度のパワーボム2連発。これはフォールは取れなかったが。最後は中川の雁 之助クラッチが非道を丸め込んだ。
 最近のFMWの大技畳み掛けのプロレスを見慣れた眼にはやや唐突なフィニ ッシュに見えたかもしれないが、新生以前のFMWの後楽園あたりでの試合で はこれが普通であった。大技は試合のフィニッシュあたりになって、ちょこち ょこと出るもの。それまでは場外で暴れ、机を壊し、イスで殴る。それでも、 俺達は熱狂できたんだ。格闘技なんていう「ただの競技」とは別物の何かを見 たかったから。大仁田がかつて言っていた「自由で、馬鹿馬鹿しい空間」を俺は 欲しかったから。週刊プロレス誌上で松浪健四郎(現在、国会議員。馳浩の師) がちくちくと大仁田批判を展開し、大仁田の言葉を捕らえて、若者達はくだら ない空間など求めてはいない、大仁田は間違っていると断言なさった時も、俺 はその「馬鹿馬鹿しい空間」を見たいんだと断言していたよ。
 試合後は冬木軍が現れ、チーム悪との合体をアピール。これは既成事実だっ たので、特に言うことはない。ZENの3人とファンによるマット叩きが始ま る。試合後の大仁田のパフォーマンスはちょっと長過ぎ。久々に支持されたの がよほど嬉しかったのか。 大仁田コールの中で、「大仁田、つまらねえぞ」とヤジを飛ばすバルコニーの 客。それに対して、俺の前の客が「うるせえ! 帰れ、バカ!」と怒鳴る。今 日の会場に限っては、大仁田支持派7割、反対派1割、残りは傍観といった感 じか。
 どっちが正しいとか、言うつもりはない。新生のレベルの高い試合を見慣れ たファンがつまらないと思うのはもっともだし、逆に、ハヤブサや田中に今ひ とつ欠けている殺気のようなものを大仁田に感じたファンもいるだろう。 (大仁田のパフォーマンス中、「大日本」コールをした一部のバカだけは死ん でしまえ。)ただ、FMWの未来を考えた時、ZENの存在は好ましくない部分が大きい。選手と して完全に自立したと思っていた中川や黒田が大仁田と組むと単なる若手のよ うに見えてしまったのもひとつの弊害だ。しかし、FMWの進む方向は新生以 外にあり得ないと断言する私ながら、今日の興行が前日の新生FMWよりはる かに面白く感じてしまったのも事実。試合内容は前日の方がずっと良かった のにね。プロレスって難しい。
 ともかく、ZENに新しいものは何もありませんでした。見つけたものはあ の頃の懐かしい胸いっぱいです。女子の試合がなかったのは減点。里がいれば ねえ。ちなみに、会場は超満員札止めでした。
 最後に、極私的な本日の大賞である。

ベストマッチ 大仁田厚、中川浩二、黒田哲広 VS ミスター雁之助、金村ゆきひろ、非道
MVP大仁田厚
殊勲賞チーム悪
敢闘賞グレート・フェイク(メインの乱入)
技能賞金村ゆきひろ(下品なアピール)


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