1997年12月13日 クラブチッタ川崎 FMW

高橋さんからチケットを買い、会場に入る。クラブチッタは初めて。小さいとは知っていたが、これほど
小さいとは。立ち見客の眼の前がリング。立ち見しか残ってないと高橋さんが言うので、こうなったのだが、
ステージ席はがらがら。何で? ダフ屋に買い占められた? でも、俺としては結果的に良かった。3千円
でこの位置はちょっと素晴らしすぎる。もちろん4列しかないリングサイド席は超満員である。
ハヤブサ、田中は売店でサイン会。写真を撮らせてもらう。金村、非道、黒田もその辺をうろうろ。荒井
社長もうろうろ。俺は決めた。多少なりとも興味のある団体であれば、クラブチッタでの興行には行くべき
である。後楽園の何倍もおいしい。雰囲気もお洒落。川崎は小金井の俺のうちから近くないのが難点。
第1試合 中川浩二 VS 佐々木嘉則
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| (がんばれよ。) |
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佐々木は田舎者という感じの顔だが、体は結構いい。背も横幅も中川よりある。コスチュームはいまいち。
新人はパンツだけでやってほしいと俺は個人的に思う。レフェリーはジャージ姿の姉崎。(第3試合まで。)
こっちはかなり小さい。中川より身長なく見えるんで、市原ぐらいかも。(そこまでいかないか。)
試合は第1試合らしい地味な腕の取り合い。だからこそ中川のボディスラムなど強烈に見える。戦いなが
ら、中川が佐々木に教えているようだ。
最後は中川のサソリ。相当効いたようで、佐々木は試合後も腰を押さえている。俺も最近、水泳で腰を痛
めたので、気持がよくわかる。
中川の落ち着いた闘いぶりからは、メイン後の事件など予想できるはずもなかったが。
第2試合 中山香里、里美和 VS クラッシャー前泊、ミス・モンゴル
後楽園でもそうだったが、今の里からはあまりやる気が伝わってこない。それなら、引退も止むなしか。
里よりも小さい中山が躍動感で全身から光を放っているようにすら見えるときがあるのとは大きな違いであ
る。
今日も里の攻撃は何も印象に残らないで終わった。技で言えば、ダブルアームスープレックス、サイドス
ープレックスだって出したはずなのに。中山が豪快なスウィングDDTでモンゴルを振り回し、
コーナーから小さな体を弾丸のような凶器に変えて相手に立ち向かったのは強烈な印象だったが。はっきり
言って、里はレスラーとしてすでに死んでいるに等しい。
最後はあっけなく前泊のカウンタのアームボンバーで幕。そういえば、前泊がモンゴルの頬を張るシーン
が見られた。私には里引退後の前泊のベビーフェイス転向への布石のように見えてしまって仕方なかったの
だが。試合後、前泊はレフェリーを勤めた姉崎の頬も張り飛ばす。これはなぜだか結構ウケて
いた。
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| (今日も飛ぶ中山) |
第3試合 フライングキッド市原 VS スーパー・レザー
こういうカードはちっとなめてるような気がしないでもない。でも、実際に観ると、そんなに悪くなかっ
たりする。
レザーの入場時、客席の女の子がレザーを怖がって、彼氏の背中に隠れる。すると、もうレザーはその子
一点狙い。リングに上がってからも、じっとその子を睨む。沸き上がる笑い。ほのぼの。
ゴングが鳴った後も突然レザーが走ったと思ったら、「ウー!」と動物的な声をあげて客席の中へ。女の
子狙い。結局その子は再三レザーに襲われるので、どこかよそへ移動したようです。君はついてるぞ。スー
パーレザーにストーカーされるなんて。彼女の一生の思い出になったことでしょう。
市原はラ・マヒストラル、当たりの軽いムーンサルトなどで持ち味を出したが、結局、レザーの雪崩式ブ
レインバスターでピン。予想通り、あっけなかったです。
第4試合 非道 VS 冬木弘道
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| (見るだけで怖ろしい。) |
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冬木の攻撃は一発一発が重い。非道も良い顔をしていたが、まだまだ冬木の敵ではないらしい。
今日、気がついたこと。冬木の非道への攻撃は愛がこもっている。たぶん、冬木は非道のことを相当買っ
ているんじゃないか。自分との闘いで非道を育てようという意図が感じられたのは私だけでしょうか。
冬木は早々とパワーボム、ラリアット。さすがに非道は返し、ニールキックで反撃するも、今日の冬木は
ラリアットを連発。あんなのいっぱいもらってはたまったもんではない。非道が押さえ込まれる。
試合後、冬木は半ば強引に握手。そして、非道の耳元でごにょごにょ。しかし非道もまんざらでなさそ
う。しばらく、リング上で何か考えていた。これはきっと何かありますね。
第5試合 (3ウェイ・ダンス・バトル)
リッキーフジ、ミスター・ポーゴ VS ミスター雁之助、金村ゆきひろ VS 邪道、外道
リッキーはマイクを持って、自分のテーマを歌いながら入場。雁之助、金村はステージで踊り、俺の眼の
前でも踊る。楽しそう。さらにいきなりコーナーポストに立って、アピールする金村。金村は間近で見ると、
横幅もあって大きい。白い体はなんか生々しくていやらしい。湯気が立ちそうに見える。とりあえず、
その黄色いコスチュームは股間のかたちがはっきり出ていかん。わざわざ誇示するほどのものにも思えな
いので、一考を要する。
この試合形式はちょっと無理がある。ZENが2人掛かりでフジ、邪外も2人掛かりでポーゴを攻めるの
で、正規軍は一方的にやられるままである。フジのマスカラスパンチ(ヘッドロックにとって、いっぱい殴
るやつ)、ポーゴの吾作落とし(と、まだ呼んでいいのか?)などの反撃も見られるが、結局は邪外のスー
パーパワーボムにポーゴあっけなく轟沈。ここまでZENと邪外の絡みはほんのちょっとだけ。
金村はその間にも観客を挑発。狭い会場なので、奴の甲高い声ががやたらよく響く。「やかましい、ボケ!」
あ、唾も吐いてる。なかなか、いいんでは? 観客にいい顔ばかりしていた一時の金村よりは俺は好きだと思
う。唾がこっちに飛んで来ない限り。とりあえず、奴は生き生きとした顔で、亀のような平べったい背中を
有効利用したセントーンを連発。そして、それが体の小さな邪外に思いの外効いていたようだ。
最後は外道が金村に外道クラッチ決めようとしたところで、雁之助が外道の後頭部にラリアット。そのま
ま金村が外道をローリングクラッチで固める。スリーカウント入る。
冬木と非道がリング上に登場。冬木軍とZENは2つに別れながらも、またなんかごにょごにょ。険悪な
雰囲気はない。見るからに、「これから何か起きるよ」と言っているかのようだ。
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| (暴れてる金) |
ハヤブサ、田中将斗、大矢剛功 VS ザ・グラジエーター、黒田哲広、保坂秀樹
たまにはこういう、流すカードも良い。彼らは地方興行で毎日こんな組み合わせで戦っているんだろう。
後楽園や川崎球場の「よそ行き」のカードばかり見ていては感覚がずれてくる。彼らの普段着の姿もぜひ
見ておかなくては。だいたい、ハヤブサ、田中、大矢というチームだって考えてみれば夢のトリオである。
今の正規軍で最強の3人が初めて組んだのだから。
スタートは大矢と保坂。あいかわらず、大矢は人気高い。保坂を寝技に誘い、アームロックに取る。グラ
ウンドでは、圧倒的に大矢。保坂はサブミッション・アーツ出身だと聞いていたが、実はグラウンドが好き
ではなく、自分の弱点を克服するためにサブミッション・アーツに入門したんだとか。(木村浩一郎:談)
代わった田中にも首を攻められる保坂。
保坂がグラジに代わったところで試合が動き出す。田中、グラジにタックル。バチンという木を裂くよう
な音。けれど、グラジ揺るがず。この2人の組み合わせは本当に迫力すごい。川崎球場を揺るがした対決
をこの狭い会場でやられたら・・・。これだけで来た甲斐があった。
田中のもう一回のタックルにもグラジは微動だにしない。今度はグラジが走る。タックルを決められ、よ
ろめく田中。体の違いで、これは仕方ない。そして、出てきたハヤブサ。彼がコーナーから飛ぶだけで会場
が幻想の色で包まれる。舞い降りた隼が獲物をつかむようなフェースクラッシャーをグラジに決めて見せた。
田中と黒田はこの前の後楽園ですごい勝負を見せてもらったが、私はこの2人は打撃中心、ぶつかりあい
中心の選手というイメージだ。ところが、今日の試合、2人は短い間ではあるが火の出るようなグラウンド
を展開。互いに切り返しが早い。互いの腕を取り合いながら、上になる者がくるくると変わる。こういうグ
ラウンドに退屈の余地はない。その合間にも飛び出す田中のドロップキック。私は今日立ち見なので、メモ
をしなかったが、例えやっていたとしても、追い切れなかったろう。エプロンに控えるハヤブサが拍手。そ
れはこんな攻防のできる2人に対してのものだ。
大矢が攻められる。黒田のドラゴン・スリーパーの後を受けた保坂のスリーパーで半分失神の大矢。眼が
飛んでいる。グラジがアッサムボムの体勢に入ったところで、ハヤブサが救出のフライングラリアットを
放つが、なんとかわされ、大矢と同士討ちのようなかたちに。この後はいわゆる大技中心のハイスパート・
プロレス。この前の後楽園のハヤブサVS大矢のような試合もなくてはならないが、こういうプロレスも観
客が盛り上がり、楽しむのには良い。場所がライブハウスだけにぴったりといったところか。
大矢がバックドロップでグラジを投げ捨て、飛び込んできた保坂にはネックブリーカー、黒田もかんぬき
スープレックスで投げ捨て、
正規軍の狙いは黒田に。黒田をコーナーに詰め、大矢がラリアット、田
中もラリアット、ハヤブサ、フライングエルボー。ハヤブサはエルボーを放った後、ロープを飛び越え、エ
プロンに着地してしまう勢いだ。コーナーからニードロップ。ハヤブサの膝が黒田の顔面に刺さる。田中は
後楽園で初公開したデスバレーボムを炸裂させる。さらに田中がコーナーにもたれる黒田に突進すると、黒
田はレッグシザーズで田中を捕らえ、田中の顔面がコーナーマットへ激突。
代わったグラジは田中にアッサムボム。
こんな狭い会場ではマットに100s超の男が叩きつけられる音は腹に重く響く。ハヤブサもアッサムボム
の餌食。コーナーからムササビが舞うようなボディプレス。そして、この技を見たのはすごく久しぶりだ…。
走り込んでのスーパー・アッサムボム。ハヤブサはもろに食う。前に座っている女性が「ハヤブサー!」と
絶叫。スリーカウントぎりぎり、飛び込んだ大矢がクリアした。しかし、これ以降動きが重く、苦しそうな
ハヤブサ。
そして、保坂。今のFMWの中では決して評価の高くない保坂であるが、今日マットから2メートルほど
の距離で見て、その重量感ある攻めに驚かされた。大きな体を利してのラリアットでハヤブサを吹き飛ばす。
そして、パワーボム! 決まってもおかしくなかった。しかし、ぎりぎりクリア。ハヤブサは保坂にカウン
タのキック。場外の保坂にケブラーダ! 高い! これほど近距離で見たのは今日が初めてだ。形が綺麗な
のは言うまでもないが、これほど高く飛んでいるとは今までわからなかった。
ハヤブサはすでに定番になったドラゴンスープレックス。ホールドせずに、保坂を投げ捨てる。最後はこれしかない。今日
初めてのファルコン・アロー。脳天真っ逆さま! |
| (それでも立ち上がる。) |
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保坂、敗れる。しかし、ハヤブサはマットに横たわったまま。グラジにやられたダメージが相当重かった
ようだ。ZENが引き上げ、大団円のリング上。沸き上がる大矢コールに大矢がマイクを握る。
「必ずあいつらZENをぶっ潰すぞ!」
ハヤブサもマイク。
「皆さんに約束します。FMWは絶対に潰しません」理想的な大団円。今日も気持よく帰途につけそうだ。
と、思ったとき、ジャージ姿の中川がつかつかとハヤブサのもとへ。ハヤブサの髪の毛を握る。
えっ、と思った時には中川はハヤブサにパンチの雨あられ。リングサイドにいた私の耳に中川の肉声が響く。
「何が潰さないだ。何もわかってないくせしやがって」プロレス的な事件と言うより、生の怒りのような
ものが伝わってくる表情だ。驚いた田中、大矢が中川を止める。リッキー、ポーゴらもリングへ。しかし、
中川は全員をにらみつけ、そのまま控え室へ。盛り上がっていた観客の中にも殺伐とした空気が流れる。
「説明しろよ!」観客のヤジ。再びハヤブサがマイクを握る。
「すいません。せっかく来ていただいたのにこんなものを見せてしまって」
「まったくだ!」どこかのバカ。
「後で中川とよく話し合います」
「今ここで話せよ!」前述のバカ。
「本当にすいません。これは俺と中川の間の問題です」
「ハヤブサ、がんばれ。信じてるぞ」バカに怒っていた大勢のファンがハヤブサに声援を送る。こうして、
いまひとつ釈然としないまま、ライブハウスでの小さなプロレス興行が終わったのだった。
総評・後記
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| (輝く額) |
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今日は全体的にあっさり目。後楽園とは何か違う。でも、この程度なら俺は嫌いじゃない。どこかの団
体みたいな大技→2.9カウントが延々と続くプロレスは俺は嫌いだから。
終わった後、川崎の天丼屋で天丼とそうめんのセットを食べてから、駅へ。川崎は毎年クリスマスのイルミネーシ
ョンがすごい。でも、街に全然似合わない。イルミネーションからちょっと眼を落とすと、浮浪者が段ボー
ルの中でワンカップ大関かっ喰らってるのが見えては。こいつらを撤去するのが先だ。(これは差別ではな
い。公道を不法占拠する者への市民として当然の感情。)クリスマスのイルミネーションは今はどこでもや
っているが、似合うのは原宿や仙台、国立など一部の街だけである。俺はそれ自体は好きだけど、他の似合
わないところはやめた方がいい。
そんなことを考えて、駅のホームに下りると、大矢夫妻とばったり。大矢さんは紳士なので(ハヤブサ:
談)いきなりバックドロップで投げ捨てられたりはしないだろうと思い、話しかける。仕事以外で
レスラーと話すなんて後楽園のゲームセンターで会った米村天心以来か。
「写真撮っていいですか?」
「おう。ん? なんじゃそりゃ? デジカメ? いくらするんですか?」
写すものすべてをピンボケにせずにはおかない俺のデジカメに大矢は興味を示す。俺は答える。
「二万円です」
「カメラだけで? ふーむ」
奥さんは小柄ですごく優しそう。大矢、むちゃくちゃ渋い。写真を撮る時、わざわざ表情まで作ってくれた。ちなみに俺はこの役立たずの買ったば
かりのデジカメをもう観戦で使わないことに決めた。安物買いの銭失いとはよく言ったものだ。
最後に、極私的な本日の大賞である。
| ベストマッチ | ハヤブサ、田中将斗、大矢剛功 VS ザ・グラジエーター、黒田哲広、保坂秀樹 |
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MVP | ハヤブサ |
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殊勲賞 | 田中将斗 |
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敢闘賞 | ザ・グラジエーター |
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技能賞 | ハヤブサ |
きわめて極私的な感想と思ってくだされ。駅でのやりとりを考えれば、大矢をMVPにしたかったのだが。
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