新生の砦
〜ハヤブサ VS 大矢剛功〜
今日は茶ブサ。一昨年のあの名勝負の日と同じように。ハヤブサがこの試合を大切に思っている証だろう。
大矢への声援が多い。みんな、この試合の持つ意味をわかっているようだ。
握手からスタート。のっけからグラウンド。ハヤブサ、大矢の腕を取り、弱点の左足に移行。大矢の左足
は慢性的な爆弾を抱えているようだ。途端に、動けなくなる大矢。ハヤブサは容赦しない。スタンドの体勢
からも、大矢の左足を蹴る。そして、寝ると、左足をさらに絞り上げる。ダメージが大きくなる前に試合の
流れを変えたい大矢はハヤブサの右足を攻め、スタンドに戻って、ハヤブサをロープに振る。しかし、帰っ
てきたハヤブサはジャンプ一閃、大矢の左足にドロップキックを突き刺す! のたうち回る大矢。これで流
れは完全にハヤブサのものに。
ハヤブサは逆片エビ固め、STFで大矢の左足を絞り上げ、さらに踏みつける。会場に響く大矢の呻き。
観客の声援は大矢を後押しするが、一度はまってしまった足攻め地獄から抜け出すのは容易ではない。2年
前の試合もちょうどこんなだった。もっとも、あの時は攻めていたのが大矢で、苦しんでいたのがハヤブサ
だったという違いはあるものの。
スタンドの展開で、ハヤブサは大矢の左足にローキックの雨あられ。そして、珍しい膝十字固め。しかも
回転式で入る。渋いな! ハヤブサはこんな技も使うのか。抜けようとする大矢を、ハヤブサはアッと言う
間にデスロックで固めてしまう。ハヤブサは実はグラウンドも上手なことは知っていたが、ここまでできる
とは! そして互いにアキレス腱固めの取り合いになるが、これは足を痛めている大矢に分はない。手を
離し、もがくのは大矢だ。大矢への声援が会場を満たす。ハヤブサはためらいもせず、サソリ固めに入る。
これも珍しい! しかし、大矢の抵抗にあって、裏返すことができず。
大矢はようやくハヤブサの左腕に的を絞って、反撃開始。アームロックに取るも、その間も自分の左足を
叩き、気にしている大矢。結局、左足のダメージが最後まで響いてしまったようだ。大矢が攻める時間はあ
まりにも短い。ハヤブサは大矢の右足をニークラッシャーで落とす。続いて、水面蹴り。メジャー団体の流
行技を使いすぎるのはどうか? 大矢の両足を固めて、サーフボードに取るハヤブサ。そして、ロープに振
るも、大矢は走れない。そのまま崩れて、うめく。観客の声援も悲鳴のようになる。
もう一度振ると、大矢はなんとかロープに飛び、戻ってきたところでハヤブサの打点の高いニールキック!
その華麗さは隼が翼を広げたときのようだ。そして、場外に逃れた大矢にケブラーダ。しかし、よけられた!
大矢は場外でハヤブサにラリアット、DDT。そして、このシーン! エプロンに戻った大矢はコーナー最上
段に上る。おい、ちょっと待て! 大矢が・・・飛んだ!(写真)
ここからペースを握った大矢。懐かしいかんぬきスープレックス。もう一発! そして、とどめの一発と
ばかりに、ハヤブサをかんぬきに固めた大矢。しかし、ハヤブサは真正面の敵の顔に頭突き。たまらんとば
かり、手を離した大矢。その一瞬を怪鳥は見逃さない。その場で飛んでフランケンシュタイナー! 豪快な
弧を描いて、大矢が吹っ飛んでゆく。
ハヤブサは場外の大矢にあの技、三角飛びケブラーダを見舞う。(写真)もうできないはずの技が…。大矢を
リング内に戻し、お馴染みのトペ・アトミコ、ロープ2段目からのムーンサルトプレス。コーナーに詰めて、
ニーキック。そして、また左足を。アキレス腱固め、4の字固めでダメ押し。しかし大矢は粘る。バック
を取り、バックドロップの体勢へ。ハヤブサ、踏ん張る。業を煮やした大矢はハヤブサの背中にパンチ。し
かし、バックを取り返したハヤブサは投げっぱなしジャーマン、ファイヤーバード・スプラッシュ。
そして、ファルコンアロー! 必殺パターンだ。
観客に見得を切るハヤブサ。何で決めるのか? コーナーに上る。しかし、一瞬早く立ち上がった大矢。
ハヤブサをコーナー最上段からのバックドロップで投げ捨てた。起死回生の一発! 大矢が勝つにはここで
攻めるしかない。卍固め、そして、バックドロップ。大きな男が頭から真っ逆さまに落ちる迫力に言葉が出
ない。これで、決まってもおかしくなかった。が・・、バックを取り返したハヤブサが出したのはあのドラ
ゴンスープレックス。続けて、ファルコンアロー。コーナーに上るハヤブサ。何があるのか? まさか・・。

この時は声を出してしまいそうだった。シューティング・スタープレス! もう二度と見られないと思っ
ていた流星スプラッシュが鮮やかに後楽園の空間を切り裂く。本当にあの時に戻ったようだった。
しかし、そんな感傷もつかの間、大矢は再びバックドロップでハヤブサをマットに叩きつけた。さらに、もう一発。
決まったか? 3カウントぎりぎりで返すハヤブサ。会場が歓声で揺れる。ハヤブサは意表を突いた延髄へ
のキックで返す。もうこの技しかない! 大仁田厚がビッグマッチのほとんどをサンダーファイヤーパワー
ボムで制してきたように。ハヤブサのフィニッシュホールド、ファルコンアロー! そして、もう一度!
大矢の脳天がマットに沈んでゆく。
スリーカウント入った! 精根尽き果てた二人を見て、私は過去への思いに眼が潤んでしまった。二人は同じ
意識で戦っていたのだろう。試合後のマイクアピールにそれが現れていた。
「ハヤブサ、ZENの野郎を一緒にぶっ潰そう!」(大矢)
「大矢さん、必ず一緒にあの時を取り戻しましょう」(ハヤブサ)
会場一体となった大矢コール、ハヤブサコールが沸き上がり、二人は大切な原点回帰の試合を最高のかたちで
終えることができた。
近頃メジャー化も言われるFMWという団体。観客の盛り上がる良い試合なら、いくつもあっただろう。
しかし、この試合のような見応えのある試合はいくつあったろうか。単にその場で面白いだけでなく、
余韻の残る試合。そんな試合を二人は作り上げた。
ハイスパートの功罪を思い知らされた気がする。「新生」は田中、金村ではなく、この二人から始まった
合言葉だったのかもしれない。

(ファイヤーバードスプラッシュを決めるハヤブサ)
田中はもはやFMW王か?
〜田中将斗 VS 黒田哲広〜
黒田の入場時にも手拍子が起きる。ZENに入ったとはいえ、後楽園での黒田人気は高い。リングサイドには
金村、雁之助、非道、保坂の姿。「一人で戦えよ!」と怒鳴る誰かの声。
ゴングが鳴っても、二人は動かず、一瞬睨み合う。胸板の厚い黒田。しかし、田中は全身がパンパンに膨
れ上がり、レスラーの鎧を纏っているよう。そして、コンタクト。まずは田中が黒田をヘッドロックに
取った。そして、巻き投げに来た黒田を逆に投げる。立ち上がるところに打点の高いドロップキック。さらにも
う一回巻き投げ。
座り込んだ体勢の黒田の背中の突き刺さる田中のサッカーボールキック。すくっと起きあがった黒田はフライ
ングメイヤーで田中を転がすと、同じ技でやり返す。FMWの会場では何度も見られた光景だが、人間の肉
体がたてる鋭い音の衝撃はいつも我々を驚かさずにおかない。コーナーでもみ合う二人。黒田がPWCからFMW
に移籍してきた時、大仁田はこの二人を両肩に抱いて、「うちの若い奴らだ」とばかりに笑っていたのを思い出す。
その二人が今、こうして立派にメインを張っている。
黒田の首四の字。かつて馬場はテレビ中継でこの技を「やることがなくなったときにやる技」と評した。
いったい、それとこれは同じ技だろうか? 力いっぱい締める黒田を田中が切り返すも、また首四の字に
捕らえる。歯をむき出して、田中を追いつめる黒田。同じ技でも気合いや真剣さで重みがこれほど変わ
るものなのだろう。
体当りは互角。田中がチョップを放つと、黒田はロープに飛んで、ラリアット一閃! 凄い一発だった。
田中の重い体が一回転して吹っ飛ぶ。展開は、場外戦に。黒田は場外DDT。そして、ホールの西から東へと駆け抜け
るラリアット! リングに戻ると椅子が持ち込まれ、チャンバラ。金属音が響く。田中が打ち勝った。黒田
の脳天を椅子で思い切り一撃。そこに油断が生まれた。椅子攻撃をものともしない黒田は田中にラリアット。
続けて、椅子の上にボディスラム。逆片エビ固めで絞る。
黒田、田中を対角線に振ると、椅子を手に取り、掟破り椅子アタック・・・。ところが、待っていたのは
田中のキック。これが本物だ!とばかりに田中は椅子アタックだ。自ら、コーナーに上り、スイングDDT!
もうとどめか? 田中は雪崩式ブレインバスターで黒田を放り捨てる。さらに、グラジエーターを彷彿とさ
せるフライングボディプレスへ。
これを返した黒田だが、もはや田中の猛攻は止まらない。黒田をロープに追いつめてのダンガンエルボー、
投げっぱなしジャーマン。ところが、黒田は田中の腕を取ると、瞬間的にわき固めへ移行。さらに田中の
遊んでいる方の腕も左腕で取って引く新技を披露。かなり効いている。田中、苦しい表情。ロープは近いが、ちょっと逃げに
くい。やっとロープへ動いた田中に拍手が起きる。しかし、まだ黒田のチャンス。裏DDT。コーナーか
らのダイビングエルボー。黒田といえば、ラリアットと並んでこれが必殺技だったが、田中からはスリー
カウント取れず。
いったん堪えれば、再び田中の勝機に。田中はダンガンボム。サンダーファイヤー。決まってもおかし
くなかったが・・・。コーナーに突進する田中を黒田はなんとレッグシザーズで捕らえる。猪木世代には
なんとも懐かしい技だ。黒田、最高のチャンス。連続ジャーマンが出た! 3発目はドラゴンスープレッ
クスで。決めはこれだ。サンダーファイヤー! ぎりぎり返した田中に黒田は2発目を狙う。しかし、黒
田を裏返してクリアした田中。必殺のローリングエルボー。しかし、それはすでに読まれている技。黒田
はステップバックして、これをかわすと、必殺ラリアット。この後楽園で、同じ展開で黒田にフォールを
許したのではなかったのか? 田中、危ない。しかし、これもフォールを返してゆく。
もう、すでに両者打つ手がない。パンチ、頭突き、エルボー…。原始的な技を繰り出すも、すべて相
打ちに。両者ダウン。
ここで勝負を分けたのは、今までトップを張ってきた者の自信だったのだろうか。田中はダメージの大きい
黒田を抱え上げ、サンダーファイヤー! 続けて、初公開デスバレーボム。もう一発、エルボー。
最後は倒れ込むようなエルボーで幕。その途端、大仁田厚がリングに上がり、田中と対峙する。
「田中、俺はZENどうのこうの抜きでお前と戦いたくなったよ。黒田、いつか勝て」(大仁田)
大仁田に罵声を浴びせる客少々。大仁田は「わかってんなら、黙って聞け!」と怒鳴る。
タオルを振って、大喜びするZENフリークスも少々。ほとんどの客は
静観といったところ。思った以上に後楽園の客は大仁田に好意的だという感じがしないでもない。
日本一厳しいといわれる後楽園の客だが、私が見るに少なくともFMWに関しては当てはまらないと思う。
FMWの後楽園大会では悪質なヤジなど皆無だし、多少の不手際やまずい試合にもあまり不満は出ない。
ともかく、FMWの論理の中では、大仁田は依然としていつか越えなければならない大きな壁である。
総評・後記
はっきり言って、客の入りが良くない。空席は一部だったが、このカードを考えれば、超満員にならなけ
ればいけないはずなのだ。
客の入りが落ちてきているのは、ここのところFMWの後楽園大会に来るたびに感じることである。プロ
レス界全体がやはり不況なのか。かつて後楽園ホールはFMWにとって、6人タッグマッチでお茶を濁しても
、軽く超満員にできる会場であった。「後楽園がいっぱいにならなくなったら終わり」この言葉を思い出し、
嫌な気持がする。他団体のことを引き合いに出しては申し訳ないが、全女のような状態になってからでは、
遅い。今こそファンは雑誌やネットで満足することなしに、自ら会場へ足を運んではいかがだろうか。活字プロ
レスなんて嘘である。生で見た者にしかわからないカタルシスがある。ハヤブサと大矢の胸に残る試合を
観て、強くそう感じた。
しかし、今回初めて観戦記なるものに本気で挑戦してみて、つくづく他のプロレスサイトの方々を尊敬し
てしまった。こんな大変なことだとは思わなかったのだ。ノートにメモを取りつつ、写真を撮り、拍手もし
なければならない。あまりの忙しさに、今回だけは阿弥陀如来を羨ましく感じた。
最後に、極私的な本日の大賞である。
| ベストマッチ | ハヤブサ VS 大矢剛功 |
|
MVP | ハヤブサ |
|
殊勲賞 | 田中将斗 |
|
敢闘賞 | 大矢剛功 |
|
技能賞 | ザ・グレート・ニタ |
あくまで極私的な感想と思っていただければ、幸いである。
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